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☆本#405 望むまま「女薬剤師」イングリート・ノル著を読んで

この作品は著者の3作品目だけど、日本に紹介された本としては1作目。それは1996年。
デビュー作「雄鶏は死んだ」(1991年)が、ベストセラーとなり、その主人公ローゼマリーは今作でも登場する。

ハイデルベルクの産婦人科病院に入院している薬剤師ヘラは、同室の患者ローゼマリーにセラピーもかねて、自分の半生を語る。ローセマリー58歳は、筋腫除去で入院していた。

ヘラは、12歳のとき殺人者と烙印を押されたこと、過去愛した不幸な男たち、初めて結婚したいと思った大学生のレヴィンとの出会いからこれまで、レヴィンの資産家の祖父やその家政婦、家政婦の夫でありレヴィンの友人ディーターとの話、薬剤師なので職場で客として出会ったパヴェルとその妻、祖父の毒の話をしていく。
途中、ローゼマリーは聞いてたり、寝入っていびきをかいていたり…。

ヘラはレヴィンに相談され、彼の論文を手伝ったり、家を引っ越したり、母親のように彼に尽くす。自分の論文はあと回しにして。
彼は実は、遺産相続のため、資産家の祖父の死を待っている。ヘラの持っていた毒で彼を殺すも、祖父は遺言をいつの間にか変えていて、結局資産はヘラの手に。殺人は自然死と処理される。

その後、レヴィンと家政婦が不倫をしていたことがばれ、事故で彼女は亡くなり、その夫ディーターとヘラは恋仲になる。が、ヘラは妊娠した際、どちらが父親かわからず、ディーターの暴力性もあり、彼らとの関係も複雑になっていく中、妻子がいるパヴェルが気になりだす。
パヴェルらと親密になっていくヘラ。いろいろあってパヴェル一家も、ヘラの屋敷(レヴィンの祖父の屋敷)に引っ越す。その後ディーターは逮捕されて家を出て、レヴィンは旅に行って戻ると男性を同行していて、いっしょに2階に暮らし始め、パヴェルの精神が不安定で入院していた妻が家に数日帰れることになり、事件が起き…。

ヘラは仕事があり、ちゃんと稼いでいるので、そもそも資産なんてどうでもよかった。が、結局お金も、愛人も、欲しいと思った子供もすべて得ていく。なんだか主人公に都合よく進むストーリー展開はある意味新しい。
ローゼマリーが出てくる1作目は読んでみたい。


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