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アジア人に対するヘイトクライム:本当の敵は誰?

<はじめに>

コロナの流行が始まってからアジア人に対する差別が世界各地で増えました。アジア系の人を狙った暴行事件が今米国でもとても増えています。この事実は米国でも報道が少ないと言われていますが、日本でも全然聞きません。そんな中、Michelle Kimさんの記事を読み、日本語を主な言語とする方々にもぜひ読んで欲しいと思い、Michelleさんにまた翻訳・掲載する許可をいただきました。人種差別のことを知ると、知るほど、歴史が深く絡み本当に複雑なものであると感じます。そして日本の人種差別問題とも重なる色々な部分があると感じます。

この記事はアメリカにいる人が主なターゲットとなっているため、少し日本と違う部分もあったり、日本ではなかなか聞いたことのない言葉や概念も出てきます。そして著者がリンク付けされているリソースはすべて英語になっています。手伝ってくれた櫻井、いつも本当にありがとう。

私もまだまだ勉強不足ですが、こういった記事をきっかけにどんどん調べて、知って、行動につなげていこうと思います。
↓オリジナル記事はこちらよりご覧いただけます↓

<記事本文>

ここ数週間で、アジア系のビジネスパーソンやアジア系の人々、特に年配者を狙った暴行事件が20件以上起きました。しかし、大手メディアではほとんど報道されていません。このような暴行事件を捉えた動画は、主にアジア系の活動家、著名人、ジャーナリストの個人のSNSアカウントを通じて拡散されました(Amanda Nguyenさん、Dion Limさん、Dr. Kionaさん、Daniel Dae Kimさん、Benny Luoさん、Lisa Lingさん、Daniel Wuさんに感謝申し上げます)

拡散された動画は、1月31日の日曜日にオークランドの中華街で91歳の中華系男性が地面に押し倒される様子を映し出しているものや、その二日後にサンフランシスコで84歳のタイ系男性、Vicha Ratanapakdeeさんが押し倒され、殺された時の映像です。さらに複数の中華街で、アジア系のビジネスパーソンを狙った強盗事件も発生しています。ニューヨークでは2月3日に、61歳のフィリピン系の男性が顔面を耳から耳に切りつけられ、同日にはオークランドで、70歳のアジア系の女性が襲われ、物を奪われるという事件が起きました。

2020年3月から8月までの間に、「Stop AAPI* Hate」という団体は米国全土で2,583件以上のアジア系の人に対するヘイトクライムの報告を受けています。しかしメディアは、これらの事件に関してほとんど報道していません。新型コロナウイルスが有色人種へ及ぼす不釣り合いな影響が報道される際も、アジア系米国人の失業率の高さは報道されていません。太平洋諸島系の人のコロナ死亡率の高さが、白人や他のアジア系の人の2倍である事実も、報じられていません。

 *AAPI=Asian and Pacific Islanders(アジア・太平洋諸島系米国人)
↓STOP AAPI Hateのホームページはこちら↓

米国には、アジア系の人々は静かで、努力家で、政治的な意見を発しない「おとなしい」移民集団である、という単純化されたイメージがあります。これは「モデル・マイノリティの概念」に基づいているものです。60年代に白人至上主義者に反対した黒人系社会正義活動家は、国家的脅威とみなされました。それに対立する立場としてアジア系の人々を位置付けたため、このようなイメージが形成されたのです。

この政治的背景をもつ「イメージ」はアンチ黒人的であり、白人至上主義者の狙い通り、アジア系の人と他の有色人種を二分にするという目的を見事に達成してきました。同時に、白人至上主義・アンチ黒人的な考え方・資本主義・植民地主義に根ざした不公正で古びた制度を守るために、少数者の経済的成功を利用しつつ、その他のアジア系コミュニティの努力や苦しみを揉み消そうと、意味がないものにしようと、見てみぬふりをしてきました。

最近起きたアジア系の年配者への暴行事件の多くは、黒人によるものでした。このような攻撃は、人種の間に作られてきた溝を更に広げてしまっています。アジア系と黒人系米国人コミュニティの間の歴史的背景と現在進行形の緊迫状態を、再び露呈させています。

この一連の暴行事件を受け、多くのアジア系の人は激怒し、加害者の早急な逮捕と厳しい罰を要求しています。「知らしめるべき」と彼らは言っています。それを聞いて、私はふと思ったことは「ついこないだ、私たちアジア系の人はブラック・ライブス・マター運動に連帯し、警察予算の打ち切りを要求してなかったっけ?」

