[書評]偽キリストはAiと共に、バチカンに現れる!
保江邦夫『偽キリストはAiと共に、バチカンに現れる!』(青林堂、2020)
「寸止め」の秘技をもちいた世界史
タイトルは刺激的だが、文体はいたって穏やかで、まるで教科書のような記述に終始する。著者が2020年7月に発表した『語ることが許されない 封じられた日本史』(ビオ・マガジン) が日本史に関る著書であったとすれば、本書は世界史に関る。ただし、扱う範囲は、主として、日本、アメリカ、チャイナ、そして関連してイギリスとロシア。
扱う話題はネットを賑わした「陰謀論」が多いが、本書は、それにからむ、ネットでは決して見つからない情報をふくむ。ネットにはない、その情報については、本書では「◎」(二重丸) で列挙されており、その数は非常に少ない。が、どれも、知れば驚天動地の内容である。それらの情報は、著者が個人的な人脈を活かして直接に入手したものが多い。情報源については、情報の性質上、明かされていない。信じるも信じないも、読者に委ねられている。
それらについて、決定的なところまで書かれているかと言えば、〈ここから先は危ない〉ポイントの寸前のところで留められている、すなわち「寸止め」でとまっていると、評者には感じられる。感覚で言うと、著者は知っていることの恐らく十分の一も書いていないであろう (その点は、上記の日本史版でも同じ)。それでも、すさまじい衝撃をもたらす内容である。
本書は、「◎」の事項を淡々と挙げ、それに関連する内外の話題を、歴史もふまえつつ、冷静に説明する。「教科書のような」と冒頭に書いた所以である。
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ただ、理論物理学者の保江氏の本であるから、そういう「説明」に終始するわけでなく、氏の専門である物理学について分かりやすい記述もしていて、その部分は、非常にありがたい。
たとえば、「エヴァネセント光子」について、量子脳理論などで関心を持っている人には大変うれしい記述がある。こういう記述は一般的な解説書には殆どないだろうから、貴重だ。
この話がどういう文脈で出てくるかは、「◎」の事項にふれることになるので、ここでは割愛する。〈未来型のエネルギー装置〉に関する話とだけ言っておく。具体的には「燃える水」の話である。これは単なる話ではなくて、著者が現物を手にしたうえでの記述である。成分的にはただの水であるのに、これでエンジンが回るわけについて、著者は次の考察をする。
そこで一つ想像がつくのは、人体の細胞を取り巻いている電気を帯びた水に近いのではないかということです。
普通の水分子 (H2O) は、2個の水素原子と1個の酸素原子が結合したものですが、細胞を取り巻いている水分子はプラスとマイナスの電荷が偏極していて、そのために特殊な光が発生しています。
この特殊な光のことを、「エバネッセント光」あるいは「エバネッセントフォトン」と呼びます。
普通の光は、1秒間に地球を7周り半するほど速く進みますが、このエバネッセント光は、まるで海を走る船の舳先にある波のようにその場に留まっていて、この動かない光が細胞の中にあるときに細胞は生きていて、この光がなくなったら細胞は死ぬことから、エバネッセント光は生命力そのものといえるものです。
これは脳細胞でも同じで、脳細胞の近辺の水と電磁場の相互作用によってエバネッセント光が溜まっており、このことは、僕とノートルダム清心女子大学教授時代の助手の女性[治部 眞里氏のこと]との共同研究によって明らかになりました。
そこで、僕たちは、このエバネッセント光が人間の記憶を司ったり、人間の意識を生み出しているという論文を発表したのです。(138-139頁)
これが量子脳理論で、一般向きの本に『脳と心の量子論』などがある。
続けて、氏は次のように記述する。
このエバネッセント光から2次的に放射される光は、遠赤外線よりも長い波長なので頭蓋を通り越して外に出てきていると考えられ、従来「オーラ」と呼ばれてきたものの正体ではないかとされています。
(中略)
というわけで、「燃える水」はもしかしたら、このエバネッセント光を付着させているのかもしれません。
なぜなら、エバネッセント光が溜まっていると、摩擦がほとんどゼロになるからです。(139-140頁)
この技術は、すでに工業分野では実用化されているといい、氏は実例を挙げる。その中に次の例が出てくる。
このエバネッセント光を付着させて摩擦を軽減させる技術は実用化されていて、三菱電機のエンジニアたちは、それをガソリンエンジンに応用しています。
シリンダーとピストンの表面にエバネッセント光を付着させ、摩擦を減らしてエンジン効率を上げることに彼らが成功したという記事を読んだとき、「ああ、僕らが発見したことと同じ原理を使ったんだな」とすぐにピンときました。
(中略)
そんな[「燃える水」のような]「フォトンウォーター」とでも呼べる特殊な水を混ぜると、ピストンの摩擦が減り、その結果、ガソリンの燃焼効率が上がって燃費がよくなったのでしょう。(140-141頁)
こういう物理学に関る話題は、本書ではここだけで、あとは語られざる世界史の側面について、貴重な情報と考察とが記されている。その史的事実に関する真偽について、一般人には確かめるすべもない。ただ、各国の歴史書を丹念に調べると該当する事柄が出てくるかもしれない。
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