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社長が“働き者”でなければならない理由

 大学を卒業してから、途中1年間のアルバイト期間をふくめ、12年半のサラリーマン生活を経て、個人事業主(フリーランス)として独立。9か月後に法人化して、かれこれ15年半。
 ビジネス書やセミナー、音声教材を活用することで、零細企業の経営者の割には、自分なりに経営の勉強をしてきたつもりです。経営を語る人は数多くいて、どの人の話が正しいのかがわかりませんでした。しかし、ようやく最近になって、真実らしきものにたどり着きそうな気がしています。そんなお話をしたいと思います。

良い会社と悪い会社は存在しない。
良い社長と悪い社長がいるだけ。

 社長専門の経営コンサルタントとして活躍した一倉定さん、たしか船井総研の元社長の小山政彦さんも本の中でおっしゃっていましたが、「会社経営は社長で決まる」というのは、事実だと思います。
 特に社員数50名以内の零細企業は、社長の能力が「もろ」に経営の結果に反映されるようです。

 よく考えれば当然ですが、中小零細企業は創業者(もしくはその子息)が株主でもあり、経営者でもあることが普通です。権力が集中するため、勉強熱心な良い社長であれば、成長するのは当然でしょうし、経営にスピード感が出るはずです。もちろん、抜擢人事も可能。言ってみれば、社長の「ツルの一声」ですぐに決定して、動き出すことができます。

 しかし、逆に言えば、仕事をさぼるダメ社長であれば、あっという間に市場からそっぽを向かれる可能性もあるわけです。
 私が過去に接点をもった方だけでも、こんなダメ社長を知っています(すでに倒産した会社ばかりですが)。

  1. 経営不振を景気や業界のせいにする社長

  2. 「いい従業員がいない」が口癖の社長

  3. 社長室でいばることが仕事と思っている社長

  4. 経費でベンツを乗り回す社長

  5. 仕事より、お酒を飲んでいる時間のほうが長い社長

  6. 愛人を経理部長として雇っている社長  など

 なんとなく、悪い社長には共通点があるようです。
 その一方で、良い社長にも共通点があるのではないか。私はいつも、そんなことを考えながら経営をしてきました。

会社 VS 会社なら負けるが、
社長 VS 社長なら、勝てるかも知れない

 創業年数、資本金の額、従業員数、取引実績、売上高など、仕事を発注する側からいえば、やはり安心できる会社に依頼したいのが人情です。特に日本の会社は、大企業ほど保守的な傾向があり、私たちのような零細企業は、一見すると、大手・中堅の競合企業に勝てる要素はまったくありません。これは、真っ向から「会社 VS 会社」としてぶつかった場合です。

 しかし、私の実体験から申し上げますが、社長の熱意だけで、発注する側の担当者の気持ちをつかんで、受注を勝ち取るということはめずらしいことではありません。
 やはり、B2Bの企業間取引といえども、仕事を依頼するのも、仕事を依頼されるのも「人」。熱意が相手に伝播すれば、

「この人なら信用できそうだ。お願いしてみよう!」

と心が動くものだと思うのです。
 ところで、この「熱意」とはいったい何でしょうか。

熱意とは、これまで生きてきた姿勢が勝手に現れるもの

 王貞治さんという、数多くの記録を打ち立てた、ホームランバッターがいました。何かの本で読んだ話ですが、本当に練習熱心な選手だったそうです(イチロー選手が王選手を尊敬していることからも、わかりますね)。

 とにかく、ベテラン選手になった後も、誰よりも夜おそくまで練習し、試合でバッターボックスに立つと、いつも自然とこう思えたそうです。

「自分は誰よりも精一杯、練習してきた。
 そんな自分がヒットを打てないはずはない」

 有名選手になってチヤホヤされ、遊びにうつつを抜かしている選手は、バッターボックスに立って、こんな思いは抱かないでしょう。
 これは、スポーツ選手だけでなく、ビジネスパーソンにも言えることではないでしょうか。

 例えば、絶対に受注したい企業の担当者との商談に臨んだときを、イメージしてもらえればわかると思います。

「たぶん、無理だろうな……
 昨日まで忙しくて、十分に準備してこなかったし」

「誰よりも一生懸命、仕事をしてきた。
 自分なら、必ず仕事をもらえるはずだ」

 「仕事に対する姿勢」「これまで生きてきた自信」のようにノンバーバルで実体のない直感は、自然と相手が心に抱いてしまうものです。

 だから、王選手が他のどの選手よりも多く練習したように、極論すれば、熱意は労働時間に比例するものだと、私は断言したいと思います。

 もし、「将来は独立して社長になりたい」あるいは「専門分野で一流と呼ばれるようになりたい」と考えるのであれば、労働時間を増やすことが最短距離であり、特に私をふくめ能力が並以下の人にとっては、唯一の方法だといえると思います。

人の2倍働くのは意外とカンタン

 労働時間を増やす、とお伝えしましたが、では、どのくらいの時間を充てればいいのでしょうか。

 週休2日制で、1日8時間働く人は、年に1,920時間働くことになります(ただし、有休休暇をとる人の労働時間はもっと少ない)。
 この1,920時間を基準として、2倍、3倍の成果を出すにはどうすればいいのでしょうか。

 実は「仕事で成果を出す」という場合、2倍の成果を得るには、時間の集中投下の効果が出るため、その平方根で十分。つまり√2≒1.41です。

1,920h × 1.41 ≒ 2,700h

 3倍の成果を出したければ、√3≒1.73です

1,920h × 1.73 ≒ 3,300h

 なお、仕事でとんでもない偉業を成し遂げる社長がいます。スティーブ・ジョブズ、本田宗一郎、稲盛和夫とか。
 そういう方はだいたい、年に5,000時間以上働いていたというから、驚きですね。でも、そのくらい労働時間にぶち込まないと、偉業を達成するのは難しいというのも納得できます。

 まとめると、こんな感じでしょうか。
 なお、この労働時間には

  1. 仕事に関連する書籍を読む

  2. セミナーや勉強会に参加する

  3. 音声教材を聴く

などの時間をふくめて大丈夫です。


フリーランスは社長ではない、という誤解

 ところで、最近、個人事業主として活動する人を多く見かけるようになりました。あるいは実質的に、社長一人の株式会社なんかも増えているように感じます。早期退職してコンサルタントを目指すとか、農業に挑戦する、というスモールビジネスが人気のようです。

 ただし、「フリーランス」という言葉の響きに惹かれ、「自由にのびのびと自分のやりたいことができる」「嫌な上司にペコペコしないで済む」といった安易な考えで起業すると、後悔することになるかも知れません。

 実は、フリーランスほど「不自由」な立場はないし、嫌な上司はいなくても「嫌なお客」と直接対峙しなければならないことは、十分にあり得ます。むしろ、よほど特殊な才能を持っていないかぎり、起業したばかりのフリーランスが仕事を選べる状態にあるとは、とても思えないからです。

 だから、フリーランスであればなおさら、社長や一流をめざすビジネスパーソンと同様、「誰よりも多く働く」という姿勢は欠かせません。

 「労働時間」というと誤解があるのなら、「一流への道を歩む修業期間」と言い換えてもよいと思います。
 昨今の「働き方改革」を真に受けていては、一流をめざしている同僚とは、ますます差が出るはず。2021年の終わりに、改めて、新年の目標を考えてみてはいかがでしょうか。

 

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