TOC(制約理論)まとめ 基本的な考え方3

TOC(制約理論)の知識定着を目指し、学習したことをアウトプットしています。今回は基本編の最後として、評価指標についてまとめてみたいと思います。

TOCの評価指標
TOCでは下記3つの指標で企業を評価します。

①スループット
②純利益
③投資利益率

そして、この3つの指標を求めるために、下記の算出が必要になります。

・在庫
・業務費用

この5つの指標を理解するのが、結構大変です。とにかく「スループット」「在庫」「業務費用」がややこしい。本日は、このあたりを集中的に整理します。

評価指標①:スループット(T) 
スループット(Throughput)は粗利益です。製品の販売価格に対して、純変動費を差し引いたものがスループットになります。製造業の場合、製品に対する純変動費はほぼ材料費になります。なので、スループットは粗利益と言い換えられます。(Image 15)

基本的な考え方_Image15

このスループットがTOCでは非常に重要視されています。まずはスループットの最大化が最優先です。このあたりは後ほど説明します。

在庫(I)
この在庫(Inventory)という考え方も少し癖があります。書籍によっては、「投資」と言い換えたり、「在庫・投資」と表現している場合もあります。こちらでは在庫と表現することにします。
内容ですが、会社に存在し、売却できるものはすべて在庫として考えます。名前に在庫がつくものはすべて在庫です。例えば、投入前の原材料は当然ですが、仕掛在庫、製品在庫ももちろん在庫です。
さらに、製品を製造するための機械設備も在庫になります。(その気になれば設備だって売れるため。)工程に配置した製造設備も在庫ですし、配送に使う車両も在庫です。また、設備の維持で使用する消耗品なんかも、在庫に該当します。
繰り返しますが、これらはすべてその気になれば売却できるものです。なので、すべて在庫として扱います。(Image 16)

基本的な考え方_Image16

業務費用(OE)
在庫をスループットに変換するために必要なものを業務費用(Operational Expense)として扱います。
人件費はすべて業務費用です。工員も工場長も営業もすべて業務費用です。
先ほど、工場の設備は在庫として扱いました。工場の設備は稼働することで製品の製造に貢献します。そのため、設備の減価償却費は業務費用として扱います。
さらに、設備稼働に必要な消耗品がありました。これは、使用前は在庫ですが、使用した時点で業務費用になります。使用することで製品製造に貢献することになりますので。(Image 17)

基本的な考え方_Image17

これで、「スループット」「在庫」「業務費用」が出揃いました。ここからは、この3つの指標を使って評価指標の残り2つとなる「純利益」と「投資利益率」を算出していきます。

評価指標②:純利益(NT)
純利益(Net Profit)は営業利益だと考えられます。計算方法は下記になります。

純利益(NT)=スループット(T)-業務費用(OE)

スループットは売上から材料費を差し引いた額になります。そこから業務費用(人件費、減価償却費、経費)を差し引けば利益が算出できます。この例で説明した粒度で考えると損益計算書の営業利益と同じになると思います。
間違いなく、この指標がなければ企業の業績評価できません。算出プロセスこそ違いますが、評価尺度として用いているものは一般的なものと同じになります。

評価指標③:投資利益率(ROI) 
最後の評価尺度は、投資利利益率(Return On Investment)です。計算方法は下記になります。

投資利益率(ROI)=「 スループット(T)-業務費用(OE) 」/ 在庫(I)

置き換えると「純利益/在庫」です。
たとえば、設備の追加投資を行った場合、その投資により純利益がどれだけ増加するのかを確認した上で投資の意思決定を行います。これも業績評価には必要な指標です。例えば、TOCでは5段階集中プロセスのステップ4で投資を行います。この投資において投資利益率(ROI)を算出し、意思決定の判断材料に用いたりします。

「スループット」「在庫」「業務費用」の優先順位
TOCでの評価指標として、スループット(T)、純利益(NP)、投資利益率(ROI)の3つがあることを説明しました。そして、この3つの指標には、すべてスループット(T)、在庫(I)、業務費用(OE)で構成されています。その優先順位を考えたときに下記の順番になります。

1.スループットの拡大
2.在庫の削減
3.業務費用の削減

とにかくスループットの最大化が優先です。3つの指標を比べたとき、限界値がないのはスループットだけです。在庫と業務費用はどんなに頑張っても限界があります。極限まで下げればゼロになりますが、それは操業停止を意味します。また、在庫も業務費用も過度な削減は稼ぐ力そのものを削ってしまうことにもなりかねません。
残るは在庫と業務費用になりますが、優先するのは在庫になります。在庫の削減というか、適正化は稼ぐ力を高めます。特に仕掛在庫や製品在庫の適正化は、在庫管理コストや廃棄コストの削減に繋がります。対して、業務費用の削減は固定費のであり、主には労働者の削減に繋がります。労働者を一度解雇した場合、同じ能力の労働者を再度雇用するのは非常に難しくなります。そのため、TOCでは業務費用の削減は一番最後に設定されます。

まとめ
今回はTOCの評価指標についてまとめました。TOCはとにかくスループット優先という考え方です。TOCは非常にシンプルな理論ですが、独特の癖があり、「ザ・ゴール」を一度読んだだけでは理解が難しいと思います。私もこの記事を書くことでだいぶ整理が進みました。単に自分用のnoteを公開しているだけですが、誰かのお役に立てたら嬉しく思います。

3回に分けてTOCの基本的な考え方をまとめてみました。このあたりで区切をつけて、次は途中だったスループット会計に戻りたいと思います。

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