SDGs経営について2(事業戦略)

前回はSDGs経営の概要についてまとめました。世界が2030年に向かって動き出している今、SDGs経営に取り組まないこと自体が経営リスクになりつつあります。今回はSDGs経営のメリットを事業戦略を中心にまとめてみたいと思います。特に「共通言語からの共感」が戦略のポイントになると考えています。(今回は少し概念的な話が中心です。)

市場の拡大
国連開発計画(UNDP)によれば、SDGsの目標を達成するために、世界で年間5~7兆ドルの資金が必要となり、投資機会は途上国で1~2兆ドル、先進国でも最低1.2兆ドルとも試算されています。これまでは経済合理性がないと判断されて取り残されてきた市場もありますが、そこにはいまだに多くの社会的課題が残っています。経済合理性だけの短期的な投資判断からSDGsの目標達成に向けた長期的な投資判断がなされることで新たな市場の創出が期待されています。新たな市場に対して自社の技術や製品が適用できる場合、それは新たな事業機会の獲得として期待されています。

事業化の視点
日本は豊かな国です。例えばSDGsの目標の1つ「飢餓をゼロに」があります。これまではいきなり「飢餓をゼロに」と言われても実生活からはピンとこないと思います。しかし、ここがSDGsのポイントの1つになるのですが、世界の共通目標の1つとして「飢餓をゼロに」と言われた場合、
「飢餓をゼロにするために自社として何かできないだろうか?」
と思考することになると思います。SDGsは社会的な課題を明確にしていますので、その課題解決を起点にビジネスを創出するような思考パターンを得ることができます。これを「アウトサイドイン」と呼ぶようです。SDGs経営を実践し、アウトサイドインの思考で社会課題の解決に正面から対峙することでこれまでにない新たな事業を創出する機会に繋がると考えられています。

連携の加速
SDGsという共通言語により、世界中がステークホルダーになろうとしています。それは、世界的な共通の課題解決に向けて連携が加速するとも考えられています。これまでも企業間連携や産学連携など様々なビジネス連携が行われてきました。そしてこれからは、企業、行政、大学、民間団体など、さまざまな組織との連携が生まれる世の中になると思います。SDGsという共通言語により、世界的に共通の課題が生まれ、課題を解決しようと考える各団体の考え方に「共感」する形で団体同士が結びついていくのだと思います。
このように、SDGs経営により社会の課題に真剣に対峙することで、これまでは到底繋がることがなかった組織との連携が生まれる可能性が出てきます。また、組織間連携が加速することで、単独企業ではできなかった革新的な事業展開に繋がる可能性も秘めています。

マーケティング
SDGs経営は企業ブランド、商品ブランドの構築にも結び付きます。SDGsの認知が進めば進むほど消費者の意識も変わってくるでしょう。例えば、同じ機能の商品が同じ価格で販売されていた場合、SDGsの取り組みが認識できる商品が選ばれるはずです。これは「共感」が購買に繋がることを意味します。逆の視点で考えた場合、SDGs経営が世界的に浸透すれば、どの企業も商品やサービスにSDGsの取り組みを織り交ぜ、訴求すると思います。そうなった場合は、SDGsに取り組むことが市場で競争の土俵にあがる条件になってくると思います。
マーケティングの側面に関しても、企業のSDGsに対した取り組みに対して、消費者の「共感」有無が消費に影響を与えると考えられます。

資金調達
SDGsとセットで、「ESG投資」の認知も進んでいます。ESG投資とは、従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の要素に配慮した投資のことを言います。特に、年金基金など大きな資産を長期で運用する機関投資家を中心に、企業経営のサステナビリティを評価するという概念が普及し、長期的なリスクマネジメントや、企業の新たな収益創出の機会を評価するベンチマークとして、SDGsと合わせて注目されています。
投資の考え方なので、株式市場で資金調達をしている上場企業しか影響がないように思われますが、今後は金融機関にもESG投資の価値観が浸透すると思います。そうした時、金融機関の融資判断にも財務情報以外のESG情報が影響される世の中になると思います。

今回は事業戦略に関係するトピックを中心にまとめましたが、私がポイントだと思うのは下記3点だと思います。
・SDGsは世界の共通言語であること
・共通言語と共通課題により世界中がステークホルダーになること
・ステークホルダーとの「共感」が事業戦略に大きく影響を及ぼすこと

長くなってしまったので本日はこの辺りにしておきます。次回は人事戦略を中心にまとめてみたいと思います。

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