ちょいちょい書くかもしれない日記(エプロン)
いくつになっても汚し屋さんである。
料理をしては食材を跳ね散らかし、食べてはソースを飛ばし、洗い物をしては袖を濡らす。
庭仕事をすると泥んこになるし、ただ家の中を歩いているだけで猫のゲロを踏む(換毛期あるある)。
猫を抱っこすれば、たちまち毛だらけだ。
中学生の頃、あまりにも私が服を汚すので、母が突然、イッセイミヤケの割烹着という世にも珍しいものを買い与えてきた。
カーキ色の、異様にデザインがかっこいい割烹着だった。和洋折衷エプロンといったほうがいいかもしれない。
それを貰ったのがちょうど「装甲騎兵ボトムズ」というアニメの初回で、まるまっちくてかわいいメカ、アーマードトルーパーのカーキ色とお揃いだな……と妙に嬉しかったのを覚えている。
その割烹着をずっと着たおしてきたのだが、さすがに30年以上の酷使に耐えきれず(というか、よく耐えてくれたと思う。さすがイッセイミヤケ。減価償却どころの騒ぎではない)、あるとき、ついに裂けてしまった。
それから、エプロン難民生活が始まった。
私は、よくある胸当てつきの布にヒモがついているタイプのエプロンが苦手だ。
いちいちエプロンを着るのに、ヒモの「ばってん」のねじれを気にしたり、後で結んだりといったことが億劫なのだ。
よくわからないことがたまらなく面倒臭いって……あるよね?
私にとって、エプロンのヒモは鬼門だ。
エプロンは、頭からガッサーと被ればそれで装着完了、という簡便なものに限る。
そういうデザインのものをいくつか選び、購入してみた。
しかし、どうもうまくいかない。
どれも、着心地は申し分ないのだ。
問題は、洗濯だった。
外に、あるいは部屋に洗濯物を干さなくなって数年になる。
ドラム式洗濯機で乾燥まで一気にやってしまうのが、どうやら性に合っているようだ。
そう、正確に言えば、問題は乾燥フェーズなのだ。
去年、父が死んだ直後、セルフ供物調達かと疑いたくなるほどに我が家の家電が壊れまくったとき、洗濯機も餌食になった。
新しいパナソニックのドラム式洗濯機は、前のものよりずっと洗濯物を絡ませず、上手に乾燥してくれるのだが、それでも素材によってはシワシワになったり縮んだりひきつれたり、そのままでは着づらい状態に仕上がるものがある。
生来ズボラな私としては、エプロンにアイロン掛けなど、絶対にしたくない。
しかし、どのエプロンも、洗ったが最後、何だか貧相なことになってしまう。
アイロンをかけたくはないが、シワシワを着ても平気というわけではない。
ああ、私の理想のエプロンはどこにいるのだ。
嘆き悲しみつつ、先日、どうせ駄目だろうと思いつつもAmazonで貯まったポイントを消費すべく買った2000円ちょっとのエプロンが、まさかの理想の一着だった。
布地が薄く、夏でも暑苦しい思いをせずに着られそうだ。
肌触りも問題ない。
ワンサイズなのでやや大きめではあるが、柔らかなゴムをサイドに使っているので、思いのほかガバガバではない。
丈も太股の真ん中くらいで、実に動きやすい。
何より、洗濯をしてもしれっと綺麗な状態で乾くのだ。
シワはほとんどない。洗濯機から出してそのまま着ても、だらしない感じにはまったくならない。
うわー! と驚きながら、流れるように2着買い足した。
これで、毎日ローテーションを組んで着続けることができる。
布地が薄いので長持ちはしないかもしれないが、エプロンは作業着なので、消耗品と見なせばそれもアリだ。
思いがけない出会いが、不思議なところに転がっているなあ……と実感しつつ、保育園の先生みたいなエプロンを嬉しく着込んでいる。