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[書評] 意識革命

なると『意識革命: 幸せも成功もすべてあなたの意識から生まれる』(2022)

なると『意識革命』(2022)

幸せはどこからやってくるのか——内観から

なると(深谷伸之)さんは、多彩な顔がある。

YouTuber として知られるが、ふだんの親しみやすい語り口のとき——世の中のさまざまの問題を扱い、よくわかる。

やや深遠な問題を解くとき——数理的にパズルを解くようで、驚かされる。

精神的な問題を扱うとき——内側に降りてゆき、はっとさせられる。

ほかに、金融面の仕組みを述べるときなどは、ビジネスマンのように見える。実際、会社の経営者でもある。

そんな著者が、自らの半生の珍しい体験を始め、世の中の仕組みについて独自の視点からさまざまな話題を提供するのがこの本だ。

本書の他では得難い点は、新鮮な視点やアイディアの提示だ。ふつうの人が気づかぬ、思わぬ角度から世の中の問題について、思考の材料を提供する。

本書の惜しい点は、そのような興味深い題材を含みながら、推敲の時間が不足していたのか、誤字やおかしな表現が散見されることだ。できれば十分に推敲した改訂版を出してもらいたい。

興味深いポイントをいくつか挙げてみよう。

・外の情報でなく、内観に目を向けることの大切さ——癌の影の指摘を医師に受け、頭の中が真っ白になったとき、著者に〈すべての癌検診を辞め、椎間板ヘルニアの手術も断る〉との直感が降りてくる。健康を取戻す妙案もなく、著者は自分の内観と向き合う日々を迎える(第5章「意識革命が世界を変える」)。

・国連のSDSN(持続可能な開発ソルーション・ネットワーク)が毎年3月20日前後に発表する「世界幸福度調査」(World Happiness Report)の2022年の 国別順位 で、日本は全146か国中54位——1位フィンランド、2位デンマーク、3位アイスランド、12位オーストラリア、13位アイルランド等。日本の順位が低い理由について、著者は調査項目のうち2つが極端に低いことを指摘する。すなわち、寛容さ(Generosity)[表で見るとスコアはゼロに見える]と人生の選択の自由度(Freedom to make life choices)だ。著者は〈教育から会社や社会全体に至るまで、社会的自由と個人の存在を認める寛容さが不足しているような気がしてなりません〉と述べる(第4章「幸せは どこから やってくるのか」)。確かにそうかもしれない。昨今の顕著な同調圧力はその表れとも思える。

以上、2点だけ挙げたが、実は著者の引出しはもっと幅広くて、本書に取上げられなかった面でも、いろいろある。今後の著作に期待する。

#書評 #なると #意識 #幸福度

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