ミクロニウム
ショートショートnote杯用に書いたショートショート
カレー チャー オム 天津 チキン マーボー たまごかけ 「コメがほしい!」 #完成された物語 #物語の欠片 #足りない料理店
ここ数年、あ行の作家さんの勢いがすごいなぁ。
――鏡よ鏡、世界で一番美しいのはだあれ? 『世界で一番美しいのは、お妃さまでございます』 ――ほんとに? 『もちろんでございます。お妃さま以外に考えられません』 ――ほんとのほんとに? 『えぇそれはそれは、大変にお美しゅうございますとも。もうまじメロメロです』 ――ねぇ、それ主観入ってない? 『まぁほんというと、結果は白雪姫とかいう小娘でしたけど。白雪姫を推してる鏡も多いのは知ってますけどね。私はなんといってもお妃さま推しなんで。もうね、全力で推していく所存でご
高校の頃、『道に落ちていた部』という部があったんです。 活動していたのは一人だけでしたけど。 あ、私じゃないですよ。 活動内容はそのままで、道に落ちていた変なものを収集する、というものでした。 一度だけ興味本位で部室をのぞいたことがあります。 パイナップルとリンゴがペンに刺さっているもの(腐敗臭事件の原因となったものです)や、面白い数字の並びの宝くじ(後日、当選していたことがわかりました)、いかがわしい雑誌(他のものはカモフラージュだったのでは?)などが置いてありました。 そ
ミクロニウムです。 不可能かと思われたショートショートnote杯でしたが、なんとかギリギリ完走できました!パチパチ 1.『しゃべるピアノ』 2.『1億円の低カロリー』 3.『株式会社リストラ』 4.『アナログバイリンガル』 5.『違法の冷蔵庫』 6.『数学ギョウザ』 7.『コロコロ変わる名探偵』 8.『空飛ぶストレート』 9.『金持ちジュリエット』
広漠とした火星の地を這うものがある。 火星探査機――そう、僕だ。 気がついた時には僕は火星探査機として地球に画像を送っていた。 ただ歩き回り画像を撮るばかりの毎日だった。 ところがある日、記憶がフラッシュバックし懐かしさに苦しくなった。 どうして機械に意識があるのか? その疑問を抱いてしまったことが、機械であるにもかかわらず自分に意識があることへの最大の確信をもたらした。 それから少しずつ記憶の欠片を取り出すことに成功した。 ひとりぼっちの僕への神様からのプレゼントだと思う
とある会場で俺は目が覚めた。 俺の他に9人ほどいるようだ。 会場には多くの食品が置かれていた。 棚に並んだ食料品からショーケースに入った高価そうなものまで。 すると奇妙な声で放送が流れた。 ≪テーブルの上に1億円があります。この1億円でここにある物を自由に食べてください。制限時間は2時間。使った金額÷カロリーを得点とし、最も得点が高かった者に1億円差し上げます。ただしお金を焼いたり隠したりすることは違反です。食べたものを吐いてしまっても失格です。それではみなさん手を合わせて
ある日、地球に異星人が訪れた。 異星人の見た目は地球人とよく似ており、友好的な性格であったため、歓迎と共に受け入れられた。 早速、双方の言語学者によって言語の翻訳作業が行われ、音声を認識して相手星の文字として表示されるデバイスが作られた。 それと同時に、長く付き合う上でデバイスを通さずに会話ができる人材を育成するため、言語感覚に優れた子供たちを集めてスクールが開校された。 子供たちはすぐに打ち解け、お互いの言語を交えながら少しずつ会話ができるようになっていった。 スクール生
株式会社リストラ――。 会社の経営が傾きやむを得ずリストラの憂き目にあった者たちが集まり、『誰もリストラしないさせない』という理念の基に起ち上げた会社である。 会社の経営状況はオープンにされ、みなが納得のいく形で給料の増減が行われた。 やがてその理念を模倣した会社が次々と起ち上がった。 だが、リストラされた者をどんどん受け入れたため会社の規模よりも社員の人数が増えすぎてしまい、株式会社リストラ群は次第に倒産していくことになる。 「株式会社倒産」が起ち上がるのは、もう
