マガジンのカバー画像

音楽 評 / 旅(ピアノ)

88
音楽関連
運営しているクリエイター

#ボブディラン

[書評] ソングの哲学

ボブ・ディラン著、佐藤 良明訳『ソングの哲学』(岩波書店、2023) ポピュラー・ソングの全貌を見通すような本書を捧げる相手としてディランはある人を選んだ ボブ・ディランは誰に本書を捧げたのか。 ドク・ポーマスである。 この名前を聞いてピンとくるような人を除けば、本書は、尽きることのない興味がわいてくる、知的刺激にあふれた書である。 ちなみに、Doc Pomus (1925-91) は、本書の終わり近く、第63章のうた 'Viva Las Vegas' の共作者の名

[CD・BD評] Bob Dylan 日本公演20230408

今でも鮮かに蘇る。 ボブ・ディランの日本公演(2023年4月6日から4月20日に11公演)は至福のときだった。 公演を観に行った4月8日だけでなく、彼が日本に滞在していた期間(4月4日から25日)のすべてが至福のときだった。 ボブ・ディランのバンドが総体としてぶつけてくるサウンドを全身に浴びることは、存在の浄化をもたらすような体験だった。これほどの音を聞いたのは初めてのことだ。 その4月8日の公演を収めたブートレグCD・BDの第一印象を記しておきたい。 Bob Dy

[英詩] Truckin' (Robert Hunter)

※ディランの新しいレパートリについて考えるための手がかりです。随時更新します。将来「英詩のマガジン」に入れることがあれば、それまでの限定公開です。 Bob Dylan が東京公演2日目に Grateful Dead の曲 'Truckin' ' を初めてライヴでやった。 残りの日本公演でもまたやるかもしれないので、ハンター作の詩を見ておく。詩形と注のみ。歌詞のソースは Grateful Dead の 公式サイト 。詩として最低限の校訂を施してある。 Truckin'

[英詩] Bob Dylan, 'Key West' (ラフ)

※「英詩のマガジン」に入れるまでの限定公開のラフ・ヴァーションです。 Bob Dylan のアルバム 'Rough and Rowdy Ways' (2020) 所収の、同アルバムの頂点と目される 'Key West (Philosopher Pirate)' について、3冊ほど研究書を読みましたが、まともに分析したものがまだなく、自分でやることにします。 まずは、準備のラフな作業。詩形と注。 1連McKinley hollered - McKinley squalle

Bob Dylan 2023来日 予習用 メモ

※ 自分用の予習リストです。随時改訂することがあります。 Bob Dylan が2023年4月6日大阪公演を皮切りに来日公演をします(4月20日の名古屋公演まで)。 その公演で予想される曲目について、私のやっていた英詩のマガジンのどの号で取上げたかと、それぞれの号でふれた参考文献(毎回つかう 'Lyrics' などは除く)とをまとめておきます。主として自分用ですが、参考になる人もいるかもしれないので、公開します。 なお、アルバム 'Rough and Rowdy Way

[ディラン選] 公式盤より良い歌があるので

新しい企画を考えつきました。 公式盤や百選にとらわれず、本当に良い歌、良い詩を選んでみよう。それをとことん考えてみよう。 というものです。「英詩が読めるようになるマガジン」(2016年3月1日—2022年11月30日)を6年半やって、ディランの場合、どこに傑作が潜んでいるか、油断も隙もないことがしみじみわかりました。 そこで、公式盤に入ってるかどうかとか、ディラン自選の百選歌集に入ってるかどうかなどに関係なく、わたしが本当に良いと思う詩歌を選ぼうと思うにいたりました。

再生

'My Back Pages' (Bob Dylan The 30th Anniversary Concert Celebration (1992))

ディラン30周年記念ライヴで 'My Back Pages' を和気藹々と唄う面々 次の順番 1. Roger McGuinn 2. Tom Petty 3. Neil Young 4. Eric Clapton (g solo, vo) 5. Bob Dylan 6. George Harrison 7. Neil Young (g solo, vo) 𝗠𝘆 𝗕𝗮𝗰𝗸 𝗣𝗮𝗴𝗲𝘀 Crimson flames 𝘁𝗶𝗲𝗱 through my ears Rollin’ high and mighty 𝘁𝗿𝗮𝗽𝘀 Pounced with fire on flaming roads Using ideas as my maps “We’ll meet on edges, soon,” said I Proud ’neath heated brow Ah, but I was so much older then I’m younger than that now Half-wracked prejudice leaped forth “Rip down all hate,” I screamed Lies that life is black and white Spoke from my skull. I dreamed Romantic facts of musketeers Foundationed deep, somehow Ah, but I was so much older then I’m younger than that now Girls’ faces formed the forward path From phony jealousy To memorizing politics Of ancient history Flung down by corpse evangelists Unthought of, though, somehow Ah, but I was so much older then I’m younger than that now A self-ordained professor’s tongue Too serious to fool Spouted out that liberty Is just equality in school “Equality,” I spoke the word As if a wedding vow Ah, but I was so much older then I’m younger than that now In a soldier’s stance, I aimed my hand At the mongrel dogs who teach Fearing not that I’d become my enemy In the instant that I preach My pathway led by confusion boats Mutiny from stern to bow Ah, but I was so much older then I’m younger than that now Yes, my guard stood hard when abstract threats Too noble to neglect Deceived me into thinking I had something to protect Good and bad, I define these terms Quite clear, no doubt, somehow Ah, but I was so much older then I’m younger than that now (OED による語釈) 1連1行 𝘁𝗶𝗲𝗱 - tie: To separate (the ore) from the dross or refuse by means of a ‘tye’. 1連2行 𝘁𝗿𝗮𝗽𝘀 - trap: A ‘fault’ in a seam of coal, also in a mineral vein or in any stratum; an up-throw or down-throw of the stratum.

ディランと黒人音楽('Emotionally Yours')

この記事はマガジンを購入した人だけが読めます

あるマガジンとピアニスト

2016年3月上旬に始めた英詩のマガジンとピアニストAとは、どんな関係にあるのでしょうか。 そんな疑問をいだいたアナタのために、駄文を弄します。 まず、世の中に英詩を理解したいという需要があると見立てたのは、そのピアニストです。EUのコンセプトの立役者であるフランスの思想家のフランス語の本に、断りなしに英詩が引用されていたのが直接のきっかけです。そんな引用の仕方を見ると、どう考えてもヨーロッパの知識人にとって英詩は当然の教養となっていると思われたのです。英米ではいうまでも

ハイレゾ事始め(2) BOTT

※「ハイレゾ事始め」の1回めは 'John Wesley Harding' (1, 1a)。 LPだと針を落とした瞬間にグッとくることがある。 それに匹敵する経験が DSD でも起きることを発見した。CD などではあまり起きない。 今回は 'Blood on the Tracks' (下)。DSD は moraやe-onkyoで入手できる。どちらも 2.8MHz/1bit. ハイレゾとしては Flac (96.0kHz/24bit)もある。 1 Tangled Up