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michinaruのワークショップをインターン生が分析〜伴走者たちの裏側〜

はじめまして!michinaruインターン生の中山拓海です。現在大学4年生で2022年3月に大学を卒業します。私は大学でワークショップ(=以下WS)や場作りを中心に学び、学内を中心に実践してきました。また大学4年生の9月から12月にかけては青山学院大学社会情報学部で開講されているワークショップデザイナー育成プログラム(以下WSD)というWSを専門的に学ぶ場へ参加してきました。そこで今回はWSを学び、実践してきたインターン生からみたmichinaruのWSの印象的な3つのエピソードとそこから見える特徴を紹介します。

michinaru横山・菊池と一緒にオンラインMTG中の中山です

1)不安を見せられる安心感
2)WSの裏では”こんなに”しゃべってる
3)参加者が変わるとこんなに違うの?


1)不安を見せられる安心感

私が印象的だったエピソードの1つ目は、参加者とファシリテーター(菊池、横山)の関係性が顕著に表れたシーンです。

全6日・6ヶ月間にわたって事業創造プロジェクトに取り組んだ時のエピソードです。(詳細プログラムはこちら→SERVICE 新事業創出|michinaru株式会社

参加者の1人(Aさん)が終始不安な表情を見せながら受講していました。初日のWS終了後、ファシリテーターから「何か相談したいことがある方は残ってください」と全体に声をかけるとAさんが残っていました。Aさんは「他の人と比べて、自分だけが取り組む課題が見つかっていない。本当に自分にできるか不安。」と、WSの中で打ち明けられなかった悩みを明かしました。それに対してファシリテーターは「今課題が見つからないのは、Aさんのこだわりが強い証拠。それは良い課題が見つかる兆候。人と比較しないで焦らず頑張ろう」と伝えました。

そこから毎回、AさんはWS終了後に残ってファシリテーターに相談を重ねていました。その姿は、誰よりも課題に本気で向き合っているように見えました。最終日に近づくにつれAさんにとって自信を持てる課題を見つけ、事業創造の一歩を踏み出していました。

相談の中で、WSと課題に真摯に取り組む姿、そしてAさんの取り組みをポジティブにとらえて背中を押し続けたファシリテーターの姿が印象的でした。

1-1,本気が「参加者の本気」を創る

こういったエピソードからmichinaruのWSでの特徴として1人1人を大切にし、参加者が本気になれる雰囲気作りがあると感じました。

michinaruのWSでは参加者を大切にしています。1人1人の参加者の不安を酌み取り「その不安を感じた背景には何があるのか」「何を大事にしたいのか」といった問いを参加者と一緒に対話しながら探求していきます。ファシリテーターは本気で一緒に考えて、参加者とともに学ぶ姿勢があり、すると参加者も本気になります。michinaruのWSでは楽しさ・面白さに加えて、本気になる雰囲気があることが大きな特徴です。

1-2,背景には「助け合い」と「学びあい」

WSにおいて基礎理論の一つとして出てくるのがヴィゴツキーの発達の最近接領域です。(参考:ヴィゴツキーが提唱した「発達の最近接領域」の意味とは?

子どもにかかわらず、成長をしていくときに1人で学ぶことよりも複数人で助け合いながら学ぶことで、できなかったことができるようになっていくという理論です。

発達の最近接領域
「【図解付き】発達の最近接領域とは? 教育者・学習者目線で考え直してみる」より画像引用

WSの中では参加者同士での助け合いの中での学びが強調されますが、michinaruのWSにおいては参加者同士だけでなく、ファシリテーターと参加者の関係でも助け合いと学びあいが起こります。一緒に考える・プロジェクトを伴走してくれるという安心感が参加者の成長につながっていると考えられると思います。

2,WSの裏では”こんなに”しゃべってる

私の印象的だった2つ目のエピソードはファシリテーターの裏での細かいやり取りです。オンラインWSをサポートする役割をしていた私はファシリテーターの2人がWSの裏で細かいやり取りをしている内容に驚きました。主にタイムマネジメントでの相談やグループワークでのやり取りの共有が多いです。特に私はWS中に予定していたワークとは別のワークやメッセージをいれることが印象的でした。以下はWSに見られたやり取りの一部です。

WS中のLINEでのやりとり

参加者はそれまでのワークで想定以上に対話をして刺激を受けた状態でした。そのため1人での時間を設け、じっくり考えたほうがいいと判断しワークのやり方を変更しました。

私も複数人でやり取りしながらワークショップを行った経験がありますが、裏でのやり取りの回数は圧倒的にmichinaruのファシリテーターは多く、印象的なエピソードとして残っています。

2-1,目的実現にこだわったファシリテーション

こういったエピソードよりmichinaruのWSの特徴として目的実現にこだわったファシリテーションがあると感じました。WS中に「どんなワーク」をやるかよりも「ワークを通してどうなってもらいたいか」を重視していました。

