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しんどさ比べをしないと心に決めた

いまは2021年の4月。ドイツは、昨年11月に始まり延長に次ぐ延長で終わりの見えないロックダウンの真最中で、家と1歳児を連れて公園を往復する日々。せいぜい行動半径300メートルくらいの、代わり映えのない毎日。

そういえば宇多田ヒカルが「代わり映えしない明日をください」とうたっていたな。こちらも一人息子を抱えているが、そんな境地には達してない(あの曲は大好き)。

最後にnoteを書いたのは、2019年の12月。

2019年末は6ヶ月になったばかりの息子を抱えて日本に帰国し、2020年の年明けは日本で迎えた。ドイツに戻ってきてからは、暗い寒い冬、まだ歩けず話せない息子と一対一で家で過ごす日々は、かなり気分が落ち込んだ。

なんとか耐えてやり過ごし、春の気配が近づいた頃、新型コロナの感染拡大が世界中でニュースになり、誰とも会わないまま春は過ぎ、夏を越え、冷え込みが厳しくなった秋には第2波でまたロックダウン。冬を迎えてもクリスマスマーケットはなく、店舗閉鎖で寒々しい気持ちのまま2021年に入った。動き出した息子から目が離せず、noteを書く時間の余裕も心のゆとりもなかった。

息子はもうじき2歳になる。

親以外とほぼ触れ合わず、夏以降、公園以外は行けないまま。

そして母である私は、この状況下でうまい気分転換の手段を見つけられず、24時間子どもと一緒、ひとりの時間はほぼなく、家と公園の往復で約1年が過ぎ、溜まりに溜まった疲労と閉塞感でこの冬は何度も心が折れた。

起き上がれない日もあり、すべて投げ出したくなった。が、投げ出す先はなかった。

「今は日本にいてもあまり変わらないかもよ〜」

何の気なしに届いた友の言葉に、無駄に心をえぐられた。

そうかな。母国語で言葉が通じて、スーパーのみでなくカフェやファミレスも開いていて、子連れでいけるショッピングモールがあって、24時間営業のコンビニがあって、あったかいお風呂があって、なにより、気心のしれた友達と自由に話せる。

ここにはどれもないよ。私、こんなにしんどいのに。

いつしかそう思っていた。

彼女が、実際の私の心境や状況とは違う想像をしてるんだろうな、なんて思ってもやもやした。

そんなの、わかるわけなどないし、その必要もないのに。

そんなふうにないものねだりをしている私の気を紛らわすために、言ってくれたのかもしれないのに。

ひとは、プラスのことよりマイナスのことのほうを大きく捉えがちだ。あとから思い返せば、いいこともたくさん浮かぶだろうに、渦中にいると、つらいことのほうに目がいくのはなぜだろう。

ドイツでの生活で気楽な部分ももちろんある。しかし、0歳から1歳になった幼児を抱えて先の見えない気の休まらない日々に、閉塞感に、孤独に、耐えられなくなっていた。

そんなときは、ささいな出来事でも胸にささる。

ある日、スーパーの会計時にちょっと早くポイントカードをスキャンしたら、レジのお兄さんに頭を抱えて「Oh.. God....,」と天を仰がれてしまった。どうやら購入アイテムの会計がスタートするより前にスキャンしたらだめらしい。

え、、ボタン一つで取り消せばいいんじゃない・・?そんな悪いことしちゃいましたか・・?

彼の(オーバー)リアクションが胸にずっしりきてしまい、暗澹たる気持ちでスーパーをあとにした。このご時世、モノに触りまくる息子を連れて行かないようにしているので、唯一のひとり外時間も暗い気持ちで家に帰った。

こうした1つの行為や反応の背景にある文脈を体得していない、想像しかできない土地に暮らすというのは、疎外感とともに疲労感が増すものだ。

楽しめるのは旅人感覚でいられるうちで、これ日常となるとなかなかつらいものがある。

レジの彼のジェスチャーも、「またまた~ぁ」と笑い飛ばして、それをきっかけに気楽に会話ができればいいが、私のドイツ語はさにあらず。実際はその意図がわからない。しょんぼりするしかない。

帰ってから、夫に話してたら泣いてしまった。限界だった。

「今までにもっとしんどいときあったし」「どれだけ手が掛かっても、こんな可愛い子の笑顔を毎日見られるんだし」

・・そんなふうに言い聞かせて、こうした日々をやり過ごそうとしていた。

が、そんなふりはできないほど、心身ともに悲鳴をあげ、疲れ切っていた。眠れない日々が続いて、自分で今のつらさを認めてあげよう、と思うようになった。

いつかや誰かや想像との比較ではなく、私が感じる孤独や寂寞や閉塞感は、いまここに、どっしとあるもの

笑えていても、どうにか日々を過ごせていても、そこにあるつらさは、ある。あるものは、ある。

しんどいときはしんどい、それでいい。

言葉にしたい。いまは誰かと話すことが難しいなら、書くことですっきりしたい。そうだ、noteに書こう。1年以上ぶりにログインした。

そう思えるようになった。やっと。
言葉にする場があってよかった。
半径300メートルから広がった。書くことですっきりもした。
代わり映えのない日々に、変化だ。

これは、いつの日か、「こんな日もあったなぁ あの日々をよく耐えたな」と思い返すため、そしていつかまた「あのときに比べたら。。」なんてならないようにするため、備忘録かねて、ちょっと無理やりにでもまとまった文章にしたものです。

しんどさの比較をしても、なーんにもならないんだぞ、と。


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