TOC(制約理論)まとめ 基本的な考え方2

TOC(制約理論)の知識定着を目指し、学習したことをアウトプットしていきます。前回はTOCの基本的な考え方であるボトルネック(制約条件)を軸に意思決定する必要性をまとめました。今回は、その具体的な考え方をまとめていきます。

TOCの基本的な考え方
TOCは、「どんなシステムであれ、常に、ごく少数の要素によって、そのパフォーマンスが制限されている」と考えます。また、分析対象をすべて「システム」と捉えます。会社であれ、組織であれ、地域団体であれ、人間であれ、すべてシステムです。
どんなシステムでも「ごく少数の要素」=「制約条件」が問題となりパフォーマンスを低下させているため、その制約条件を改善することで全体のパフォーマンスを向上できると考えられています。

5段階集中プロセス
TOCの基本に「5段階集中プロセス」というものがあります。下記の5ステップです。

ステップ1:制約条件を見つける
ステップ2:制約条件を最大活用する方法を決める
ステップ3:「ステップ2」の意思決定にほかのすべてを従属させる
ステップ4:制約条件の能力を高める
ステップ5:惰性に陥らないように「ステップ1」に戻る

TOCの「基本の型」といった感じでしょうか。ステップ1から順に進んでいき、ステップ4まで終わったら、ステップ1に戻ります。これをひたすら繰り返すことで全体のパフォーマンスを向上します。これ、結構重要なので
前回のイメージを用いて、この5ステップを説明してみます。(本日の主題になります。)

ステップ1:制約条件を見つける
まず最初にやることは制約条件(ボトルネック工程)を特定することです。企業をシステムとして捉えたときに、制約条件になっている個所を探します。今回設定したシチュエーションだと工程2の生産能力が制約条件(ボトルネック)になります。製品を造れば、造るほど売れて利益を得られるのに工程2がボトルネックになって製品の製造が停滞しています。(Image 09)

基本的な考え方_Image09

ステップ2:制約条件を最大活用する方法を決める
制約条件(ボトルネック工程)が判明したら、まず制約条件の最大化を図ります。ここでの最大化とは新たな投資をせずに、制約条件を最大限活用する方法を考えます。たとえば、生産工程で設備に制約があるとすれば、対象設備は休憩時間も停止させず操業時間内はフル稼働させます。また労働力に制約があるとすれば、必要な人材を社内からかき集め十分に投入します。とにかく、ほかの工程と比べて最優先で稼働するように設定します。これがまず最初に考えられる施策になります。(Image 10)

基本的な考え方_Image10

制約条件(ボトルネック工程)をとにかく最優先で稼働させると、そのうちに能力の限界に到達します。この例でいうと工程2の生産能力はやがて限界に達します。
工程2の生産能力が限界に到達した場合、製品X、または製品Yのどちらを優先的に製造するか意思決定する必要が出てきます。利益に繋がる製品を優先的に製造したいと考えますので。ここで登場するのがスループット会計で説明した「製品ごとの粗利/工程2の利用時間」になります。
工程2が稼働するごとに得られる利益が多い製品を優先して製造します。具体的には、製品ごとの粗利益を算出し、それを工程2の利用時間で割ることで工程2が時間当たりに生み出す利益を算出することができます。その結果に応じて優先して製造する製品を選択します。(Image 11)

基本的な考え方_Image11

詳しくは、以前まとめた「スループット会計1」と「スループット会計2」を参照してください。
とりあえず、「スループット会計1」を下記からどうぞ。

ステップ3:「ステップ2」の意思決定にほかのすべてを従属させる
「ステップ2」でボトルネック工程をとにかくガンガン稼働させ、優先して製造する製品も決めました。次は、その意思決定に対してほかのすべてを従属させます。
例えば、ボトルネックの前工程にあたる工程1であれば、工程2が加工する製品を、必要な分だけしか加工しません。工程1が加工し過ぎた場合、それは工程2で処理しきれない仕掛在庫となり、工場のスペースを圧迫するなどします。在庫の管理コストが上昇するだけです。
また、ボトルネックの後工程にあたる工程3であれば、工程2の生産量に同期する形で業務処理量を調整します。工程3以降の処理能力をいくら増やしても工程2の処理が追い付かなければ何の役にも立ちませんので。(Image 12)

基本的な考え方_Image12

ステップ4:制約条件の能力を高める
ここまできてやっと制約条件の能力そのものを高める活動に着手します。これまでは、お金をかけずにすぐにできることを行ってきましたが、ここでは投資を行います。例えば、深夜労働手当の大幅増加を認め、シフトを24時間体制にする。設備投資を行い、設備を増やし、処理能力そのものを増やす。専用の技術者が必要であれば、新たな雇用も検討します。工程2を外部にアウトソースするのもありだと思います。
極端な言い方をすると、製品を造れば造るほど売れる状態であれば、市場の需要を満たすだけ製品を造ればそれだけ利益に繋がります。ステップ3まで進めても制約条件の能力が不足しているのであれば、ここでは投資までして能力を高めればよいと考えます。(Image 13)

基本的な考え方_Image13


ステップ5:惰性に陥らないように「ステップ1」に戻る
「ステップ4」まで進むと、ボトルネック工程もそれなりの改善が進みます。その段階で必要なのは、違う個所がボトルネック(制約条件)になっていないかを再確認することです。
今回の例でいうと、当初は工程2がボトルネック工程でした。しかし、ステップ4まで進めた結果、生産能力も増強されています。もしかしたら、工程2の生産能力に工程1がついてこれなくなっているかもしれません。もしかしたら、市場の需要は既に十分に満たされているかもしれません。
制約条件を一度改善して満足することなく、違う箇所に新たな制約条件が生まれていないかを常に確認します。
このようにステップ1から5を継続的にループさせることで、企業が利益向上に向けて前進するロジックを構築することができます。(Image 14)

基本的な考え方_Image14


5段階集中プロセスについて一通りまとめてみましたが、凄いシンプルだと思いませんか?
簡単に表現すると、
「ゴールを設定したら、それを阻害する制約条件を特定し、集中的に改善する。改善した後、違う個所が制約条件になってないか確認する。」
って感じでしょうか。考え方は非常にシンプルなんですよね。

かなり長くなってしまいました。次回はTOCで出てくる評価指標についてまとめます。


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