みえるとか みえないとか
仕事をしたら記録しなきゃと思って始めたnoteですが、案の定「ぼちぼち裏道」の投稿だけが増えております…。
さて、『みえるとかみえないとか』。
ご存知ヨシタケシンスケさんの絵本です。
ヨシタケさんと伊藤亜紗さんの対談もすごーく共感しました。
ありましたよね、「へー」ってテレビ番組。
(「トリビアの泉」ですね。古すぎですかね)
私、日頃授業で学生の皆さんに「自分のその気持ちがどこから生まれたのか、じっくり考えると対応の糸口が見つかる」とか「あなたの思いを言語化して伝えてみよう」とか言ってるけど、実は私自身には「なんかよくわかんないけどすごーい」「意味ないけどやりたーい」がいっぱいあるんです。
でも、それもすごく大事だと思っていて。
ヨシタケさんや伊藤さんと同じですね。
だって、世間一般の価値観で「それって意味あんの?」ってことを延々とやるって、やっても意味ないことに大事な時間を費やしてもなおやりたいという、損得抜きで自分を突き動かす何かがあるってことでしょう?
なかなか貴重ですよ、そういうことって。
と、まぁ、自分を正当化したところで本題に戻りますが、先日『みえるとか みえないとか』を地でいく体験をしてきたんです。
ダイアログ・イン・ザ・ダーク
視覚以外の感覚やコミュニケーションを楽しむエンターテイメント、ダイアログ・イン・ザ・ダーク。
私は小さい頃、純度100パーセントの暗闇(善光寺のお戒壇巡りです)で心踊る体験をしたことがあって、さらに対話好きときたら、こりゃいつか参加するしかないと思っていたのですが、意外に早くそのタイミングがやってきました。
東京にいる息子たち(27歳、23歳)を誘ったら「行く」とのことで、親子3人で参加。
明るい上に地図アプリもあるのに、会場到着までに全員迷う…。
ようやく3人揃って時間ギリギリに会場に入りました。
私たちのグループはうちの親子3人とクリエイティブ系の会社の同僚という5人の合わせて8人。
私たちとその方々は「はじめまして」です。
母と息子だと伝えると「わー、素敵ですねー」と。
うちの家族に対してよく言われる「素敵」。
もちろん言われて悪い気はしません。
ありがとうございます。
でも、この「素敵」については思うところがあるのでいつか記事にしたいのですが(あ、また裏道案件…)、多分今回の「素敵」はいつも言われるニュアンスとちょっと違って、「こういうイベントに親子(しかも子どもといっても成人)で参加しようとするところが素敵」ということだと思います。
それって、私が大切にしてきた事に共感してもらえたような気がして、とても嬉しい気持ちになりました。
私たちが参加したときは、ドラマとコラボした「ラストマン・イン・ザ・ダーク」も開催されていたのですが、私たちは「まっくらの中の電車に乗って感覚の旅へ!」の方に参加します。
アテンドしてくださるのは、暗闇のエキスパート視覚障害者のたえさん。
今日の私たちのグループはうちの息子世代のメンバーばかりなので、どっちかっていうとたえさんは私に近い世代っぽくて、勝手に仲間意識を持ちましたー。
出発前にたえさんに「これから行くのは真っ暗闇で一切何も見えません。だから、メガネはあってもなくても関係ないので置いていってもらっていいですよ。中でなくしたら見つけられないので」と言われたのですが、私は「見えなくなるまで」「見えるようになるまで」のギリギリを見てみたかったのでメガネをしたままで入りました。
息子たちは遠くを見るときはメガネをかけますが、裸眼でも日常生活には支障ない程度の近視です。
長男はメガネを置いていき、次男はかけたまま中に入りました。
入る前に自分に合った白杖を選び、使い方を教えてもらっていよいよ中へ。
ネタバレになるので詳細は書きませんが、真っ暗闇になってすぐに次男(180cm75kgくらいのクマっぽい風貌)が私の服の裾を掴みます。
なんだ、なんだ?
