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☆本#386,387 ミステリーからサイエンス「λに歯がない」「目薬αで殺菌します」森博嗣著を読んで

前者は、完全密室のT研究所で4人の銃殺死体が発見され(全員のポケットに「λに歯がない」と書かれたカードが入っていて、死後みな歯を抜かれていた)、同施設内で山吹らが実験を実施していた関係で、加部谷、西之園萌絵らが謎の解明に迫る。が、一番先に謎部分を解明したのはやはり犀川助教。
歯を抜くには理由があり、著者の小説の中では珍しく背景が明らかにされている。が、ちょっと非現実的な気も。

巻末の文系棋士の感想的解説は、著者の本の読み始めの印象がわかる点がなんだかよかった。解説は、主観的すぎてイマイチなのも結構あってそういうのは苦手で、キチンと解説の要素が欲しい。
ちなみに著者は後書をほぼ書かない。「トーマの心臓」でしか見たことない。

後者は、探偵の赤柳初郎が製薬会社部長に、社内で見つかった劇薬の入った目薬に関して社内調査を依頼され、調査対象者に接触するも、その女性が姿を消し、市販されたものから被害者が出てしまう。加部谷の友人が目薬容器検査のバイトをしてたり、同級生の海月がほかの大学へ行くことがわかって、ふたりの間に進展があったりなかったり、犀川助教の真賀田四季への興味、罪に関する見解がわかったり。
赤柳が四季関係について調べるために雇っていた女性が、突然自殺し、彼女のノートPCを彼女の姉からを手渡される。が、奪われる?
事件自体はなんとなく犯人がわかる描写があるけどつかまらないまま、四季関係の壮大なスケールが少しずつ明かされつつ次に続くような感じでおわる。
どうやら脳移植とか、サイエンス系に繋がっていきそう。

犀川助教は、四季が犯罪者だけど殺したのが身内という点を考慮し、他人や社会には干渉していないから実害のある部分を処理すればいいと。で、四季のプラン(もしあれば)にはむしろ協力したいという。
そこちょっと違和感。犀川の犯罪者への距離感というかもともとのスタンスはともかく。

ペドロ・アルモドバル監督でペネロペ・クルス主演の映画「ボルベール(帰郷)」や、世界ベストセラーの本「ザリガニの鳴くところ」も、長いスパンで見ると、殺人者が罪を償う必要性というよりも、やむを得ない的感じにたどり着く。それはストーリーの説得力というか状況というか。前者の映画の方は、それでいいのかと多少疑問に思ったけど、本のほうは年月の経過が大きく…。

読んでて、たぶん頭のいい人ほど絶対的天才やカリスマに惹かれてしまうのかなと。例えば、偏差値の高い大学の学生が宗教にハマったり。純粋であればあるほど。

著者が描く天才のモデルには、死後の世界があると考えていたり、人の魂をコンピュータで表そうとしていた、イギリスの天才アラン・チューニングの影響がありそう。



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