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[万葉]Many are the mountains (巻1.2)

大和歌を英訳で読むマガジン(2)の第1回は万葉集巻1の2番の歌です。

大和には 群山あれど とりよろふ 天の香具山 登り立ち 国見をすれば 国原は 煙立ち立つ 海原は かまめ立ち立つ うまし国ぞ 蜻蛉島 大和の国は

大和にはたくさんの山があるが、その中で草木が茂ってみごとに装っている天の香具山に登り立って国見をすると、国原にはかまどの煙が次つぎと立ちのぼり、海原ではかもめがしきりに飛び立つ。良い国だぞ、蜻蛉(あきづ)島の大和の国は。(英語万葉集)

作者は舒明天皇 (593?-641) とされています。

国見の歌です。表現の歴史において大和の山は「主人公」と言われます。どこがそうなのでしょうか。[国見=高い所から国の有様を見ること。もと春秋に五穀豊穣を願い祝う儀礼。(古典集成)]

英訳を通してこの歌をながめてみます。

目次
読み下し文
英訳
解釈
 日本学術振興会訳
 Bownas 訳

【マガジンの案内】
名称:大和歌を英語で読む(2)
内容:大和歌を英訳で読んでゆく。最初は万葉集
分量:1マガジンあたり5本を収録(予定)
価格:1マガジンが1,000円。個別の記事の分売もします
方法:詩学(poetics)的関心から、日英の詩のことばを比較

参考文献 ([]内は本稿での略称)

・高木・五味・大野『日本古典文學大系 萬葉集』(岩波書店、1957)[古典大系]
・青木・井手・伊藤・清水・橋本『新潮日本古典集成〈新装版〉萬葉集』、1976[古典集成]
・伊藤博『新版 万葉集』、角川学芸出版、2009[新版万葉集]
・伊藤博『萬葉集釋注』、集英社文庫、2005[釋注]
・中西進『古代史で楽しむ万葉集』、角川学芸出版、2010[古代史]
・中西進『万葉集 全訳注原文付』(講談社、2013)[全訳注]
・大野・佐竹・前田『岩波古語辞典 補訂版』(岩波書店、1990)[岩波古語]
・大野晋『古典基礎語辞典』、角川学芸出版、2011[基礎語]
・秋山・渡辺『詳説古語辞典』、三省堂、2000 [詳説古語]
・中村幸弘『ベネッセ 全訳古語辞典』、ベネッセコーポレーション、2007 [ベネッセ]
・リービ英雄『英語で読む万葉集』(岩波新書、2004)[英語万葉集]
・Nippon Gakujutsu Shinkokai, 'The Manyoshu' (Columbia UP, 1965)
・Geoffrey Bownas, 'The Penguin Book of Japanese Verse', (Penguin Classics, 2009)
・T. E. McAuley, 'An Anthology of Classical Japanese Poetry', (www.wakapoetry.net, 2016)
・Ian Hideo Levy, 'Hitomaro and the Birth of Japanese Lyricism' (Princeton UP, 1984)
・Anne Commons, 'Hitomaro: Poet as God' (Brill, 2009)

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