アジア系の人に対する攻撃を非難し、共に声をあげようと黒人に求めると、一部の黒人はアジア系コミュニティに蔓延するアンチ黒人性を指摘します。「アジア人はアンチ黒人的だ」、「アジア人は私たち(黒人)のために声をあげてくれない」、「今月は黒人歴史月間(Black History Month)だから」などという反応が返ってきます。それに対して私は問うのです。「では、私たちが殺されていくのを、ただ傍観するんですか?」

そして、負のスパイラルに陥るのです。私たちはアンチアジア人差別に立ち向かうために、アンチ黒人的な表現や黒人を敵とするような戦術を使うことがあるが、これではアジア人に対する差別は問題視されるどころか、最悪の場合、アジア人に対する差別が正当化されてしまうこともあります。その背景には、アジア系コミュニティに対する根強い恨みがあります。そしてこの恨みは分からなくはありません。

アンチ黒人的な感情をアジア系コミュニティから根絶するため、やるべきことはまだたくさんあります。実際には、アジア系コミュニティは今までも他の少数派コミュニティとともに声をあげてきました。しかしこの事実は多くの場合揉み消され、その結果アジア系コミュニティは「白人的」である、という見られ方をされてきました。

アジア系と黒人系両コミュニティの緊張関係が頂点に達したのは、1992年の「ロサンゼルス暴動」だという人もいます。2つのコミュニティはコリアタウンで対立し、それぞれが正義・尊厳・コミュニティの存続のために争いました。対立が起きた場所にも深い意味がありました。

コリアタウンは、ちょうどその1年前に韓国系アメリカ人の酒屋店主のSoon Ja Du氏が、15歳の黒人少女Latasha Harlinsさんを射殺した場所でした。当時、Du氏はLatashaさんがオレンジジュースを盗もうとしていたのだと 主張しました。その後、Du氏はわずか5年の保護観察期間と、400時間の社会奉仕活動、500ドルの罰金が言い渡されました。その時、当然ともいえる民衆の怒りが湧き起こりました。暴動が始まる1週間前に全会一致でこの判決が支持された時も、民衆の怒りは再び爆発しました。

Rodney King牧師を暴行した4人の白人警察官が全員無罪になった時に、黒人コミュニティとその同盟者は立ち上がり、悲しみと怒りをぶつけるために街に出ました。コリアタウンはその舞台一つだったのです。南カリフォルニア大学の調査によると、1992年4月29日から5月4日までの約1週間に及ぶ暴動で、1,000棟以上の建物が損傷または破壊され、60人以上が死亡し、2,000人以上が負傷しました。10億ドルの被害額の約半分は、2,300店舗以上の韓国系個人経営店が受けたものでした。経済的な打撃のみならず、精神的な傷も受け、今でも多くの人に残された傷は完全に回復していません。

ロス暴動が起きた際には、警察は裕福な白人街を守るために配置されました。国に見捨てられた韓国人経営者たちの一部は、その現実に驚愕し、自分たちの積み上げてきた全てが崩れていくのを見ながら、人々に助けを求めて叫びました。その一方で、一部のアジア系の人たちは銃を手に取り、黒人系の人々に向けたのです。韓国系アメリカ人の店主チャン・リーさんはCNNのインタビューに対し「ロス暴動が起こるまで、自分が第二の市民であることに気づきませんでした。ロス市警の権力者たちは『持ってる人たち』だけを守ると決めたのです。韓国系コミュニティには政治的な発言力も権力もなかった。私たちはただ、取り残されました」と答えています。

アジア系・黒人系の両コミュニティは、不公正で人種差別的な制度の犠牲者なのです。しかし多くの人は、両コミュニティを破綻させた白人至上主義の制度ではなく、自分たちの目の前にある、その顔こそが真の敵であると思い込んでしまいました。

この歴史が忘れ去られていることを利用し、白人至上主義者らは再び両のコミュニティの対立を生み出しています。この問題の根底にあるのは、やはり政府の対応を指摘せざるをえません。今回も政府は、コロナ禍で最も厳しい状況におかれたコミュニティに対し、経済的な援助を行いませんでした。人種差別は、医療制度の隅々に浸透しています。第一線で働く方々の多くは、ブラックやブラウン(ブラウンとは、AAPIの方々も含むことを忘れないでください)であるにも関わらず、その方々は十分な医療を受けることができていません。それにも関わらず、私たちには手が届かない別世界で生きる億万長者たちは、この期に及んでさらに儲け続けています。これらの不当で搾取的な状況のすべてが、そもそも弱い立場にいた人々をさらに追い込んでいるのです。傷が癒えていない2つのコミュニティは今回もまた、中華街で生き残りをかけて、互いに「敵」を探し出すのです。

