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☆本#409 女性の割り切れない気持ちと、当時の歴史「嫉妬」アニー・エルノー著を読んで

著者は2022年ノーベル文学賞を受賞。同年公開された映画(本の方のtitleは「事件」にも興味を持ったので読んでみた。この本には、中編「嫉妬」と短編「事件」が含まれる。どちらも語り手は著者自身。

前者では、40代の著者が6年付き合った30代の男性に自ら別れを告げたのに、彼に恋人ができ、それが年上だったので、気になってその女性について調べつつ、そういう自分の止められない行動を冷静に分析している作品。

不条理な感情に向き合い、書くことで自分を取り戻すというか、つかえていたものを消化していく感じ。関係者名や地名は周りにわからないよう変えているらしく、ベースはノンフィクションだけど、フィクションみたいな。

後者は、著者が20代の学生時、まだ堕胎が違法だったころに妊娠してしまい、それにどう向き合い、どう対応してきたか、ある意味赤裸々に述懐している。こちらも実在人物の名前は伏せている。当時の社会情勢もわかる。

どちらも、心情を述べる部分、流れが等が文学的。

編集後追記:母親について書いた本について著者はアメリカのテレビ番組インタビューで、伝記でも小説でもなく、literature、Sociology、history を足して割ったようなものかもしれないと言っている。この作品もそこは共通しているような。


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