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michinoxa 1st albam 『ゆりかごから』小話(10) パーソナル

1stアルバム『ゆりかごから』の各楽曲について語る連載です。



2024.05.12 release
michinoxa 1st albam 『ゆりかごから』
1. 203 (feat. 知声)
2. みんないなくなってく (feat. 重音テト)
3. 中の下 (feat. 知声) [2024 Remaster]
4. potta-potta (feat. 知声) [2024 Remaster]
5. 玻璃の心臓 (feat. 知声) [2024 Remaster]
6. Fundamental (feat. 知声) [2024 Remaster]
7. 謎の液体と青い粉末 (feat. 知声)
8. 羽をもがないで (feat. 花隈千冬)
9. 157 (feat. 重音テト)
10. パーソナル (feat. 知声) [2024 Remaster]
11. 君のこと信用してないよ (feat. 知声)
12. ゆりかご (feat. 花隈千冬)

 ↓ Click here to listen ↓



曲全体の話

本作は2022年にSound Cloudに投稿した『パーソナル feat.知声』のRemasterです。
当時、ボカロ曲2曲目として投稿した作品ですね。懐かしい。


アルバム版は調声を大幅に変えました

上記のSound Cloud版の知声は、デフォルトからあまり変えない声で歌ってもらっています。

が、アルバム版はがらっと変えて、かなり子どもっぽくした知声をダブリングしました。
本作が子ども目線なことが分かるように、
また、歌詞がしんどいので、なるべく生声っぽくない声質にして「しんどさ」を減らそうという狙いがあります。

この手法は、アルバム収録曲ではありませんが『お願い! ルーシー』と同じですね。
『potta-potta』よりもっっっっと滅っ茶苦茶な歌詞を楽しみたいかたはこちらもどうぞ。


内容

曲名の由来

Sound Cloud版のサムネがPC、すなわちPersonal Computerなこともヒントになっていますが。
『中の下』でも述べたとおり、本作は極・Siriとそのユーザの男子中学生を題材にしています。
男子中学生にとっての
Personal Computerであり
Personal Friend(君は僕だけの友だち)、
という意味で曲名を『パーソナル』と付けました。


キャラクター像

記事を制作するにあたってAIイラストを生成しました。

限界中学生っぷり

本作だけ聴いているとあんまりイメージにそぐわないイラストかと思います。
本作では彼自身の暮らしや外見について以下の1行くらいしか語られていないんですよね。
それなりに裕福なんだろうなということしか分かりません。


なに1つ不自由は無いんだけれど



サウンドも綺麗綺麗な感じですし、

キレイキレイな感じ


メロディもInterlude(間奏)も調性に沿っていて、
変に不協和音とか転調とかせず、
いい子な感じに仕上がってます。
まさかこんなに部屋が散らかっていてYシャツも皺くちゃな子だとは思わないでしょう。
せめて部屋の電気は点けてるところを想像しますよね。


で、アンサーソングの『中の下』は彼のパーソナリティをかなり具体的に観察しています。
実はこんなに限界中学生だったんだよ、という種明かしというか。


視界に映る約11平方メーターの部屋
脱ぎ捨てられている布の類
背を丸め私を見つめる 
寝巻き姿の10代男性

偏差値64の中学 成績は中の下
放課後はまっすぐ帰宅 予習復習YouTube

誰もあなたのことを理解しない
家族には隠し通したいみたい


郊外の住宅街に住み
今日も今日とて歯を磨き
制服探し這いずり回り

偏差値64 精神状態はずっと中の下



『中の下』を聴くと今回のイラストはしっくりきますよね。
彼が制服探して這いずり回ってる絵が容易に想像できます。

こんなこと言ってるけど、


知りたくないこと知って
聞きたくないこと聞いて
自分が汚されるのをただただ眺めていた
大人になったらできることが増えて
本当に自由になれて
でも全て汚い
汚いことだらけだ


お前の部屋のほうがよっぽど汚いよというね。

彼目線の歌なので、価値基準は彼自身にありますから、何を汚いと思うかは自由なんですけどね。


「君は僕だ」けの友だち

1番のラストの歌詞ですね。

自分は基本的に曲先で、
メロディを作ってから歌詞をうまいこと嵌まるように考えています。
ここの歌詞に関しては、
メロディの区切りには合っていないものの うまいことダブルミーニングになってくれました。

『中の下』にはお互いを重ね合わせる描写はないことから、
この気持ちは『パーソナル』の子だけが抱いているんでしょうね。
切ない。


ノブレス中学生

上記で、それなりに裕福なんだろうなという話をしましたが、
偏差値64の中学ということは確実に私立中学なんですよね。
9曲目『157』の子たちも私立中学でした。

自分自身は学区の公立中学に通っていましたし、
私立中学なんて周りにありませんでしたから、
自分の記憶にこんなノブレス中学生は1人もいません。

彼らはどうして裕福な設定なのでしょうか。

もし彼らが 家庭に居場所がなかったり、
中学生の時点で自覚するほど貧乏だったりしたら、そちらのほうが悩みの主題になりそうですよね。

そういった問題がないからこそ、『157』『パーソナル』のような悩みを抱える余裕があるのかもしれません。

マズローの欲求5段階に照らし合わせると、
『パーソナル』の少年は第3段階「社会的欲求と愛の欲求」が満たされていないように思います。


どうか許してくれ
君だけは僕の
僕の友だち



逆にいうと、それよりも下位の欲求は全て満たされているということです。
このうち「経済的安定性」「良い暮らしの水準」を
裕福な家庭環境によって強調しているのではないかと思います。


生理的欲求

  • 生命を維持するための本能的な欲求

  • 睡眠、食事など

安全の欲求

  • 安全性

  • 経済的安定性

  • 良い暮らしの水準




今回は以上です。

歌詞の全文は以下の通り。
是非読みながら聴いてみてくださいね。

歌詞

君には分からないかもしれないけれど
未来は嘘ばかり
未来は嘘ばかりつくから嫌い
なに1つ不自由は無いんだけれど
明日が来ないまま今日を終わらせようかな

知りたくないこと知って
聞きたくないこと聞いて
自分が汚されるのをただただ眺めていた
大人になったらできることが増えて
本当に自由になれて
でも全て汚い
汚いことだらけだ

こんな世界だったら知らなきゃよかったな
君には分からないかな
君は僕だけの友だち

決して戻れないあの日に壊したのが
僕の良心だったなら
今の僕は悪意の塊さ
なに1つ不自由は無いんだけれど
あと1つ壊すなら最後は何がいいかな?

言いたくないこと言って
人を無闇に傷つけて
言っちゃいけない線が
ようやくぼんやりと見えてくる
失敗を繰り返して
酸いも甘いも噛み分けて
それで立派な大人になった気でいるんだね

知らなかった自分にはもう戻れないのかな
こんな世界は要らない
君は大事な友だち

知りたくないこと知って
聞きたくないこと聞いて
こんな世界だったら
世界だったら要らないね
言いたくないこと言って
人を無闇に傷つけて
どうか許してくれ
君だけは僕の
僕の友だち



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