白人至上主義者は、2つのコミュニティがお互いに与えた傷だけを思い出させようとしています。アジア系コミュニティにおける歴史的かつ継続的なアンチ黒人性や、少数の黒人によって引き起こされたアジア人に対する暴行事件だけを思い出させようとしています。歴史の教科書にも載っていない、メディアでも報道されてこなかった2つのコミュニティの連帯の歴史は、忘れ去されようとしています。

ロサンゼルスでの暴動の後、さまざまな人種のボランティアがコリアタウンに集まり、再建に協力しました。「近所の人たちが一人ずつ手伝いに来てくれました。彼らは黒人系、韓国系、ラテン系でした。30人も来てくれました。彼らは私に希望を与えてくれました。彼らは私のコミュニティです。そして再び団結する時がきました」とLeeさんは語りました。

かつて活動家のHelen Ziaさんが述べたように、「相互無知」があるにも関わらず、2つのコミュニティは互いに手を差し伸べてきました。それは「Black Lives Matter」というハッシュタグや、黒い四角の画像をインスタグラムに投稿するだけの「演出」まがいの行為ではなく、60年代にBlack Panthersと活動を共にした、アジア系コミュニティ出身のYuri Kochiyamaさん、Grace Lee Boggsさん、Larry Itliongさんのことを指しています。

黒人系、ラテン系、アジア系の学生連合組織の「Third Liberation Front」で活動していた学生のことを言っています。この学生は、米国歴史上最も長い学校ストライキの一つを行い、結果として「民族学」という分野が誕生しました。ジョージア州の有権者を動員する活動や、刑務所の改革・廃止と警察の非武装化・廃止を求める活動など、現在もアジア系の人々がたくさん立ち上がっています。この活動は、多数派には関心をもってもらえなかったり、参加してもらえなかったりするかもしれません。でも今まで活動してきた人々のストーリーを私たちが継承することで、傷を癒し、変化をもたらす種を植えることができます。

正直、私は疲れ果てています。アジア系の人、特に年配者に対する立て続けに起きた暴行事件を見て、心底疲れ果てています。このような事件を見ると、日本の植民地から韓国を解放するための戦いに参加し、その後米国内で植民地主義に反対し、92歳で亡くなった私の祖父を思い出します。

大手メディアが沈黙し続け、反応が鈍いことに対して疲れ果てています。このような大手メディアは、白人至上主義の思想を支持し「モデル・マイノリティ」という重荷を私たちに押し付けています。アジア系コミュニティの傷と痛みを抱えることに疲れ果てています。抑圧に対抗するために「アンチ黒人的」な行為に向かう人を止めることに疲れ果てています。何十年にもわたって続いてきたアジア系と黒人系コミュニティの連帯活動をあからさまに否定し、揉み消そうとしている社会に疲れ果てています私たちが直面する危機を認めてもらうために、証拠提示をいちいち求められることに疲れ果てています。一部のアジア系の人々が経済的に成功していますが、「白人にはなれきれていない」という事実を認めたくないがために、抑圧されてきた事実を内在化しようとする行為に疲れ果てています。彼らは、政治的な意見を口に出すことはせずおとなしく過ごし、アジア系の人が殺されていくのを黙認しようとしています。

傷を負っているアジア系コミュニティの人々に、刑罰ではない解決策を選ぶよう求めることの複雑さに、私自身引き裂かれそうになっています。「責任のとり方」を考えなおし、ブラックやブラウンの人々を犯罪者化することで儲けている米国の法制度を考え直し、「正義」を考え直したいです。同時に傷を癒すための環境づくりと、この緊急事態に対する迅速な支援を求めます。

この悪循環から抜け出す方法が一つだけあります。コミュニティ同士が深く、途絶えることなく、連帯し続けることです。アジア人として、自分たちが置かれている状況を問い直し、白人至上主義者らが私たちの救世主ではないことを心に留めておかなければなりません。自分たちのストーリー、自分たちのアイデンティティを取り戻す機会です。そのためには、大声で、怒りを隠さず、政治的な意見を持って、そして黒人コミュニティと連携し、私たちを守ってこなかった制度に反抗し続けることです。

<今できること>

このような複雑な状況を踏まえて、誰もができることをいくつか紹介します:

1.  現在起きている アジア人に対するヘイトクライムを認識し、拡散し、糾弾してください。自分の言葉で声をあげてみてください。これは「あってはならないことである」と言ってください。これは「非難すべきことである」と言ってください。これは「間違っていると思う」と言ってください。

