ディラン研究書解題(1)
※ 旧「英詩が読めるようになるマガジン」(2016年3月1日—2022年11月30日)の記事の避難先マガジンです。リンク先は順次修正してゆきます。
ディランに関する研究書は千冊出ている。日々増え続けている。これらの研究書はディランに対する千通りのアプローチを示すともいえ、追いつくだけでも大変だ。
そのうち、手に入れた書の一部について簡潔に少しづつ紹介する。なお、可能であれば、基本的に、すべて電子書籍で読んでいる。
これには訳がある。詩の研究においてコンコーダンス(総索引)というものがある。どのことばがどの詩に出てくるかを索引にしたものだ。ある詩人のことばの使い方を知るには不可欠の研究資料だ。
電子テクストが手に入れば、このコンコーダンスを電子的に実現することができる。検索ができるからだ。
電子化されていず、紙冊体でしか存在しない書はその旨を記す。なお、電子書籍は、いつでも入手できるとは限らない。紙冊体で絶版の場合は、古書店で入手できることがある。
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目次
文学的分析(Ricks, Herdman, Emerson)
伝記(Shelton, Sounes)
アメリカ史(Wilentz)
その他(Yaffe)
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文学的分析
Christopher Ricks, 'Dylan's Visions of Sin' (London: Viking, 2003)
著名な英文学者が英文学の立場からディランの重要な詩を詳細に分析する。題名にある通り、キリスト教の「罪」の観念を軸にすえる。同時に「徳」の観念によっても分析する。
英文学史上の重要な作品でディランと関わりがあるものについて、精緻な検討を加え、ディランが言葉の匠としていかに優れているかを解き明かす。ディランの文学としての幅がシェークスピアに匹敵すると断言する著者は、ディランの奥行きはそれ以上のものと考えているかもしれない。私も同意見である。
ディランの詩のことばは、しばしばシェークスピアよりも難解で、OED(世界最高の英語辞書)によっても解明できないことがあるが、それでも間違いなく最高の道具である OED を頻用して、可能な限り深いレベルで英語の分析をしている。
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John Herdman, 'Voice without Restraint: A Study of Bob Dylan's Lyrics and Their Background' (Edinburgh: Paul Harris, 1982) [紙冊体]
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