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食品容器包装の環境配慮の裏側❶:「つつむ」機能ってこんなに凄い!

1.「包装」の基本機能

私は、大学卒業後、外資系食品会社に入社しました。そこで、まず配属されたのは研究所の包材開発をするグループでした。

その時に大先輩の包材開発専門家から最初に言われた言葉を今でも覚えています。

「包装」と言う単語は「包む(つつむ)」と「装(よそおう)」からできている。それはどうしてだかわかるか?


◆「つつむ」は、内容物を保護すること
そして
◆「よそおう」は、情報提供すること

この2つの機能が「包装」の基本機能だから、そのことを念頭において包装を開発しなさい。

その後、包装に対するお客様からの要望や機能は増え続けて行きました。
例えば、「使い勝手の向上」、「改ざん防止」、「ユニバーサルデザイン」等々。

その中でも、今最も注目を集めているのは、包装への「環境配慮」です。

しかしながら、包装に様々な機能が追加されたとしても、包装にとって最も大事なのは、やはり「つつむ」と「よそおう」の二大機能を備えることです。

本日の投稿では、食品包装に関して、基本的な「つつむ」機能について説明します。最近、各社が環境に配慮した食品包装を開発し導入していますが、それらの開発に当たっても、この「つつむ」機能の維持が最も重要になっています。

2.「つつむ」:内容物を保護

「つつむ」は、中の食品を保護する機能です。工場で食品を充填し包装したままの風味・食感・色合いをそのままお客様にお届けるのが「つつむ」の役割です。

具体的には「つつむ」機能により、「物理的要因」「化学的要因」「生物的要因」等から中身の食品を保護するための工夫が施されています。

まずは、それぞれの要因に対する事例について、紹介します。


1)物理的要因に対する保護

食品が工場で充填•包装され、段ボール箱に入れられた後、トラックで輸送されるまでに、商品に外部からの衝撃が加わります。

例えば、ガラス瓶が割れたり、ペットボトルが潰れたり、袋が破れたり、カートンケースが壊れたりする場合があります。

そのため、食品メーカーでは、包装強度試験を実施して、強度的に問題ないものだけを市場に導入しています。

包装強度試験とは、「落下」「振動」「圧縮」「輸送」「積付」の各試験であり、商品および内容物に損傷が起きない設計をします。

物理的要因に関しては、強度の他にも、「香りが逃げない」とか「水分が入って来ない」等の機能の維持も必要になって来ます。

【環境に配慮した包装開発のポイント】
環境配慮の包装を開発する際、通常、最初に取り組むのは「軽薄単小化」です。この「軽薄短小化」により省資源が実現できます。

「軽薄短小化」をする場合、包装の強度は弱くなる傾向があります。その際に、包装強度試験を実施して、基準にクリアするかどうか確認した上で実施することになります。


2)化学的要因に対する保護

プラスチック包装で、中身の食品に触れる部分については、化学的影響がないかどうかを確認するために、食品衛生法やプラスチック業界の自主規制等に基づく安全性保証が必要になります。

これには、プラスチックから有害物質が溶出しないことを保証する試験が必要になります。この試験をクリアした包装のみ市場に導入されます。

化学的要因には、化学物質の溶出の他にも、「酸化による劣化」とか「光による劣化」を考慮する必要があります。

【環境に配慮した包装開発のポイント】
通常のプラスチックは、食品衛生法等により試験を行えばいいのですが、リサイクルしたプラスチックを使用する場合は、プラスチックを回収する途中で、不純物が入ってくる可能性があるので、この試験以外に、独自で安全性評価を行う必要があります。


3)生物的要因に対する保護

通常、液体飲料では、殺菌後充填・包装(もしくは、充填・包装後殺菌)されます。包装された後は、外部からの菌を確実に遮断してお客様が開封するまで保つ必要があります。

ポイントは、殺菌条件と密閉性の確保です。

【環境に配慮した包装開発のポイント】
例えば、ペットボトルやキャップの軽量化を図る場合、その篏合の密閉性には十分に気を付ける必要があります。

ペットボトルは、通常、段ボール箱に入れてパレットに積まれますが、その際、重量がキャップとペットボトルの篏合部分に掛かる場合があります。

環境に配慮した包装を導入する際には、最終的にお客様に届くまで、密閉性が確保されていることを確認する必要があります。


3.食品容器包装の環境配慮の身近な事例

食品容器包装の環境配慮の方法としては、3R(Reduce:Reuse:Recycle)植物性プラスチック使用等があります。

環境を配慮した包装を導入する場合には、先程説明した「つつむ」機能を維持することが必須になって来ます。

それぞれの身近な事例について紹介します。

1) Reduce(リデュース:軽薄短小化)

【軽】ガラス瓶やペットボトルを軽量化することにより、使用しているガラスやプラスチックの資源を減らすことができます。

【薄】プラスチックフィルムの層を薄くすることにより、使用しているプラスチックやアルミニウム資源を減らすことができます。

【短】スティック包装やパウチの寸法を短くすることで、使用しているプラスチックやアルミニウム資源を減らすことができます。

【小】中身の開発とセットの場合が多いですが、例えば、洗剤を濃縮タイプにすると、包装が小さくなり、資源を減らすことができます。


2) Reuse(リユース)

例えば、インスタントコーヒーの詰め替え用袋商品がこれに当たります。ガラス瓶入り商品の使用済みガラス瓶に詰め替えて使うことで、環境負荷の大きいガラス資源を減らすことができます。

同じ容量の商品の場合、アルミフィルム袋はガラス瓶と比較して製造して廃棄するまでに排出されるCO2量が少なくなります。

また、ガラス瓶は捨てる時に嵩張りますが、袋は小さくコンパクトにして捨てることができるメリットもあります。


3) Recycle(リサイクル)

最近、市場では、リサイクルされたペットボトルを使用している飲料が多くなってきました。

廃棄されたペットボトルを工場でリサイクルする場合、なるべくペットボトル以外のものを混入させないようにするため、ラベルにミシン目を入れて剥がし易くしています。

実は、日本では、ペットボトルリサイクル協議会が、着色ボトルを使用しないよう自主規制を行っているため、輸入品以外、着色ボトルが出回らないため、質の高いリサイクルができています。


4)植物性プラスチックの使用

ペット樹脂は、原料の30%のエチレングリコールと70%のテレフタール酸を化学反応させて作ります。

これまでは、このうち30%のエチレングリコールをサトウキビ等の植物由来の糖蜜から製造していました。

そのため、植物性プラスチックのペットボトルといっても、残りの70%は石油由来でした。

ところが、最近、サントリーが、70%のテレフタール酸を植物由来原料(ウッドチップ)から製造する技術を開発したということで、近々100%植物由来のペットボトルが登場してくるようです。

↓ サントリーの企業情報より


4.まとめ

❶包装の二大基本機能は、内容物を保護すること(つつむ)と情報提供すること(よそおう)である。

「つつむ」機能とは、「物理的要因」「化学的要因」「生物的要因」等から中身の食品を保護するために工夫することです。

❸最近、環境に配慮した包装が開発されていますが、いずれもこの「つつむ」機能をクリアした上で市場導入しています。

❹環境に配慮した包装として、3R(リデュース、リユース、リサイクル)植物性プラスチック等があります。

❺最近のスクープとして、サントリーが100%植物性ペットボトル開発に成功したことについて紹介しました。

次回の投稿では、包装のもう一つの機能である「よそおう」について、説明するとともに、環境に配慮した包装との関係についてお話ししたいと考えています。



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