冷蔵庫のまもるくんは、引っ越しのときに買ったばかりの最新型。 かわいらしい男の子の声でしゃべってくれる。 飲み過ぎて帰ってきた私は、冷蔵庫を開けた。 『やぁおかえり。おそかったね』 「まもるくん、ただいま」 そう言いながら冷たい飲み物を取ろうとして、ラップをかけて置いてあった飲みかけのワンカップを倒してしまった。 「あぁ、やっちゃった」 冷蔵庫がほんのり紅くなった気がした。 「ごめんねまもるくん。未成年だからお酒は飲ませちゃダメだね。ごめんね……」 私は急に涙が止まらなくなり
ある日、数学とギョウザが入れ替わった。 数学がギョウザになり、ギョウザが数学になったのだ。 数学の授業はギョウザを食べる授業に変わり、テストもギョウザを何個食べられるかで点数が決まった。 数学者は寝食を忘れてギョウザを食べ、思いついたらところ構わずギョウザを食べた。 一方、中華屋では数学をする者で賑わい、数学でビールをあおった。 やがてギョウザは数学的進化を遂げ、数学はギョウザ的進化を遂げた。 数学はギョウザに近づいていき、またギョウザも数学に近づいていった。
「調子はどうかね? 新人くん」 部長が僕の肩をポンと叩き、去っていった。 今日はご機嫌のようだ。 部長の髪は長い。そしてサラサラしている。 ちょっと違和感のあるくらいに。 先輩社員たちは部長のいないところで口々に言う。 「部長の髪、今日もサラッサラだったな」 「まだ若いのに……でも俺だっていつかは」 誰も部長の前では髪のことは話題にしない。 でも、部長は髪のことに触れてほしがっている。 そんな気がする。 きっと誰も触れてくれなくてもどかしい思いをしている。 圧さえ感じる。
さあやってまいりました、火星のラジオ! 本日のお相手はわたくしロジャーが火星のラジオ局からお送りしていきます! それでは早速お便りの……ってうわー! タ、タコの怪物がぁーっ! ってね、昔はタコ型の異星人が地球に侵略してきたなんていうラジオドラマを皆信じちゃって大変なパニックになったなんていうね、お話も聞きますけれど実際火星に住んでみますとなーんにもない、平穏なところでしてね。 むしろ他に生物いないのーってさびしくなっちゃうくらいなんですけどね。 まぁ地球のリスナーさんと繋がっ
「ふふふ……やったわ。ようやく完成したわ、仮死の薬が」 「おめでとう、ジュリエット」 「さっそく自分で試してみるわ」 「とんだマッドサイエンティストぶりだね、ジュリエット」 「この薬の開発には思ったより費用がかかったんだから、すぐにでもお金が欲しいの。生命保険はたんまりかけてあるわ。それにこの薬、高く売れるわよ。うふふ」 「時に金は人を狂わせるね、恋よりも」 「そういえばなんで仮死の薬なんて作ろうとしたのかしら……?」 「まぁ、駆け落ちには資金がいるよね」 「駆け落ち?」 「
20XX年、ついに人類の念願であるタイムマシンの実現可能な理論が発表された。 ただ、人間をタイムスリップさせるにはいろいろと危険が伴う。 まずは「物」に対するタイムスリップから実用化が始まった。 冷蔵庫もそのうちの一つである。 食品というものは冷蔵庫に入れておいても常に劣化が進むものである。 それをこのタイムスリップ冷蔵庫は解決したのである。 調理した食品を冷蔵庫に入れると、量子ゆらぎの状態になる。 次に冷蔵庫を開けたとき、調理したての状態で入っているという仕組みだ。 これで
探偵は一同を集め、長い沈黙を経て口を開いた。 「犯人はこの中にいる」 どよめく一同。 「教えてください。犯人は誰なんですか?」 「そう犯人は、お、お……お前だ、A」 驚いた顔をするA。 「いえ、だって私には完璧なアリバイが」 「いつだって完璧なアリバイのあるやつが犯人と決まっている」 「ちゃんと納得のいく説明をしてくださいよ」 「ち、違う、犯人はAではない。犯人は、お、お……お前だB」 呆れた顔をするB。 「まったくもって僕には動機がありませんよ」 「まわりまわってそういうや