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ほのぼの夫と、日々の出来事

出会うまでのバックグラウンドも、興味の対象も、重なるところがない夫と私。重ならないのが、平和な家庭維持の秘訣なのかもしれません。それでも、紆余曲折の結婚生活。「さまざまな危機をどうにか二人で乗り越えてきたなぁ」と感慨深く思うのは夫も同じでしょう。夫との平和な日々を日記に記します。

喧嘩の回避術。

20代最後の大失恋を経験したのち、傷も癒えぬボロボロの状態で、夫と出会いました。勢いだったのか、もの珍しかったのか。ロミオとジュリエットのように、目の前に立ちはだかる困難もなく、ホントに自然に、すんなりと、多くの人たちに祝福されて、私たちは結婚しました。

夫と出会う前の私は難しい女だったと思います。男との別れのパターンは全て同じ。私の荒れ狂う感情に振り回され疲れ果てた男達は、「もう、ついていけない。」という言葉と共に、私の手を、すっぱりと放して逃げていきました。一度、別れを決意した男は、私が泣いて縋ろうが、手首を切ろうが、狂言自殺を試みようが、それを振り切って離れていきます。「逃げていく男の足は、なんて速いんだろう!」涙を流しながら、感心していたものです。

夫との生活の中にも、喧嘩の芽は日々、家中に潜んでいます。

新婚旅行から帰った夜、疲れやら、溜まった仕事のことやら、ごちゃごちゃの家の中などを見て、心がパニックになり、些細な夫の言葉に噛み付いた私。相当キツい物言いだったと思います。

「喧嘩は二人の刺激剤だし、ルンルン。」

私はファイティングポーズで彼の反撃を待ちます。

私の言葉に凍り付いた夫は、すぐに体勢を整え、平静を取り戻し、放った言葉がすごかった!

「俺は、簡単に喧嘩をしないし、したくない。俺が喧嘩をする時は2年でも3年でもその喧嘩をし続ける覚悟がある時だけだ。お前にその覚悟があるなら、その挑発に乗るけど。お前、そこまで覚悟できてんの?」

清々しい高校球児のような笑顔で(!)さらりと言ってのけたのです。

「えっ?」と固まった私、次の言葉が出て来ません。ポカンとしている私に夫は、さらに畳み掛けてきます。

「片付けとか洗濯は明日から一緒にやろう。今夜は風呂入って、はやく休もうや。」

そういうと、新米夫は、風呂場に行き、テキパキとバスタブをきれいにしてお湯をはり始めました。

「みみ、おまえから、風呂、先に入れ。俺、その間に下のコンビニ行ってビール買ってくるから。みみは、何か欲しいものある?」

最初の夫婦喧嘩の危機は、あまりにも簡単にスルーされてしまいました。私は、何か腑に落ちません。でも、ここでまた、爪を立てれば仲直りには時間がかかりそうです。争い疲れてベッドの中で仲直りするよりは、争わずにベッドで仲良くする方が、何だか、楽そうです。

「いいよ。Kが先にお風呂入って。私がコンビニに行ってくる。明日の朝ご飯用のパンとか、牛乳とか買ってきたいから。Kのビールも買ってくるよ。どのブランドのがいいの?」

             *  *  *

赤ん坊だけでなく、大人だって、ワーッと感情を爆発させて楽になりたいんです。夫と出会うまでの私は、泣いて暴れて、わがままを聞いてもらって慰めてもらって(そして、大げんかになって)、心の中の毒を吐き出していたのです。

楽になりたくて、何度も何度も、毒を吐き出しましたが、心の中の毒は消えませんでした。夫と結婚したからって、心の中の毒が無くなった訳ではありません。いつか溜まりに溜まった黒い感情が溢れ出て、夫と修復不可能な喧嘩をしてしまうかもしれないと、今だって心のどこかで怯えています。

何年間も自身の毒に戦々恐々として、夫と暮してきた私ですが、気が付いてみたら、心の中のドロドロは少しずつ浄化されていました。生まれ育った環境・生育歴は決していいものとは言えない私ですが、夫と出会い、一緒に生きていくうちに心の傷が癒されたのかもしれません。未だに傷は痛々しい姿で残っています。それでも、表面はだいぶ乾いた様に見えます。この傷跡が触っても大丈夫な状態になるには、あと何年くらいかかるのでしょうか。それまで、夫が、私に、愛想を尽かさずにいてくれたらいいのですが。

おやすみなさい。







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