[書評] 日本とユダヤの古代史&世界史
田中英道、茂木誠『日本とユダヤの古代史&世界史』(ワニブックス、2023)
〈ユダヤ人と日本人の古代における文化交流〉。
一言でいってしまうと、本書のテーマはこれだと田中氏は言う。一大ドラマであるとも。
従来、日本の文化は、中国や朝鮮から来たとも言われていた。そういった狭い考えの完全な否定である。さらに、サミュエル・ハンチントンが言うように、日本文明は世界八大文明の一つであると。こう田中氏は述べる。
つまり、中国や朝鮮と異なる、確固たるオリジナルの日本文化があるということに日本人は気づくべきであると。
大陸の長い距離を平気で渡ってくる人々が古代に多くいた、という概念がこれから日本人の常識になる。これまでの、東アジアくらいの範囲でしか文化の影響を受けて来なかったという概念はたちまち変わることだろうと。
日本という地にディアスポラのユダヤ人たちがいたということは、これからの世界を考える上で、非常に重要な思考の礎になる。天皇が126代2600年ものあいだ続いてこられたのも、ある意味でユダヤ系秦氏の力があったからとも言えると。そこにテロリズムはなかった。
ネストリウス派の蘇我氏は例外的にテロリズムをやったわけだが、それ以後はぴったり止んだというのは、彼らが日本文化を遵守したということ。
もちろん、逆に考えれば、ユダヤ教徒にとっては、ユダヤの神を棄てたということにはなってしまうが、その国や土地に同化するということは、ユダヤ人にとってもよいことだと田中氏は見る。
そういう意味でも、この〈日ユ同化論〉という考え方が受入れられれば、ある意味で世界史を変えるだろうし、また日本史も変えることになるだろうと。
今まで、なかば常識としてあった、中国・朝鮮の文化圏としての日本史観は、もはや捨てざるを得ないだろうと田中氏は述べる。ユダヤ人埴輪は多くのことを物語ると。
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以上のようなスケールの大きい話と聞くと、さぞ難しそうに思えるが、対談した二人の語り口は至って平易で、前提知識ゼロの人にもわかるように語りかける。歴史の専門家どうしの対談だと、えてして自分たちだけでわかって先へ先へと突き進んでしまいそうなものだが、本書においてはそうでない。譬えていえば、高校生の前で初心者講座を話しているくらいの意識で語られている。したがって、高校生以上ならじゅうぶん理解できるだろう。
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田中氏の著書も茂木氏の著書も読んできたという人にとっても、本書は分かりやすさの点で出色であり、読んで損はないと思われる。対談本の傑作。
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