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#22 有価証券報告書の読み方【実践編】

こんばんは。Mickey★です。
今日は、前回に紹介した有価証券報告書の読み方を実際の企業の資料を取り上げて、読んでいきたいと思います。

題材は・・・みんな大好き日本マクドナルドを取り上げます。

日本マクドナルド会社の位置付け

マクドナルドの事業はハンバーガーレストラン事業のみとなっています。
アメリカにあるマクドナルド・コーポレーションと日本マクドナルドホールディングスがノウハウや商標等を使わせてもらうためのライセンス契約を締結しております。そして、日本マクドナルドホールディングスは、販売の戦略を立案して展開、お店の土地を日本マクドナルドに提供しています。
日本マクドナルドは、自社で行う店舗(直営店)以外に、マクドナルドのブランド、商品等を使って商売する権利個人と契約し、その個人がお店を経営するフランチャイズ方式の2形態で、一般のお客様に商品やサービスを提供しています。

事業系統図(日本マクドナルドホールディングス有価証券報告書21年より引用)

因みに全店舗のうち、直営店は30%でフランチャイズ店が70%となっており、フランチャイズ店が圧倒的に多い傾向があります。

直営店とフランチャイズ店舗の内訳(日本マクドナルドホールディングス有価証券報告書21年より引用)

マクドナルドの経営戦略

売上高成長率で年平均成長率5%前後、営業利益成長率で年平均成長率3~5%前後、営業利益率10%以上、ROE10%以上と書かれていました。
売上や利益の目標値3~5%のため、営業利益を上げるには、売上でなく、製造原価の原価低減や設備、人件費等の業務効率を上げて、原価削減をして営業利益を確保する方向ということがわかります。
なお、ROEについては、銀行や社債等による借入金がある場合に数字に反映されないため、極端に純資本が少ないことによってROEが高くなることもあるので、貸借対照表で自己資本と借入金の比率は確認しておいた方がいいです。

売上と利益

詳細は貸借対照表や損益計算書で見ますが、有価証券報告書の冒頭に過去5年分の売上、粗利、キャッシュフロー等の推移があるので、確認してみましょう。
売上高は対前年比で20年度は102%、21年度は110%となっています。
経常利益(営業利益と同義で、本業で儲けたお金)は、20年度は114%、21年度は107%となっています。
なお、マクドナルドの原価率は直営店の方が高く、平均で80%となっています。そうすると、経常利益がもっとあると思う人が多いと思いますが、TVCM等の広告宣伝費に売り上げの2%を使っているのと、それ以外に店舗以外の本社で働くスタッフ等の管理費用等がかかっており、利益の約半分のお金が出ていっています。
しかも、売上高の3%はブランド使用料として、マクドナルド・コーポレーションに支払う形になるので、大きな利益は出ないしくみのように感じます。

連結の経営指標(本マクドナルドホールディングス有価証券報告書21年より引用)

財務状況

貸借対照表を見ると、マクドナルドの財務状況が分かります。
なお、お金の動きは日々変わりますので、貸借対照表は、決算日時点でのお金の状態を表します。
貸借対照表は、左側に売上金や保有している土地の資産価値、将来、入ってくる現金や手形等が表されており、こちらを「資産」と呼んでいます。
右側は、マクドナルドが購入した材料費(パンや肉等)やハンバーガーを作る機械等の支払、銀行から借りたお金等、将来的に返さなければならないものが表されており、これを「負債」と呼びます。また、それとは別に、会社が利益を上げたお金を返済にあてて残ったお金や事業を行うための資本金、株主から徴収したお金等があり、こちらは「純資産」と呼びます。
負債と純資産を合わせたものの合計金額が、「総資本」と呼ばれ、会社が事業を継続する上で使えるお金や設備となります。
右側にある資産は入ってくるお金や持っている資本で、左側にある資本は会社が支払いや設備投資等で使うお金を表しており、この2つの金額は同じとなっています。
右側がマクドナルドがハンバーガー等を提供して入ってくるお金と店舗、機械や設備等の資産価値、左側がマクドナルドがハンバーガー等を提供するために必要な経費と何かあった場合に備えた余剰金と考えると、分かりやすいかなと思います。
マクドナルドホールディングスの21年12月31日時点の貸借対照表は、以下の通りです。

資産の部
資本の部

これだけを見てもなんのことだか、よく分からないと思います。
分かりやすく表したものが、以下の図となります。

マクドナルドの貸借対照表(21年有価証券報告書に基づいて作成)

