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☆本#392-4 人権侵害「特捜部Qシリーズ4(上下),5」ユッシ・エーズラ・オールスン著を読んで

これまでのシリーズと同様、犯人の過去・現在と、警察の現在が交差しながら続く。
シリーズ4はデンマークで賞を獲っていて、同国で実際あったことも事件の軸として描かれているんだけど、それは人権侵害問題(本人の許可なく避妊手術)で、著者の解説だと当時ヨーロッパのほかの国でも行われていたという。で、デンマークでは強制的に行った不妊手術について賠償金も謝罪も行っていないらしい、他国と異なり。
デンマークは治安もそれほど悪くなくて、国民投票で自国の通貨をユーロにしてなくて、愛国心のある平和な国という印象だったけど、ダークな部分もやはりあるのだな。人口6百万人弱の小国だけれど。

1985年、ニーデは、医者の夫と共に上流階級の人が招かれている、北欧の医学賞を受賞したデンマーク人を称えるパーティに出席していた。が、その受賞者の共同研究者と言われているクアト・ヴァズ(男性、医者)に過去の不妊手術を暴露され、会場を後にする。そして、その帰りに事故にあい、夫を亡くす。

2010年、カールの部下ローセが過去の同時期に数人が失踪している事件に気付き、調査を始める。
ニーセの2010年までの道のりと、捜査が交互で続く。

諸悪の根源クアトとその仲間らがどうなるか、アサドの失踪、カールの離婚や同僚とのぶつかり、ハーディの新たな介護士登場、等々様々な展開あり。
最後の10%弱ぐらいで一気に解決というか、片付く。いつものように勧善懲悪的に。今回、これまでの被害者の中で、ニーデはかなりひどい目にあっていて、描写はさらっとした感じなんだけど琴線に触れた。

シリーズ5作目。
2008年秋。デンマーク政府が進めているカメルーンの開発援助プロジェクトのリーダーが不信な動きに気付くも追手に捕らわれ最期を迎える。が、最後に携帯から送った報告が運よく送信される。上司の命令で現地へ出向いたスタークも危険を感じ即帰国するも失踪。
2010年秋。15歳のマルコは、父親の弟ゾーラがボスを務める犯罪グループに所属し、学校へは行かせてもらえず、仲間とスリをさせられていた。3年前イタリアからデンマークに移り、独学でデンマーク語もできるようになっていた。ある日、父親とボスの会話を聞いたことがきっかけで、逃亡を余儀なくされ、途中、偶然、特徴的なデザインのネックレスをしている男性の死体を発見する。どうやら父親たちが関与していることを知り、逃れるためコペンハーゲンに移る。
2011年春、課長が突然退職しギャビンが課長となり、特捜部Qには新人の業務担当が配属され、彼はローセに一目ぼれし、カールはローセの聞き込みの研修を担当する、1日だけ。ローセはさっさとその事件の真相にたどり着き、スタークの失踪事件に興味を持つ。

援助金の不正利用を実行した関係者たち、マルコとゾーラ、スタークの失踪事件究明が交互に進み、早い段階でマルコとカールたちが接近しつつ、いつものように残り10%くらいで一気に解決していく。

マルコの逃走シーンがスピーディ。他にも様々な動きがあり、カールは指輪を贈ろうとしたその日にモーナと破局、アサドとギャビンとの関係が少し明らかになり、ハーディに奇跡が起きる!一方、カールには発作のような症状が度々起こるようになり…。

無敵と思われた殺人のプロが、素人にあっさり負けたり、物的証拠に対する警察のある対応で「!?」と思うようなのがあったりしたけど、全体的にはいつものように複数同時進行が最後に収束し、勧善懲悪的すっきり。
アサドのらくだの例えや、カールのぼやきも健在。

デンマークというと、これまで訪れた都市は治安も悪くなさそうで、少し遠出するととても田園的印象だったけど、ここにもやはりそうでない町があり、デンマーク人の多少排他的な面とか、東欧人に関する描写、他国との比較等が移住したマルコやアフリカ人の視点で指摘されていて興味深い。ヨーロッパは北へいくほど人がコンサバで、南に行くほどフレンドリーな印象だけど。

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