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☆本#581-2 ピーターパン「鳩の撃退法 上下」佐藤正午著を読んで

冒頭の出来事で、その後どういう展開になるのか引き込まれたけど、主人公は元作家で、プロの探偵でも刑事でもなく、捜査をするわけでもない。

冒頭は幸地家の話。幸地家では、幼い娘が父親を下の名前、秀吉と呼ぶ。ある朝、妻が起きてこない、秀吉が部屋に見に行くと布団に寝ていて風邪気味だという。その後、娘を幼稚園へ送って、家に帰ると妻から重要な報告があると言われ、その後、この一家は失踪する。

主人公の津田は40代で、過去に直木賞を獲ったことがあるが5年ほど本を書いていない。流れ着いた土地で、デリヘルの送迎の仕事をしていた津田は、この一家が失踪する日の明け方、昨年の2月28日午前3時に、ドーナツショップで秀吉と偶然話す。秀吉はバーを経営していてその帰り。津田はピーターパンの本を持っていて、2人はそのストーリーについて話し、機会があったらまた話そうと言い別れる。

その後、津田が借金してた老人が亡くなり、何故か彼の遺産(大金)をもらうが、それが偽札とわかり、その影響で仕事を失い、新たな仕事を紹介され、東京へ。
津田は、秀吉一家の失踪について、得た情報を膨らませて小説を書き始めるが…。


津田の世界の現在に、幸地家失踪の2月28日のできごと、津田の創作が挿入されつつ、話は進む。

津田が若干クズで、俗物的。でも、なぜ幸地家を題材に小説を書き始めたのかはちょっと真摯。
後半、ふと全てが津田の創作かって思ったり、最初は、冒頭の「なぜ子供の父親ではないのか」についての父親側の理由を知りたかったんだけど、展開的にそれよりもどこまで明らかになるのかが気になったり。
日本のある作家が、伏線は全部回収しなくてかまわない的なことを言った海外の作家の話をなにかでしてたけど、この作品にとても当てはまる。

この作品の中で、偽札騒ぎが起きたのは5月26日(日)!
作中に出てくる本で、「ピーターパンとウェンディ」は久々に読んでみようかなと、サマセット・モームの「劇場」にも興味。


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