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REP-Réseaux d’Éducation Prioritaire 優先教育ネットワーク

フランスのニュース番組『FRANCE 24』をYouTubeのライブ配信で見ていたら、5月11日にフランスで予定されている新型コロナに係る外出制限解除の段階的措置について、教育分野は『REP』および『REP+』から解除を開始すると報じられていました。

私はこの『REP』という言葉に今回初めて触れたためインターネットで調べてみたところ、教育系の日本語論文が数件ヒットしたのでそこに書かれたいくつかの説明などから読み解くと、フランスにおける『REP』とは、

○REP(Réseaux d’Éducation Prioritaire):優先教育ネットワーク

のことで、「地域や家庭の経済的事情などから素行不良や学業不振の生徒が多くみられ、国が予算を多く分配して重点的に教育政策を実施している地区」を意味するようです。

フランス在住で中学校の教員経験がある彼にも聞いてみたところ、この『REP』はフランス各地に存在し、一概には言えないものの特にアフリカやアラブからの移民などが多く住む地区と重なっていて、そこでは暴力が日常的であったり路上でドラッグをやったりなど、治安もかなり悪い場合が多いようです。例えばパリの北部も『REP』に指定されている地区がたくさんありますが、その治安の悪さは有名です。そして、おしりに「+」の付いた『REP+』はその中でも特に環境の悪い地区ということ。また、『REP』では学校外での活動も支援されており、多くの教員が配置されて課外活動なども頻繁に行われているそうですが、その実情はかなり難しいとのことでした。

日本においても地域や家庭環境による格差は存在しますが、フランスには日本とは別次元の経済的・社会的格差があり、現在の外出制限下における教育現場における影響は計り知れないでしょう。いま、この外出制限の中でフランスの子供たちはインターネット越しに授業を受け、PCを使って課題を提出したりなどしているそうですが、『REP』地区の子供たちはその多くが大人数の家族と共に狭いアパルトマンに暮らし、家庭内で利用できるインターネット環境も十分ではなく、より苦しい状況を強いられているところだと思います。このような子供たちに教育の機会を優先的に取り戻す必要があるということ自体は理解できるところです。

一方で、新型コロナウイルスは厳しい外出制限によって感染者数や患者数が減ったとはいうものの、今後は医療崩壊を起こさずにどうやって共存していくか、ということが課題になり、つまり、この地球上から新型コロナウイルスがいなくなるわけではないのです。集団免疫を獲得することによって終息を目指すことができるようですが、そのためには最低でも人口の60%から70%が新型コロナウイルスに対する免疫を獲得する必要があると言われていますので、その道のりは長いでしょう。外出制限の解除後、また同様の感染爆発が起こることが非常に懸念されており、学校教育や社会活動をどのようにコントロールしていくかがとても重要になるわけです。

少し話は逸れますが、今後の学校教育への子供たちの復帰については地域や家庭の判断に任せるというフランス政府の見解が示されているのですが、これは感染症対策としてどうなのでしょう。ボランティアで(つまり自己責任で)それぞれが免疫を獲得していくという方針でしょうか。このような危機の際には、政府が専門家の意見を聞きながら統一的な判断を一貫して行っていくということがどの国においても重要だと思いますので、これにはちょっと肩透かしを食らったような気分になります。マクロン大統領はこれについてもう一歩踏み込んでいく必要がありそうです。

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