【短歌&エッセイ】深夜のカラオケ
テキスト・短歌/吉岡優里
カラオケの小窓から、店員がすごい速さで駆け抜けていくのが見える。先頭の店員の後を追うように、次々としかめっ面の店員たちが私たちのいる部屋の前を過ぎ去っていく。私と友人のA子は、「ミュージカル 美少女戦士セーラームーン」の『ラ・ソウルジャー』を前傾姿勢のサイドステップを踏みながら熱唱している最中だった。
「え。まってなんか走ってない? 運動会か何か?」
A子は歌うのをやめて、でもサイドステップは踏みながら、私に話しかけた。
「本当だ。何事?