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一瞬の風になる

アカシアの香りが5月の風に揺られて、甘く緩やかに通りすぎてゆく。 暖簾をくぐるようにアカシアの木を越えると、通りを挟んで向かい側に出来たばかりのコンビニがある。両脇に大きなペットボトルを抱えた少年が、そのコンビニから出てきた。一本では足りないのがよく分かる、初夏の暑い日だった💦 ダボダボのジャージ姿の少年が一瞬よろめいた!バランスを崩してペットボトルを必死に抱え直す💦どうやらケガをしているようだ💦フゥッと深呼吸するような動作をして姿勢を正し、歩き始めるかと思いきや、ペットボト

    • ~南へ50㎞ カラスのカァ君と共に~

      台所から出る野菜くずを、毎朝裏の畑に撒いて肥料がわりにしている母。 その野菜くず目当てに一羽のカラスが、毎日ほぼ決まった時間にやって来るという。一般的なカラスのイメージとしては…通行人を蹴ったり、バス停に置かれた旅行客のバッグを漁ってみたり、威嚇するような鳴き方をしたり…特に繁殖期にはヒナを守るため神経質になるらしく、凶暴なイメージが殆どだ。 驚いたのは、母は怯えるでもなく、そのカラスをカァ君と名付け「そこに野菜のくず撒きたいから少し下がって待ってな!って教えたら後ずさりして

      • ~夏にまつわること~

        祖母が畑からもいでくるヘタの周辺が緑色の完熟じゃないトマト…もったりとあったかいトマトを井戸水で冷やし、塩をかけて食べた、いかにも昭和の夏…となりのトトロの世界だ…🍅 トウモロコシを茹でてる時の匂いが好きだったり…🌽 蜜になって天を仰ぐ汗だくの向日葵…🌻 耳にあてた貝がら…遠く波の音…🐚 気泡だらけの氷を入れたキリンレモンを妹と分けあった夏休み…🍋 すいかと浴衣と蚊取り線香…🍉 海へ行く前日のおやつの買い出しと袋詰め…🍬 麦わら帽子は実家の夏の懐かしい香りがして…👒 バスの中

        • もう一人のワタシ

          某ホテルの客室掃除の仕事をしている。 213号室の壁紙は白樺の林をイメージしているのか、派手すぎないシックな色合いとノスタルジックな風景は田舎暮らしが長い私にはホッと癒される好みの壁紙だ。 その日は足元から50センチ先に落としたダスターを拾うのもしんどい最悪の体調だった。 ベッドメイキングしたばかりのふかふかのベッドに今にも倒れ込んでしまうくらいに。 『午後からの仕事は引き受けた!引き継ぎだけして帰って休みなよ!』耳元でささやいたのはもう一人のワタシだった。バトンタッチする

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