右側にある資産は、流動資産と固定資産にわけることができます。
流動資産は、1年以内に現金にすることができるものとなります。それに対して、固定資産は、すぐに現金化できないものとなり、建物や土地、設備等の形があるものもあれば、商標権や著作権等の目に見えないものもあります。
左側の資本にある流動負債は、1年以内に返済しなければならないものとなります。固定負債は、すぐに返さなくてよいお金で、銀行等から長期で借りたお金や企業が資金調達のために発行する有価証券(社債)等が含まれます。
負債が他人に返さなければならないお金に対して、純資産は自社で調達したお金のため、会社が潰れたとしても、返さなくてよいお金となります。
純資産には、事業を始めるための資金や株主から出資してもらったお金、企業が設けたお金等が含まれます。
貸借対照表の形は、業界によって異なるため、一概に良い、悪いという判断はできません。そのため、同業界の貸借対照表と比較すると良いと思います。

ただし、1年以内に支払うお金よりも1年以内に現金化できるお金が多い方が良いので、流動負債が流動資産よりも多くない方が良いです。
また、負債が極端に多い場合、その企業の事業が駆け出しのスタートアップ企業は事業を拡大させるために大量に借り入れているということもありますので、その企業の事業の成長状況等から判断することもできます。
既に成熟した業界で、借入金が多い場合は支払いを賄うために借り入れているケースがあるため、先ほどに挙げた流動資産と流動負債をみると、財務状況がわかると思います。

キャッシュフロー

キャッシュフローは、営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローの3つで構成されています。
営業キャッシュフローは、本業で儲けたお金を表しています。ここがマイナスの場合は、本業でお金を儲けていないということになります。
投資キャッシュフローは、将来の事業拡大に向けてお金を使っているかどうかを表しており、マイナスの場合は、設備投資や事業買収等の投資でお金を使っていることとなります。設備や株式を売却した場合は、プラスとなります。
財務キャッシュフローは、事業を拡大するために調達したお金を表しており、銀行等からお金を借りた時はプラスとなります。逆に、借りたお金を返済している場合は、マイナスとなります。
日本マクドナルドホールディングスの場合、営業キャッシュフローがプラス、投資キャッシュフローと財務キャッシュフローがマイナスのため、本業で儲けたお金を設備投資に使用し、残りのお金は銀行等への返済にあてていることが分かるので、正しいお金の使い方をしていると判断できます。

おまけ 経営陣の給料

有価証券報告書は、企業によっては、企業の平均年齢や平均勤続年数、平均の給与等が記載されていることがあります。
マクドナルドホールディングスは、その記載ありませんでしたが、役員の給与については、記載がありました。
会長は2億6000万、社長が1億9800万、副社長が1億400万でした。
役員が平均で6000万くらいのため、かなり開きがある印象です。

今回、沿革も確認はしましたが、特筆すべきところがなかったので、省略しました。沿革を読むと、企業の特性がわかります。例えば、日本電産という会社がありますが、こちらの沿革を見ると、企業を大量に買収しているので、企業買収によって会社や事業を大きくしていったということがわかります。

この株を買う?買わない?

マクドナルドの経営状況について、見てきましたが、結局、総合的にどう解釈するのかも、入れておいた方が良いかと思い、個人的な意見を述べます。
私は将来的に上がるであろう株を選定して買っているため、この株は買わないです。
理由は、既にマクドナルドという事業が成熟した事業であり、マクドナルドで一番強いのは、胴元である「マクドナルド・コーポレーション」です。
ここは、ライセンスを各海外の会社に提供しているので、まだ進出していない国があれば、ここはライセンスを売って、売上の数%を貰うことができるので、伸びしろがあるかもしれませんが、日本マクドナルド・ホールディングスは日本の中での展開のみとなり、そうなると、店舗に直接くるお客様かテイクアウトするお客様を増やすことが鍵となります。
しかし、マクドナルドの店舗数は、2007年には約3800店舗あったようですが、現在が3000店弱のため、減少しており、日本の人口統計的にも人数が減っていくので、買う人のパイが増えないとなると、売上を上げていく見込みがないと思われます。
人数が増えないのであれば、客単価を上げるという話もありますが、セットで多く購入するよりは、学生が130円のハンバーガーを購入してお腹を満たしているイメージを持っています。
マクドナルドというとジャンクフードの代表みたいなイメージのため、健康促進でバンズを低糖質のものに変えるとかがあれば、新たなお客様を獲得することはできるかもしれません。でも、そういうお客様がわざわざ、マクドナルドのハンバーガーを選ぶのか?というところに疑問が残ります。


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