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近未来の生活

GWは読書に映画にアニメに、たくさんの作品に触れました。
たまたまですが、10〜20年後くらいの近未来を考えさせられる作品が多かったです。それらを通して考えたことや感想をまとめて投稿したいと思います。
全部おすすめです!

※致命的なネタバレは投稿しませんが、あらすじ程度の内容には触れています。下記の作品をこれから観る・読む方はご注意ください。



1.映画『HELLO WORLD』

好きなアニメ『ソードアート・オンライン』と同じく伊藤智彦さんが監督。2019年の公開当時にも興味はあったけれど観に行けていなかった作品。ジャンルとしてはSF映画になるそうで、SFを観たのはスターウォーズ以来です。

僕らは、現実世界の”記録(データ)”だった――

予告映像のはじめでも紹介されている、一瞬で物語の世界観がわかるこの言葉。

10年後の現実世界から来た自分からこの事実を告げられる主人公ですが、飲み込みが早いことにびっくりです。そして、自分も設定をすんなり受け入れていることにびっくりしました。
さすがに2027年のデータ世界に2037年の自分がやってくる年代設定は早すぎると思いましたが。

この映画は、調べれば調べるだけ解説や考察がたくさん出てきます。それだけ複雑で、たくさんの解釈ができる作品です。ネタバレになることもあり、noteで私の考察を書くつもりはありませんが、この壮大な作品に自分なりの解釈をつけることができて満足です。


2.村田沙耶香『丸の内魔法少女ミラクリーナ』

『コンビニ人間』で2016年に芥川賞をとった村田沙耶香さんの最新作。
本作は4つの短篇から構成されており、後半の2篇が20年後くらいにあり得そうな未来風景だな、と色々考えさせられました。


■無性教室

私たちの学校では、「性別」が禁止されている。
学校にいない時間は自由だが、学校にいる間は、どちらでもない性として生活することになっている。(p.105)

小学校に上がると全員ショートカットが義務付けられ、衣服にも制約があり、性別がわかる名前は本名をもじった名前を名乗ることになります。

物語の主人公は高校生。
校則で規制はあっても、どうしても体付きや声で生物学的な性別がわかってきてしまう。そんな、現代から見れば “変わった” 学校社会での生き方をのぞくことができます。

現実の日本で全国的に実施しようと思ったら、表現の自由の侵害で問題になりそうなため、まず厳しいでしょう。ただ、私立学校としてどこかの地域に設立されたら、通いたいと思う人もいるのでは、と思いました。


■変容
若者から“怒り”という感情がなくなりつつある世界のお話です。

「腹が立つ」とか、「イライラする」とか、そういった感情が理解できないのです。教科書や昔の本で読んだことはあるけれど、実感としてはよくわからない。死語ならぬ、死情と表現できる感情になっています。

主人公は40歳の女性で、親の介護がひと段落して久しぶりに社会復帰したところ、世間とのギャップに驚くところから始まります。

“怒り”の感情がわからず、代わりに“悲しい”としか表現できない人物描写には「こんな人、いそう」と思いました。
見方やシチュエーションによっては、“悲しい”と思うこと自体、相手にめちゃくちゃ失礼な態度ですよね。相手はめちゃくちゃ怒っているのに。

“怒り”の感情がなければ、失礼な行為をしても相手から失礼だと思われず、色々許される社会になっていきそうです。それはとても恐ろしいことではないでしょうか。

一般的にマイナスイメージの強い“怒り”の感情ですが、私たちにとって大切な感情であることを気づかせてくれるお話でした。


3.支倉凍砂『それをAI(あい)と呼ぶのは無理がある』

生まれたときからAIが身近にある、いや、本作を読んだ今では「いる」という言葉を使いたくなります。そんな世界に生きる高校生を描いた青春物語です。

1人1台のスマホが当たり前になってきたように、本作の世界では一人ひとりがAIアバターを映像で可視化できる小さい端末装置を持っています。時代設定としては20年後くらい、もしかすると10~15年後くらいにあり得る光景です。

いや、そんな近未来でそこまで発達してないでしょ、と思うかもしれません。何を隠そう、私がそう思いました。しかし、読み進めていき「ムーアの法則」についてを知ると、意外と近い未来で実現する世界なのかな、と思いました。

ムーアの法則(Moore's law)とは、インテル創業者の一人であるゴードン・ムーアが、1965年に自らの論文上で唱えた「半導体の集積率は18か月で2倍になる」という半導体業界の経験則です。
(株式会社シナプス「マーケティング用語集」より)

半導体の集積率が上がることは、性能が上がることと同義だそうです。
同サイトで、ムーアの法則の意味を端的に、2つの側面から説明していました。

・性能面
「半導体の性能が18ヶ月で2倍になる」
・価格面
「半導体のコストが18ヶ月で半分になる」

この法則を知ったことで、昔は高かったパソコンなどの通信機器が今では安く、かつ、昔よりハイスペックで売られている理由がわかりました。

AIの発達は、人口減のこれからの世界に必要なことだと思います。ただ、色々なことがAIに代替されていく未来を、私はどちらかというと悲観的に捉えていました。ですが、本書を読むと「未来の生活、なんだか楽しそうだな」と思えてきました。

いつでも合理的な最適解を提示してくれる環境にいながら、悩み、悶え、非合理的な選択をする登場人物たち。
AIと共生する世界だからこそ、人間らしさとは何かが鮮烈に伝わる作品でした。


◇◆◇


以上、まとめて紹介させていただきました。
本当にどれもおすすめです!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


<参考>
株式会社シナプス、マーケティング用語集「ムーアの法則とは-半導体性能の原則」閲覧日:2021年5月13日(https://cyber-synapse.com/dictionary/ja-ma/understaing-moors-law-for-marketing-strategy.html#:~:text=%E3%83%A0%E3%83%BC%E3%82%A2%E3%81%AE%E6%B3%95%E5%89%87(Moore's%20law,%E6%A5%AD%E7%95%8C%E3%81%AE%E7%B5%8C%E9%A8%93%E5%89%87%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82)

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