私がWSを主催している時は、どんなワークをやるかに注力してしまいます。そうなると「なんのために」という視点が不足してしまいがちです。

michinaruのWSにおいては、ワークを通してどうなってもらいたいかという「目的」に対する意識が非常に高いです。ワークのやり方が変わっても「目的実現」につながります。WSの事前ミーティングにおいても各ワークは「何のためにやるのか」「どうしてこのワークなのか」という問いが頻繁に飛び交い、目的に対して綿密な準備もされています。

2-2,背景にあるのは「調整」と「観察」

目的実現のファシリテーションとその内容はWSを実践するファシリテーターとして熟達している方との共通項も多く見られました。ワークショップデザイン論(ワークショップデザイン論 第2版 | 山内 祐平, 森 玲奈, 安斎 勇樹 |本 | 通販 | Amazon)のなかで安斎氏は熟達したファシリテーターは当日のファシリテートで「調整」と「観察」を行っていることであると主張しています。

ワークショップデザイン論 第2版 | 山内 祐平, 森 玲奈, 安斎 勇樹 

「調整」には4つあり「プログラムの調整」「情報伝達の調整」「関係性の調整」「リアクションの調整」である。特に「プログラムの調整」はWS中のワークを追加、変更、分割、難易度の調整などを指し、場に対する影響が大きく「重要な調整」作業となる。参加者の姿勢を尊重し、事前に作成したプログラムに拘り過ぎずその場にある人や資源を最大限活用していくことで学びあふれるWSになる。

 そして、調整は「観察」によって支えられている。参加者の発言、表情、姿勢、手の動きなどを観察し解釈する。

参加者を観察したうえで取り組み方やその場で出てきた意見を尊重し、ファシリテーションを行う。まさしく「熟達したファシリテーターがなせる技」であると感じました。

3, 参加者が変わるとこんなに違うの?

3つ目のエピソードは実際のWS現場から離れた、事前準備での話です。michinaruのプログラムに「Willから事業を生み出すプロジェクト「Hatch!」がありますが、会社毎にプログラムを細かく変えていることに気がつきました。

WSの中で参加者たちに、未来を考えてもらうワークをするときA社とB社を比べてみます。

A社:「30年後を想定したときにどんな未来を想定しますか?」という問いを立て、対話をし、その後、粘土を使って手を動かしながらワークを進める。

B社:「2030年において地域企業は何に喜び、何に悲しんでいるのか」という問いを立て、対話をし、その後、動画を見てさらに考えを深める。

このワークの目的としては「参加者が仕事を通した未来を考え、事業創造を考える起点にする」というものでした。

A社・B社で問いかけが変わった理由は、参加者の思考タイプや社風に合わせたからです。じっくり考えることが得意なのか、それとも実際に手を動かしながら考えていくことが得意なのか、具体的に問いを絞って狭く深く考えを突き詰めるのか、それぞれに適したワークの形にしました。

ファシリテーターはプログラム作成時に「B社さんなら”地域企業”という所に絞った方が参加者は考えやすいと思う」といったやり取りをしてプログラムを作っていました。

そうした思考タイプや社風に合わせてプログラムを作成・修正をしていくことはWS中の参加者の態度にも現れると感じました。ある会社のWSでは、1,2回目のWSでは、全体の場で何か発言をすることがほとんど出てきませんでした。3回目以降徐々に発言者が出て、最後はWS参加者40人の前で指名されなくても発言をする人が出るまでになりました。参加者が主体的に参加したくなるようなプログラムに修正していったことで実現したのだと感じました。

3-1,お客様に合わせた細かいプログラム作成

michinaruはプログラム作成の際に、ワークの目的が届くことを考えながら、徹底した「お客様目線」も大切にしていると感じます。お客様がどういったことが好きなのか、得意なのか、逆に苦手・慣れていないのかを分析し、それに合わせてプログラムを作成していることが特徴です。


まとめ「私がmichinaruで学んだこと」

私がmichinaruで学んだことは2つあります。

1つ目は、事業創造は特別な誰かがやるわけではなく、誰もができるものであるということです。私は事業創造と聞くと新しいものを創らないといけない、人が聞いて驚くようなアイディアを持っている人が創っていくという思い込みがありました。しかしこれらのエピソードや一年間のインターンの中で事業創造の出発点は「自分の問題意識」と気づきました。

2つ目は、自分自身も楽しみながら、WSをやるという事、そのために細かすぎるくらいの優しさがあるということです。michinaruのWSでは本当に笑顔が多いです。またファシリテーター自身も学びながら、楽しみながら取り組むことで参加者の学びにつながっていると感じます。「楽しみ」を生むために、細かいプログラム作成と場に応じたファシリテーションがあります。そして、そこには優しさがあります。優しさがあることでWSの価値を最大限届けられることを学びました。

私は4月から社会人として働いていきます。働いていく中で身近な社会問題に気づき、とことん向き合い、いろんな人の笑顔につなげたいです。


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