個人としても、組織・コミュニティ内でも、声をあげてください。そして私たちが痛みを分かり合える空間を作ってください。私たちが分かり合うための空間は、十分にあります。全ての人の痛みと癒しと解放は、互いに奪い合ったり、競い合うことなく、共存することができるのです。
2.  アンチアジア人種差別と、アンチ黒人人種差別に対して声をあげてください。どのような文脈であっても、どちらも認められるべきではありません。もしアジア人が「chinks(*中華系の人に対する差別用語)」、「犬食い」、「感染症の蔓延者」、「汚いやつ」と呼ばれたり、暴行を受けるのは自業自得であるという言動を見かけたら、それを止めてください。

そして、黒人でない人が、たとえ今傷ついているアジア人であっても、「黒人は犯罪者だ」、「黒人は危険だ」と言って反黒人的な言動をとっていたら、これも同じように止めてください。私たちの怒りは、真の敵である白人至上主義文化に向かなければなりません。白人至上主義は「どちらかが悪い」という考え方を生み出し、弱い者同士の争いを生み出し続けます。
3.  「一般化」する言い方は止めてください。もし誰かが「アジア人はアンチ黒人的だ」と言ったら、「アンチ黒人的な考え方は、アジア系コミュニティの中で蔓延している問題であるが、それと同時に多くのアジア人はこの問題を認識し、取り除こうと取り組んでいます。それを、知っていますか?」と言い換えてください。

もし誰かが「黒人はアジア人を憎んでいる」と言ったら、「たったいくつかの事例を見ただけでコミュニティ全体を一般化することは、とても攻撃的な言い方です。今、アジア人と連帯して立ち上がっている黒人の方々がたくさんいます。彼らを知っていますか?」と言い換えてください。
4黒人とアジア人の連帯活動をやたらに揉み消そうとする人に対して、声をあげてください。黒人が「アジア人は私たちの味方をしてくれない」と言ったり、アジア人が「黒人は私たちのことをなんとも思っていない」と言った時には、歴史的に二つのコミュニティの連帯がいかに意図的に教育システムとメディアによって揉み消されてきたかについて声をあげてください。私たちは、過去の連帯の事例を拡散し、共に傷を癒し、信頼関係を築いていく必要があります。
5.  地域社会に根ざした活動を支援してください。警察との関係性を強化しても、長期的な解決策にはならず、コミュニティの安全を確保することもできません。オークランド警察署から歩いてすぐの場所にあるにも関わらず、オークランドの中華街は「安全」ではありません。事実、中華街にあるビジネスパーソンや、そこに住む人々に対する暴行は増え続けています。

昨年12月には、ペンシルバニア州に住む19歳のアジア系ティーンエイジャーのChristian Hallさんが、精神状況が不安定なときに州警察に撃殺されました。米国の不法滞在者のうち、アジア系の人口は急速に増加しています。強制送還や犯罪者として逮捕されることを恐れているこのような人々にとって、多くの警察が配置されることでは安全は確保されません。

警察への通報があった場合でも、アジア系の人々が関わる事件の場合、正確に記録されることはほとんどなく、緊急性を持って対応されることもほとんどありません。警察の存在感が強い地域は安全とは言えません。

むしろ、質の高い医療とメンタルヘルスケアや財政支援、食料とシェルター、教育へ容易にアクセスできるる地域が、安全だと言えるでしょう。より多くの警官の配備やFBIの監視は、白人至上主義を成立させている人種差別的な制度に、お金を注ぎ込むことになります。私たち全員の安全を確保できるような地域に根ざしたコミットメント方法を築き上げるために、時間・お金・エネルギーを投資してください。

アジア系コミュニティの多くの人は、現在の法制度をなくそうとする私のアプローチに反対しています。私は、私に対する批判と怒りのメッセージをたくさん受けてきました。私はアジア系コミュニティの痛みを軽視している、見てみぬふりをしようとしている、と解釈されています。でも違います。私も怒りで胸がいっぱいです。私も苦しみを感じています。私も正義を求めています。

私の韓国系の母は、誰かと目があうと、必ずニコッとします。数年前サンフランシスコで、そんな母に銃を突きつけ、物を奪い、頭を殴った黒人男性がいました。彼女は私に心配をかけたくなかったので、私に電話する前に警察に通報しました。警察はいつも通り報告書を提出するだけで、彼女の負った心の傷を癒すための物質的な支援など、何一つありませんでした 。彼女は独りで、身体的・精神的な傷と向き合うしかなく、盗まれたお金を取り戻すために働き、自分で自分を守るしかありませんでした。

