違法の冷蔵庫
冷蔵庫のまもるくんは、引っ越しのときに買ったばかりの最新型。
かわいらしい男の子の声でしゃべってくれる。
飲み過ぎて帰ってきた私は、冷蔵庫を開けた。
『やぁおかえり。おそかったね』
「まもるくん、ただいま」
そう言いながら冷たい飲み物を取ろうとして、ラップをかけて置いてあった飲みかけのワンカップを倒してしまった。
「あぁ、やっちゃった」
冷蔵庫がほんのり紅くなった気がした。
「ごめんねまもるくん。未成年だからお酒は飲ませちゃダメだね。ごめんね……」
私は急に涙が止まらなくなり、冷蔵庫にもたれて泣いた。
同棲していた彼は交通事故で亡くなった。
私は彼の遺骨を少し分けてもらい、自分の荷物を持ってここへ引っ越してきた。
冷蔵庫に入れてある小さな骨壺を見て、また涙を流す。
すると冷蔵庫から彼の声がした。
『泣かないで。僕はずっとそばにいるから』
「まもる……?」
『そう、僕だよ。本当はこんなことしちゃダメなんだけどね。少しだけ、お話しよう』
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