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☆本#53 「恋歌」朝井まかて著を読んで

最初に知った朝井まかての本は、たぶん書評で知った「実さえ花さえ」(現「花競べ」)かと思っていたら、テレビで見た「ぬけまいる」だった。

時代物はほとんど見ないのにこのドラマは面白かったので最後まで見た。本のほうも時代ものなので読む気になるまで時間がかかったけど、読んでみたら人情や人間模様が深くておもしろかった。デビュー作にしては、完成度が高いと思う。

ので、この作家の本を全部を読みたくなって、次に選んだのがこの本。この作品で直木賞を受賞している。

恋歌

恋歌

主人公は、作家・樋口一葉の師である歌人・中島歌子。彼女の若き日の歩みから最期まで歌人自らと弟子が語る形で描かれている。

幕末から明治にかけての激動の時の話で、出だしから引き込まれて一気に読んでしまった。

大河ドラマな点は、原田康子の「海霧」のリツの話を想起した。ふたりの性格は全然違うけれど、時代や属している環境に翻弄されている。

物語性の高さとしては、フランスでゴンクール賞を2回も受賞したロマン・ガリの「夜明けの約束」を思い出した。

歌子の詠んだ和歌がせつなく、琴線に触れる。

君にこそ恋しきふしは習ひつれ さらば忘るることもをしへよ

人生は100%幸せとは限らないけど、100%不幸ばかりでもない。

最近はハッピーエンドを選んで読んできたのでこれは想定外な部分もあったけど久々読みごたえのある本で、中島歌子や水戸藩について歴史を知りたくなった1冊。それと、樋口一葉も。



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