母の経験を思い出し、そして他のアジア系の年配者が暴行され続ける現状を見ると、目が覚める瞬間から私の胸は痛みでいっぱいになります。犯罪者に身体的危害を加えたい気持ちさえ芽生えます。しかし、私が最も大切にしたいのは、私のコミュニティに対する紛れもない、激しく、他の何よりも強い愛です。この愛は、加害者を罰したい気持ちに打ち勝てるのです。痛みつけたい気持ち以上に、自分のコミュニティの人々を守りたい気持ちが強いです。この気持ちは今だけでなく、ずっと続きます。

最近、Alexandria Ocasio Cortez議員は「責任をとらせることは、復讐することではありません。安全のために行うものです」と 発言しました。地域に根ざしたコミットメントは責任と正義を「弱体化」するものではありません。最も持続可能で、包括的な解決策の一部なのです。問題の原因となっている部分、少数派コミュニティ内での暴力の連鎖を起こし続けている部分を変化させるためのものです。

そして、数え切れないほどの地元の組織や活動家たちが素晴らしいお手本をもうすでに見せてくれています。中華街内の20もの非営利団体・組織・個人からなる連合体「Oakland Chinatown Coalition」は、多様なボランティアを迅速に集め、オークランドの中華街の安全を守るための対話と行動に従事しています。当事者を中心とする「シニア・サバイバー・プログラム」をコミュニティ主体で実施しています。Jacob Azevedoさんは、近所のパトロールや年配の方の付き添いをできるボランティアを手配しています。

Stop AAPI Hate」という団体は、法執行制度から独立したかたちで、事件の報告や情報を10以上のアジア系言語でオンラインフォーム機能を用いて、収集しています。より多くの人が報告・参加できる環境を整え、アジア系アメリカ人のさまざまな生活や経験を、一緒くたにすることを防いでいます。別の団体は、イーストベイのベトナム系アメリカ人コミュニティセンターの再建のための募金活動を行っています。この施設は火災によって崩壊し、それまで毎月行っていた弱い立場におかれている人々への4万食の食事の提供ができなくなりました。

さらに他の団体は被害にあったアジア系の年配者への支援のための募金活動を行っています。ベイエリアを拠点とする多くの黒人主導の団体は、アジア人に対するヘイトクライムを公に糾弾しています。それだけでなく、コミュニティの安全を確保するための地域に根ざした解決策を支援しています。

私は「Transformative Justice(変革的正義)」について学んでいる途中です。これは、再び暴力を引き起こすことなく、暴力に対処する新たな正義へのアプローチです。白人至上主義が「責任」と連想させるようとする懲罰や投獄に頼らないものです。より多くの人が私と一緒にそれを学び、実践することを望んでいます。そしてこの取り組みを拡散し、コミュニティのリーダーであるMia Mingusさんadrienne marie brownさん、Shira Hassanさん、Mariame Kabaさんらを応援することも求めます。彼女らは長年、さまざまな社会正義の場で、大切なノウハウを教え、拡散してきました。

 アジア系のコミュニティの負った傷はとても大きく、何世代にも渡る深い傷です。その苦しみをアジア系コミュニティが自ら、また同盟者によって揉み消そうとする行為は、さらに傷を深めることに繋がります。他の弱い立場におかれているコミュニティを、もっと突き放すことになるだけです。複数の悲劇が重なり合い、苦しみが多発する今、あらゆる形態の暴力からの解放と集団的治癒を求め、コミュニティ同士が連帯することが最も必要とされています。

<著者について>

Michelle Kimさんは、カリフォルニア州オークランドを拠点とするクィア・韓国系アメリカ人の作家、起業家、活動家です。Michelleさんは『The Wake Up』(Hachette社、2021年秋出版予定)の著者であり、AwakenのCEOです。Michelleさんに関する情報はLinkedInInstagramTwitterや、Awakenのニュースレターよりご覧ください。

困難な時期に有益な情報と支援を提供していただき、この活動の原動力となったAAPIの仲間たちに感謝申し上げます。Terisa Siagatonuさん、Dr. Kiona、Liz Kleinrockさん、Oakland Chinatown Coalition、Dr. Connie WunとAAPI Women Lead、Bianca Mabute-Louieさん、Jocelyn Chungさん、Jerry Wonさん、Thi Buiさん、Jenny Wang博士、Christine Wangさん、Erinn Wongさん、Yoonj Kimん、Kalaya’an Mendozaさん、Berna Anatさん、などなど。編集をお手伝いいただきましたKimberley Limさん、ありがとうございました。


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