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今井尋也「下田アナ探し」(まとめ)

下田の旅が終わり、また、東京での日常に戻されバタバタとしながら、距離感を持って下田のことを考えている。

伊豆の地も何度も足を運んでいるが、今回のアーツカウンシルしずおかのマイクロアートワーケーションのおかげで、より近くに感じることができた。
ウクライナでの戦争の映像や情報が飛び交い、コロナの感染者数や病院の情報も飛び交うなか、延期された期間の中で、私は下田に居た。何も持たずに。そして下田はのんびりとしていた。
さらに、閑散としていた。
昼も夜も海にも山にも街にも人気がない。もっというと若い人がさっぱりいない。唯一出会ったのは、堤防で海釣りを楽しむ高校生達ぐらいだった。
とても寂しい感じがした。
そして、少し時代に取り残されているような感じもした。
中途半端に何か古めかしい感じがある。これが京都や鎌倉、東北のように本格的に古ければいいのだがそうでもない。
しかし、それはそれでいい気もしてきた。
それは東京に帰ってきてからだ。
東京の時間の慌ただしさや自然環境の貧弱さの中にいると
むしろ、下田ののんびりした感じ、何もない感じ、誰もいない感じが
実はすごく居心地がよかったのだ。

空気が奇麗だからだろうか
人が素朴だからだろうか
いわゆる観光地のようにギラギラしてないからだろうか

理由ははっきりとはわからないが
唯々、居心地がよかったことだけは今になって確信している。

そしてそんな、何も起きない平凡で静かな下田滞在の中で気になることといえば、「穴」だった。

ふうっと風景を見ていたり
海辺を歩いたり
街を歩いていると
「穴」が顔を覗かす
小さい穴も大きい穴も
怖そうな穴も、優しそうな穴も
穴だらけだ
人の顔なんかほんとに穴だらけだ

穴をみてみると、それは真っ暗だ
真っ暗の中で目を凝らしていると
穴の先が見えてくる。

「いずる」半島の突端で
出ずる先に何があるのか

ふと私の脳裏に洞窟が浮かび上がる
出雲の半島にある「猪目」の洞窟だ
巨大な洞窟がまるで猪の目のように鋭い
そしてその洞窟からは古代の人骨やら生活道具やら祭祀道具が発見され
言い伝えによると出雲大社に通じているとか

半島には「みさき」が必ずある
「み」をさく場所だ
そしてそこには必ず「アナ」がある

イズル半島には岬があり、穴があり、その周りには沢山の「も」が生えていた。

いず+も=いずも

伊豆+藻=出雲

そんな妄想が伊豆半島の南端で頭を巡る

藻は漂い、群れ、繁殖し、何かを産み出す

下田の穴はどこに通じているのだろうか

白浜神社の巨大なお鉢だろうか
大島だろうか
富士山だろうか
伊豆で挙兵した東武士の源氏の魂だろうか
黒船の大砲で開国を迫られ、強制的に近代化を進められた
150年前の日本人の心だろうか
太陽だろうか
月だろうか
チェルノブイリ原発だろうか
FUKUSHIMAだろうか

下田から
本当の意味での
魂の開国が
できるように
アートの可能性を信じて
白浜神社の古代祭祀場から
タライ岬の古代祭祀場から
祈っている。

繋がった。
何が
現代と下田の地が。

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