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短鎖脂肪酸の話

脂肪酸との違い

短鎖脂肪酸、あまり聞き慣れない言葉かもしれません。一般的には脂肪酸の分類法というと、飽和脂肪酸不飽和脂肪酸という分け方をします。この二つ、何が違うかというと分子構造上の話になるのですが、二重結合が有るか無いかということなんです。構造式を書いてみた時に、二重結合(CやOといった元素をつなぐ線のようなものが2本線、=の形)が無ければ飽和脂肪酸、一つでもあれば不飽和脂肪酸と分類されるんです。

そして、不飽和脂肪酸の中でも人間にとって生化学的に体の中で合成が出来ない、すなわち食事などの方法で体外から取り入れる必要があるものを「必須脂肪酸」としています。昔は必須脂肪酸のことをビタミンFと呼んでいた時代もあるそうですが、現在ではそのような呼び方はしていません。

脂肪酸については、他にもいくつか分類の仕方があります。それは、脂肪酸を構成する炭素の数で分ける方法です。こんな感じに分類します。

 炭素数が6個未満:短鎖脂肪酸
 炭素数が6~12個:中鎖脂肪酸
 炭素数が13~21個:長鎖脂肪酸
 炭素数が22個以上:超長鎖脂肪酸 

このように分類します。
なお、炭素数が10個以上のものを高級脂肪酸とする呼び方もあるそうですが、これはちょっとややこしい。

短鎖脂肪酸は何をするモノ?

短鎖脂肪酸は腸内細菌が作り出すもので、腸の健康、ひいては人間の身体の健康にとって、非常に重要なものです。どんなモノが短鎖脂肪酸として作られるかというと、酪酸、酢酸、プロピオン酸といった名前が付けられているモノたちです。

酪酸やプロピオン酸とは何ぞやというか、どんなものかよく分からないといわれるかもしれませんが、酢酸ならどうでしょうか。お酢の主成分ですね。身体にいいものだから飲みなさい、そんな事をいわれても、そうそう簡単には飲めないという人が多いでしょう。無理して飲まなくても大丈夫です。腸内細菌が代わりに酢酸として作ってくれますから。

腸内細菌が短鎖脂肪酸を作るためには、元気に活動してもらうためにも、まずエサとなるモノが必要です。そのエサとなるモノが、水溶性や不溶性の種類がある食物繊維です。大腸でオリゴ糖や食物繊維で消化しにくいモノなどを、腸内細菌が発酵することで短鎖脂肪酸を作ります。

短鎖脂肪酸はその名の通り、炭素数が6個未満の小さな分子サイズですから、大腸で吸収されてさまざまな働きをします。例えば、短鎖脂肪酸は「酸」の一種ですから、腸の環境を酸性側に傾けることで、悪玉菌の増殖を抑制する働きがあります。これは以前にも書いた通りですね。

他にも、大腸の調子を整えるとか、様々なエネルギー源として活用されるとか。免疫力に対しても影響を及ぼすというか、制御する働きがあるようです。

短鎖脂肪酸を増やしたい

先に書いた通り、腸内細菌が活発に短鎖脂肪酸を作るためには、食物繊維が必要です。これは食事として取り入れるものですから、普段の食事に気をつければ、さほど難しい事ではありません。この食物繊維、意外にもいろいろな働きがあるようです。

食物繊維はカロリーとしてはほぼ無いものなので、少々多めに摂取しても問題はありません。そしてこの食物繊維、結構腹持ちが良いというのか、ゆっくりと消化されますので、食べ過ぎを防ぐことが出来ます。また、小腸では食物繊維を多く摂ることで糖質や脂質の吸収が緩やかになるのだとか。それに加えて、大腸に来ると今度は善玉菌や日和見菌のエサとなる、それによって善玉菌や日和見菌が元気になる、良いことづくめのようですね。

日和見菌が元気になる事に、あまり効果を期待をしていないと言われるかもしれませんが、これ、結構大事です。日和見菌、バクテロイデスと呼ばれるグループ、ヤセ菌として知られている菌なんです。ヤセることも視野に入れて良いのですから、飛びつきたくなる人だっているんじゃないでしょうか。

さて、善玉菌や日和見菌が元気になって、ヤセ菌も増えて・・・、本題は食物繊維を摂って短鎖脂肪酸を増やすことでしたね。ですが、善玉菌や日和見菌が元気に増えれば、短鎖脂肪酸も増えることが期待できます。じつは、短鎖脂肪酸、それ自体にもヤセる方向に向けた働きがあるようですよ。

短鎖脂肪酸が腸から吸収されると、脂肪組織が頑張って脂肪を燃やそうとするそうです。さらに、食欲を抑える働きを持つホルモンが分泌されるのだとか。さらには全身の交感神経節にあるレセプターに短鎖脂肪酸が結合して、全身の代謝がアップするという研究もあるのだとか。

野菜や海藻類をしっかり食べて食物繊維を摂って、短鎖脂肪酸を増やしましょう。



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