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「縦書きの国」に梅雨が降る


「少しも雨に 濡れたくない」

贅沢を言う 女子高生。

空の機嫌が かたむいて
天気が坂を 転がり落ちて いきそうな朝、
わたしは母に 運賃をもらい 家を出る。

自転車の カギの代わりに 傘を持ち、
皆が過ぎゆく バス停で
右の遠くを 眺め待つ。


だけどあの日は
家を出るのが 遅くなり、
曇天の下 ペダルを漕いだ。

下校の頃は 雨降りで
仕方がなしに 打たれて帰る。

冷えゆく肌が シャツと抱きあい 透かしあう。
はねるクセ毛は 風に舞う。

あれほど 濡れたくなかったはずが、
不思議なことに 気持ち良い。
思い切り 濡れてしまえば ちょうど良い。

心洗われ 笑みあらわれて、
梅雨のにおいを 追いかけた。


縦書きの国に 生まれて
雨降りは物語だと 存じています

日本には そんな短歌が 生まれ落ち、
情緒あふれる ながめせしまに 歳をとる。

文章が 昔より好きになった今。

初夏過ぎて 梅雨にしたたる 縦書きの
言葉に濡れて おとぎ夢見る。

今日も明日も 街には雨が 降り綴るのね。



Δ Δ Δ Δ Δ Δ Δ Δ Δ Δ Δ Δ

惚れてオマージュ。
素敵な短歌。


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