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☆本#577 cozy「デンマークに死す」アムリヤ・マラディを読んで

タイトルが目について、内容もミステリ系だったので読んでみた。
著者の本は初めて。
著者はインド生まれで、デンマーク人と結婚し、デンマークに14年住み、現在はアメリカ在住だとか。本作を書き上げるまでに数年費やしたらしく、デンマークの戦時中の出来事もからむので、歴史的なことの調査に時間がかかったのか。

コペンハーゲンの私立探偵プレストは41歳で、一人暮らし。事実婚だった女性スティーネとの間に10代の子供がひとりいて、スティーネとその結婚相手とともに子育てに関与している。

冒頭に1943年のユダヤ人少女の体験。

現在に戻り、プレストは、ブルース・バーで、過去に唯一愛した女性レイラを見つける。久しぶりに会った彼女から、彼の助けが必要だと言われる。
彼女は弁護士で、既に殺人事件で有罪判決を受け、服役している移民男性の弁護を引き受け、再審を請求するという。そのため、この殺人事件について彼に再調査を依頼。彼は元刑事なので、元同僚に警察はやるべき仕事を全部したのか確かめてほしいと。結局、プレストは引き受ける。

プレストはまず、被害者の法務長官メルゴーの関係者らに会うことにする。その一人メルゴーの妹ウラから、メルゴーが本を執筆していたことを知る。それは、ナチス占領下のデンマークが題材だった。でも、原稿はなぜか消えている。

さらに調査を続けるプレストは、ある晩自転車を盗まれ、徒歩で帰宅途中、襲われる。ウラも泥棒に入られたことを知る。プレストは本について調べるため、メルゴーの足取りを追って、ベルリンに行くとウラに言うと、それをきっかけにウラはベルリンの博士からSNSでメッセージが来たことを話す。
プレストはその博士に会うため、レイラと出向くが、約束の時間に博士は不在。確認してもらうと、殺害されたことがわかり…。


語り手はプレストひとりなので、展開が若干スロー。訳者があとがきで本作は「北欧ミステリーに特徴的な『ノワール感』に『コージー感』が加わった」と書いてるけど、確かに。プレストは、元警官とはいえ、マッチョな武闘派ではなく、ファッション重視。楽器の演奏者でもある。

デンマークの戦時中のダークな歴史、移民問題、度々挿入される作家や思想家らの引用が興味深い、というかちょっと考えさせられた。特に、キルケゴール。
着地点もよかった。

著者は、本作以外はミステリーでなく、女性向けの作品らしいのでいつか読んでみたい。


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