【コスト❶】あなたの会社のコスト削減、お客様不在ではないですか?バリューチェーン思考について考察します。

価値創造コンサルタント&感性クリエイターの稲木幹也です。

先日の投稿「企業の価値創造シリーズ❶ 『企業の価値創造』」の中で、下図のように、「企業の価値創造」の3つのステップについて、動画で説明しました。

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本日は、「企業の価値創造」に絶対に欠かせない「Step-1:利益の最大化」に関するお話をします。

1.バリューチェーン思考とは

皆さんは、「バリューチェーン」という言葉をご存じですか? 米国ハーバード大学マイケル・ポーター教授が1985年発行の書籍の中で用いた言葉です。

このバリューチェーン思考は、既に30年以上経ちますが、今でも、基本的な思考法として特に製造業に役立ちます。

つまり、企業の各プロセス(例えば、開発→購買→生産→物流→販売)を通して価値を付加して、最終的な価値をお客様にお届けするという考え方です。

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2.コスト削減で商品力を落としていませんか?

企業は、利益を確保するために、毎年コスト削減を続けていかなければなりません。企業の各部門(図でいう主活動を担当する部門)は、コスト削減目標を掲げて日々努力をしていると思います。

しかしながら、各部門が「バリューチェ―ン」を意識しないで、目標達成のために動いたら、どういうことが起こるでしょうか。例えば、食品メ-カーの例を挙げてみましょう。

【購買部門】
現行より安価な原料探索に成功し、採用することで購買部門のコスト削減目標を達成した。しかしながら、その原料は、工場の生産性を落とすとともに、風味が劣ることが分かった。その結果、工場の生産コストアップ、商品にシェアダウンという結果になってしまった。

【開発部門】
ペットボトルの軽量化により、コスト削減を行った。ペットボトルの強度が弱くなり、物流倉庫で荷崩れが起きた。また、お客さんがペットボトルの飲料をコップに注ぐ時、ペコペコして持ちにくく、飲料も溢れ出した

【生産部門】
生産ラインの型替を極力行わず、一つの商品を一日に大量に生産し、生産コストを削減した。在庫が薄い商品が急にブレークして売れ始めたので、商品在庫が追い付かず、結局欠品することになった。

こういうことって、ありがちだと思います。結果論から、「なぜ風味を事前に確認しなかったんだ」「お客様の使い勝手を評価してから商品化すべきだったのでは」「なぜ、商品の適正な在庫を考えてなかったのか」ということは言えますが、コスト削減に一生懸命になると、そういう基本的なことをすっかり忘れてしまう場合があります。

3.バリューチェーン思考でコスト削減すると

バリューチェ―ン思考でコスト削減を考えて見よう。

【最も大切なこと】
コスト削減しても「お客様への価値を絶対に落とさない」ことである。お客様への価値を落としてしまうと、コスト削減で利益を創出できたとしても、売上が落ち、結局は利益も未達になってしまうという結果に陥ります。

【二番目に大切なこと】
「後ろのプロセスに価値を繋ぐこと」が大切です。自分のプロセスでコスト削減した結果、後ろのプロセスに悪影響がないかを常に念頭におくことが重要です。

コスト削減の際は、プロセス毎に「価値を付加」して、お客様に最大の価値をお届けすることにフォーカスしましょう。

4.バリューチェーン思考でコスト削減をするためには

バリューチェーン思考は、考え方としては分かる。でもどのように活用すればいいのでしょうか。ここでは、そのヒントについてお話します。

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【事務局の設置】
コスト削減は、個々の部門で実施すると、お客様満足を落とす可能性があるだけではなく、他のプロセスに歪を来す可能性もあります。

そこで、必要なのは、企業全体のコスト削減を推進する事務局の存在です。各部門のコスト削減プログラムを取りまとめ、調整および進捗管理をする役割です。

そして、定期的に関係者と進捗や課題を共有することで、「全体最適」「お客様満足」に問題がないかを確認します。

【支援活動をする部門の存在】
全体最適やお客様満足を実現するためには、プロセスに直接関わる主活動をサポートする支援活動の存在が非常に重要になってきます。

例えば、経理に関わる部門は、そのプロジェクトが全社で本当にコスト削減できているのか実績を弾いて進捗を明らかにします。

また、人事・労務管理部門は、そのプロジェクトを推進するための人の適正配置を考えます。

技術開発部門は、新規素材でも効率を落とさず製造できる技術の開発を行います。

品質保証部門は、そのプロジェクトがお客様満足を低下させはしないかをチェックします。

バリューチェーン思考では、このように主活動と支援活動の緊密な協力体制により、お客様満足を落とさずコスト削減をすることを可能にします。


ここに示したのは、あくまでもヒントですので、バリューチェーン思考を念頭におき、各企業での最適解を見つけることが望まれます。


5.まとめ

バリューチェーン思考とは、企業の各プロセス(例:開発→購買→生産→物流→販売)を通して価値を付加して、最終的な価値をお客様にお届けするという考え方です。

コスト削減で商品力を落としている企業は、一度、バリューチェーン思考に戻ってみましょう。

・バリューチェーン思考によるコスト削減する方法のひとつとして、事務局の設置や支援活動をする部門の強力サポートがあります。

・コスト削減は、社内の「全体最適」とお客様への「満足維持または向上」を念頭において進めましょう。


次回コスト❷では、こうやって創出された利益の活用方法について提言します。


企業のコスト削減に関して、今回説明した「バリューチェーン思考」をもっと知りたい、実際に適用したいと思われた方は、下のメールアドレスにご連絡下さい。
mikiya.inaki@gmail.com

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