大学院生とオンライン授業ー夏休みを控えて

前回に続き、大学のお話。

大学は前期/春学期と後期/秋学期の二期制で今はちょうど春学期の終わり。
期末テストやレポートの時期でもあるし、日本以外の多くの地域では卒業シーズンでもある(もっと夏休みが早いのでもうだいぶ遅いけど)。
とにかくこれから夏休みだ。

今学期は大学にとって例年とは全く違う春学期になった。

ほとんど全ての大学がキャンパスを閉鎖、多くの大学がオンラインでの授業を春学期中行うことになった。
大学生とオンライン授業についてのエピソードやそれをめぐるメリット、デメリットについてはテレビをはじめ、多くのメディアで取り上げられていたので、大学生ではなくともどこかで耳にしたことがあるかもしれない。

大学(学部)の講義には座学形式で知識を詰め込み、理解度を確認する必要があるようなものも少なくはない。
高校までの授業にも近いスタイルだが、こうした講義の多くは大教室と呼ばれるようなとても大きな場所に何百人かの学生が集まることになるので、新型コロナウイルス感染症の影響が懸念される今、それは避けなければならずオンラインへの移行を余儀なくされた。
Zoomなどのツールを用いて生配信のように担当教員(先生)の話を聞く形式、予め先生が作成した授業の映像を受講者(学生)各自で見る形式などなど各大学、学部、教員によってオンライン授業のやり方は様々だが、この場合、学生の理解度を確認することは教室よりも困難になった。
その為に止むを得ず課題を出すことにした結果、学生も先生も課題に生活を圧迫されるということが起きているということは特によく語られたエピソードだろう。(先生についてはあまり聞かれてない?これについてはあとで!)

前回の大学院の話を読んでくださっていればおわかりになると思うが、大学院の授業にこの形式はあまりない。

いわゆるゼミ形式という、数人、多くても十数人が集まって誰かの発表を聞く、または同じテキストを読んできて発表する(発表はする)、そして論点について議論する、という授業がほぼ100パーセントである。

これは結果的に言えば、オンライン授業との相性がそこまで悪くなかった。

もちろんスタートした当初は、誰もが戸惑った。
音声や映像のトラブルもあったし、画面を見ているだけで疲れた。
なんとなく居心地がよくない気がしてうまく発言できなかったりもした。
また、これは大学生も高校生もそれ以外もみんなそうだと思うが、授業後のおしゃべりができず物足りなさを感じたりもした。

しかし、前回の記事の通り(ぜひ読んでください!)、大学院の授業というのは険しい研究時間の合間に行われるのである。
四六時中研究している大学院生(研究者)にとって、移動時間なく、授業の時間を取ることができるということは大きなメリットでもある。

大きな声では言えないが、人の発表の最中に自分の論文を書いたり、自分の研究のための文献を読んだりしている人はいなくはないはずだ(はずだ)。
(ちなみにそれでもみんな人の発表を確実に聞いていて、質疑応答の時間には非常に的確な質問を投げてくるのでとても怖い)
オンライン授業であれば、それも教室にいる時によりも自由にできるのではないだろうか。もちろん授業の直前までであればもちろん、たくさん資料を広げてパジャマ姿で論文に取り組んでいても、そのままスッと授業に入ることが可能だ。

もちろんそれは休憩時間やリフレッシュ、切り替えの時間がなくなっているということになるので決していいとは言えないが、研究者の生活との相性の良さはある。

そして前回も書いたが、頻繁に起こる授業の延長も、次に教室を使う学生や教員がやってくるなどということもなく、オンラインでほぼ永久に可能になってしまう。
これも決していいとは言えないが、結果的には大学院の授業と相性がいいということになってしまった。
(しかし2時間越えはキツい)

出席者の人数もあって、各人はほとんど顔見知りになる。
カメラをオンにするかオフにするか、ということについては基本的にそれぞれに任されているし、電波やデバイスの状況によってはオフでも特に差し支えない。
こんなところも大学院の授業ならではだろうか。
授業や講義というより、会議に近いかもしれない。

そう考えると大学院生にとって大学のオンライン化はメリットの方が大きいように見える。が、もちろん現実はそうではない。

いろいろ困ったことはあるが、個人的に1番の問題は、キャンパスの閉鎖や入場制限によって大学の図書館が自由に使えなくなってしまったことだ。
図書館という場所がどういうところかというのは人によって違うだろうが、研究者にとってはまず資料にアクセスするための大変重要な場所である。
もう購入できない資料(本)や購入するほどではないが参照しなければならない本というのがこの世にたくさんある。
図書館に住めればいいのだろうが、現実問題そうもいかないので、大学図書館は別荘の如く自分の書庫かのように存在する。

同じくセカンドハウス化している国立国会図書館も閉館し、大学図書館は頼みの綱だが、そちらも立ち入り禁止となった時期には絶望した。

図書館もオンラインで資料を参照できるようになれば解決するわけだが、まあもちろん突然100パーセントそうもいかない。
これは自分の研究にとってだけでなく、自分の授業にとっても由々しき問題となる。
というのも、大学院生になると、周囲でも大学で授業を持っている、つまり学生ではなく教員(先生、非常勤含め)の立場にある人が少なくない。
大学生(学部)の授業がオンラインになって学生も先生も苦しいというのはそういうことで、大学院にいるとどちらかと言えば先生側の苦労がよく聞こえてくるのだ。
もちろん自分の指導教員からも学部の授業の様子を聞くし(大学院での指導教員は先生であると同時に平たく言えば先輩でもあるわけだ)、それぞれどんな風に授業をしているのかという情報交換もする。
今年1年生として大学に入ってきた学生が抱える不安はいかばかりかと思うが、今年から新しく授業を持つことになった先生の不安もそれなりなのである。

大学生はテストやレポートに奔走する時期であるが、同時に先生は採点に追われる日々である。
ともすれば先生の方は楽そうに見えるかもしれないが、提出されたレポートに全部を目を通して点数をつけ、成績を管理することは、物理的にも重労働であるし、責任も重大である。
また研究者(先生、大学院生)は授業のない夏休みに研究に集中しなければならない。かえって授業がないので誰かの意見を聞く機会も少なく、とても不安になる。それでも夏の間に成果を出さなければ、秋学期を迎えることはできない。
夏休みという実感もないが、カレンダーは確実に進んでいて、論文の締め切りが近付く。

◆お知らせ

年齢・性別・容姿を問われず、アルバイトができ、皆さんにもお会いできる場所…お世話になっていた気絶さんで「非常勤メイド」としてお手伝いすることになりました。
大学院生、研究者におなじみの「非常勤」。
メイド喫茶ではなく、ブックバー。メイドさんとはおしゃべりがメイン、本に囲まれた空間です。

誤解を招いてしまうこともあるかもしれないと考えて今のところあまり大きくお知らせはしませんが、いつかおしゃべりできたら嬉しいです。
(いらっしゃる場合はお知らせいただけるととてもとても嬉しいです。よろしくお願いします)

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