後で聞くと、真っ暗闇初体験だったから最初変な感覚で冷や汗が出て、誰かと繋がっていないと怖かったそうで。(パニックになっちゃう人もいるらしいです)
長男は逆に安心感があったと。
それは私も思いました。
見えない、というか、見られない安心感。
人は見た目が9割とかメラビアンの法則とか、とにかく見た目で判断されることって多々あって結構気を使うけれど、暗闇ではそれが一切気にならないわけです。
真っ暗が怖くて思わず私の服の裾を掴んだ次男。
いい大人の、しかもかなりでかい図体の男がお母さんの服の裾を掴んで怯えてる図って、明るいところで見たらちょっと「え?」ってなりますよね。
でも、真っ暗闇だから私以外の誰にもわかりません。
髪型、顔の造作、化粧の有無、ファッションセンス、体格、などなど、そういうことで判断されない安心感。
その代わり気になるのは、声や話し方、そして香り。
長男が前夜ニンニク入りラーメンを食べたとかで、暗闇でより一層感じるニンニク臭…。
お隣ではドラマとコラボした「ラストマン・イン・ザ・ダーク」が開催されていましたが、福山雅治は暗闇界でもカッコいいと思われるのかな、あの声で。
たえさんはどんな人をカッコいいと思うのか聞いてみたかったなー。
それから長男は「時間から自由になった気がした」とも言っていました。
日頃、自分は時間で動かされているけれど、暗闇では時間より自分が主導になったと。
なるほど。
真っ暗な中で私たちは歩くのさえままならないのに、アテンドのたえさんは何もかもできるスーパーマンです。
終盤にドリンクタイムがあったのですが、真っ暗闇の中でコップにワインを注いで配ってくださいました!
すごい!!
お料理も自分でするそうです。炒め加減は音で判断するって。
暗闇なのでワインは赤か白か見えないけど、香りで「赤だ」とわかりました。
ニンニク臭もそうですが、香りは敏感に感じます。
そして、いつもより酔う!
暗闇で乗ったブランコも酔う!
これもなんだか不思議な感覚。
たえさんの明るいアテンドと8人のチームワークのおかげであっという間の90分でした。
声をかけてもらうこと、手を繋いでもらうことの安心感。
私は「声に気持ちを乗せるには」みたいな講座もするけれど、暗闇で声をかけてもらうと「気持ちの乗った声ってこういう声か」と体感を伴って理解できます。
受付&待合スペースに掲示されていたパネルにダイアローグ・ジャパン・ソサエティ代表理事志村さんのこんな文章がありました。
私はこの文章の中にある「エンターテイメントとして楽しみながら」という部分がとてもいいなと思いました。
ヨシタケさんと伊藤亜紗さんの対談に出てきたこの部分に通じる気がします。
暗闇のドキドキ(&ワクワク)
暗闇でブランコ(初めての感覚)
暗闇で音のなるボールを声のする方へ転がす(意外にできる)
暗闇でなんでもできるたえさん(いや、ホントにすごい!)
まさにエンターテイメントでした。
なんといっても、とにかく楽しかった!!
でも、楽しいだけじゃなくて、いわゆる「学習効果」も。
誰かから言われる「困っている人は助けなさい」とか「みんなで協力しなさい」とか(伊藤亜紗さんが言ってた「啓蒙」かな)をはるかに超えて、自分から「こうしたい」に出会える体験です。
オススメです。
さて、すべて終わってたえさんとグループの皆さんと名残惜しくお別れし、近くの中華でランチタイム。
さっきまでの非日常を3人で興奮気味に語っていたら次男が
「あ!メガネがない!!」
あぁぁぁ〜〜〜〜
落としちゃったね、暗闇に。
イベントチェンジの際に、色んなものが出てきそう。
次男のメガネも。
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