【下北での記録】花粉症を楽しむ人
3月28日木曜日22時頃
毎日のようにうろついている下北沢だが、その日は10年以上お世話になっている学生時代の先輩からの電話きっかけで向かった。
できれば傘はほしいくらいの、小降りの雨。
通りの間にある6階建てくらいのビルの前で雨宿りしていたその先輩を見つけ、近くのお店で一杯だけ焼酎みたいなやつを食らう。
二人で1時間ほど色々お話させていただいたが、何の話をしたかはあまり覚えていない。つまりはそういう間柄である。
一軒目を出て、23時を回ったあたりで向かったのはこちらの通りにある先輩行きつけの店。
木曜日担当の日替わり店長さんは常連さんであろう人と一緒に入口の前に佇んでいた。
有名なライブハウスの向かい側に位置するそのお店は、木曜日にはメニューがガラッと変化しトムヤムクンと酒を一緒に飲める店になるという。
高校時分はパンクに浸り、今でも音楽活動をやっているという日替わりの店長さん(確か37~8歳)は、以前豪州でお世話になっていた日本人の方にどこか雰囲気が似ており、会ってすぐに親近感を覚えた。
どんな音楽が好きかと聴かれると、まず一番好きなNUMBER GIRLを答えることにしている僕。
「あ、NUMBER GIRLはね、ROCK IN JAPANで見たんだけど、当時は16とかだったからとにかく速い曲が好きで、いやNUMBER GIRLも速いんだけど、ハイスタが大好きだったから、ああいうパンク寄りの曲ばっか聴いてたんだよね」
「あぁ、でも僕も16歳の頃はオルタナよりはSUM41とかよく聴いてましたよ」
「いやなんで俺の16歳と君の16歳で聴いてる曲が同じなんだよ(笑)」
自分の音楽の嗜好が年が一回り近く離れている人と似ているということもあり、話がはずんだ。
お店にいた常連さんたちがポツポツと帰っていき、残った三人。
それからも音楽談義をしていただいたり、
日付を跨いだ金曜日に実は誕生日だった先輩を祝ったり、
結婚観を聞いたり、
そして所々で店長さんのクシャミ。
花粉症の時期だっけかと自分が気づいたのはその日だった。
会話中に挟まれる6~7連発の大きなクシャミは命に別状はないと知ってはいるもののやや心配になる。
「大丈夫ですか?」
「うん、俺花粉症結構楽しんでるからね」
「楽しんでる?(笑)」
「街中で突然大声出したらヤバいやつだと思われるじゃん。でも大きな声でクシャミしても「あ、この人花粉症なんだな」で済むじゃん。だから花粉症って、街中で大声を出してもヤバい奴だと思われない特権なんだよ」
その思考は自分にとってとても斬新で、
多くの人たちにとって苦痛でしかないものを楽しめるということはとても素敵だなぁ、などと思ったりした。
その日は結局店を変えて三人で5時頃まで飲んだ。
初めての早朝の下北沢は暴風及び雨だった。
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