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映画「私の中のあなた」「潜水服は超の夢を見る」(本#384)を観て

前者はアメリカ映画、後者はフランス映画。両者の共通点は原作があり、その結末や内容(設定)が微妙に違うこと。

前者は一度観たことがあったけど、詳細は忘れていたので再度鑑賞。
主人公アナの出生は訳あり。姉のケイトの病気、白血病のせいで、両親に医者がオフレコで、遺伝子の近い子供がいると移植の成功率が高まる話をしたため、ドナーとして出産することが決まる。
アナは小さいころから姉のために、輸血や骨髄移植等してきた。11歳になり、ついに両親を相手取り訴訟を起こす。もう自分の体を傷つけたくないし、将来が不安だから。弁護士には勝訴率の高いキャンベルを選ぶ。キャンベルはいつも犬を連れている。

ケイトは病院でテイラーという少年と出会い、恋に落ちる。ふたりはカフェで語り合ったり、パーティに行ったり、急接近して楽しいひとときを過ごす。が、同じ病気だった彼は帰らぬ人となる。
ケイトは悲しみに暮れつつも、現実を直視していく。そんな中、父親が医者の許可をもらい、強硬でケイトが望むビーチへ連れて行く。弁護士の妻からは連れ出すなら離婚すると言われながら。後から妻とその姉妹も合流して、家族全員はビーチで共に時を過ごす。

裁判が始まり、妻が弁護士として法廷に立ち、キャンベルと対立する。途中、犬が吠えだし、キャンベルが倒れる。彼も病気で、犬は介護犬だった。発作が出てそうになると吠えて知らせていたのだ。

結局、アナが法廷で証言する際、その場にいた兄が真相を話す。ケイトがアナに訴訟するよう言ったと。なぜならケイトはもう死にたいから。

母親は子供を死なせたくて、母親の使命だと思ったからひとり強気でみんなを引っ張ってきたけど、肝心の娘はもう病院での苦しい日々には疲れ切っていた。アナは、姉への移植に本当は反対してるわけじゃなかった。訴訟することのほうがこわかったけど、姉の希望だったから。
母親もついに現実を希望を受入れる。
ケイトが亡くなったあと、家族がケイトの誕生日には再会している様子が描かれて終わる。

母親役を初めて演じたというキャメロン・ディアスの強い母の演技、父親役のパーティへ行く前の娘に対する嬉しそうで寂しそうな演技、ケイト役の子の剃髪状態から恋する乙女まで豊かな演技がよかった。

改めて見直すと、訴訟を起こしたアナより、この映画の主役はむしろケイトだったという印象。

しかし、原作では実はアナの方がが亡くなる。アナと兄は、両親がケイトばかり世話をするので非行に走る。麻薬、放火などに手を染め、アナは事故で脳死し、結局ケイトに臓移植。
原作のタイトルが、「My sister's keeper」なので、ここはそれにつながってる。日本語の映画タイトルだと、ちょっと意味が違ってくるような。

後者は、日本の予告編からはイマイチ観る気になれなかったけど(脳梗塞シーンがなんか強烈な感じで)、フランスで本はベストセラーだったのでついに観た。

仏雑誌エルの編集長ボービーは43歳で、仕事は順風満帆。
ところが、脳梗塞になり、昏睡状態から目覚めると、動くのは左目だけだった。意識と記憶は正常だけど、全身が麻痺しており、「閉じ込め症候群」と診断される。この症状になるのは宝くじに当たるのと同じ確率だとか。

言語療法士の力を借り、意思疎通を図れるようになり、元カノと、彼女との間の3人の子供に会って、海辺までいって過ごしたりできるようになる。今カノは訪れない。

回想シーンで、ボービーは郊外と思われる元カノの家へ行く、3人の子供が飛び出てきて、長男と車で出かける。その途中、彼は脳梗塞になる。
体が動かない状況は、まるで思い潜水服を着て、海の中を沈むような感じとして描かれている。そして、思考は蝶のように自由に羽ばたく。

ボービーは本を出版することにして、言語療法士が編み出した多頻度アルファベット順から言葉を選ぶ方法でついに本が完成する。その10日後亡くなる。原作では、死亡はその2日後。

ちょっとどうかなと思うのは、ボービーを介護していたのは今カノのほうだったこと。映画では元カノが世話を焼いていて、今カノは来ない。原作にも映画で描かれた元カノと子供と過ごすシーンがあるけど、実際そばにいたのは今カノなんだけど…。家族を中心に人間関係をシンプルにしたのかもだけど…。

この映画では、深い絶望や孤独感がサラッと詩的に表現されていて、気になったので原作を読んでみた。で、もっと彼の本を読みたくなった。
とはいえなんと、この本だけでも20万回以上の瞬きをしたという。書き取った人も同様に頻出アルファベットを口にしているわけで、どちらも大変だ。

本を読んで改めて気付いたけど、意識が戻ってから亡くなるまで約3カ月程度と短かった。最後は感染症による合併症で死亡。
2冊目の本の執筆の話もあったようなのにとても残念。



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