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☆本#385 選択肢と適合性 「喜嶋先生の静かな世界」森博嗣著を読んで

著者の本はまだミステリー系しか主に読んでないけど、これはミステリーではなく、理系大学院や理系世界を舞台とした文学系というかノンフィクション的というか。
S&Mシリーズの犀川助教授や萌絵の属する大学内での、理系の先生や学生の世界で、どこかのシリーズでの(多分W?)学会の様子もまた出てくる。

主人公は大学生男子、橋場。喜嶋先生と出会って15年後に当時を振り返る設定。
特に勉強しなくても、入試で数学が満点を取る賢い橋場は、大学4年で講座配属の際、あえて不人気の講座を選択する。それで指導員として喜嶋先生を紹介される。

橋場にしても、喜嶋先生にしても、S&Mシリーズの犀川助教授と同系、全体的に。
理系学生の大学での世界、修士、博士課程の流れ、組織としての大学が描かれ、ノーベル賞の政治力が指摘されたり、実は大学って自殺者が多いとか、同級生女子の男女差別とか、海外の方が博士相当の学位を日本より簡単に取れたり等の話が挿入されたり。

橋場はその後、順調に博士課程まで進み、大学時に好意を持たれていた同級生女子とも付き合いだし、ちゃんと助教授として就職も決まり、喜嶋先生より先に出世する。とうか、彼は研究のためにあえて出世しないようにしている感じ。

計算機センターの教員に片思いしていた喜嶋先生は告白を飛び越えて結婚を申し込むも、断られる。その女性は別の人と結婚予定だったので。でも、もっと早く言ってくれればと言われ、なんとその後(十数年後?)ふたりは結婚し、ついに喜嶋先生も助教授となり、地方の大学で働きだす。
ところが2年後、喜嶋先生は大学を辞め、行方知れずとなる。橋場は彼が学問を王道を歩いていると思う。自分は王道を外れたけれど。

研究者は40歳を超えると研究からは遠のくのが一般的みたいだけど、そういえばノーベル賞を取った人のなかに出世を拒み研究を続けていた人がいたのを思い出す。
理系研究者の世界が少しわかったような。

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