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31、成長ホルモンの話

今回は比較的よく知られている「成長ホルモン」を取り上げます。成長ホルモンは脳下垂体の前葉という場所から分泌される、成長に関わる作用と代謝の調節を行なうホルモンです。一般的にはGHと略され、とくにヒトの成長ホルモンの場合は hGHと略すこともありますが、今回はGHの略語を使うことにします。

成長ホルモンはその名の通り成長とそれに関わる代謝に対して働きかけるのですが、小児期と大人の時期とでは少し働きかけ方が違ってきます。

小児期で知られているのは骨に対する働きかけでしょう。どんどん身長が伸びていくのを実感できるのはこの時期です。手足のような細長い骨を中心に成長因子(IGF-1)をどんどん作らせて、骨を伸ばしていくんですね。しかし、骨だけが伸びても身体はうまく運動できません。ですから一緒に筋肉も成長していかなければなりませんが、GHはここにも関わっています。運動量が増えれば、それを支える体の中の各器官や組織も一緒に成長することが必要です。GHはこういったところも忘れずに働きかけをしているんですね。

さて、小児期に続いて思春期になってくると、今度は成長に関わる働きかけといっても性的な成熟に向けた発達が中心に変わってきます。そして、身体も心も大人に向けて充実していきます。

大人になると、もう骨がどんどん伸びる必要はありませんし、性的にも成熟して次の世代を育む準備も出来てきます。身体的に成熟してきたわけですから、今度はその身体をきちんと管理していく必要があります。疲れたら休息をとったり手当や修復をしたりするのと同じように、GHは身体のメンテナンスをしたりする働きに変わっていきます。

機械的なメンテナンスをする時などは、どんなタイミングで行うでしょうか。業務にもよりますが、社会的には夜間に行なって周囲にあまり支障をきたさずにするような配慮をしませんか。それと同じように人間の身体も、活動している間はメンテナンスはできません。したがって休息中、つまり睡眠中に組織の修復などを行なった方が良いということになります。そのメンテナンスを促す成長ホルモンも、睡眠中の時間帯に分泌が増えて活躍することの方が理に適っていますね。

このことから、GHには分泌によって作用する時間にリズムがあることが予想できます。実際にGHは日中の分泌量が少なくて、夜間や睡眠中で体を休めている時に分泌量が増えるという一定のリズムを持つことが知られています。(だから、寝る子は育つと言われるのでしょうか?)

このリズムを知っておくことは、じつは大切なことなんです。医療機関を受診した時に採血を行なうことがよくありますが、このようなリズムを持つホルモンなどの血中濃度を測定するうえで、いつ採血したかによって測定値が変わってきます。身体の状態をキチンと知るためには、何時に採血をしたかの記録も必要なんです。入院患者さんの採血時間がたいてい早朝の一定の時間に行なわれるのは、そういう意味があるんですね。


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