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☆本#339、340 タイミング「スコッチに涙を託して」「ムーンライト・マイル」デニス・レへイン著を読んで

この著者を知ったのは、「Gone baby gone」という映画の原作だったから。これはその時の作品と同じ探偵のシリーズ1作目と、偶然シリーズラスト。後者は映画になった作品に出てきた誘拐された少女が高校生で登場する。この2冊の出版年度は16年差。

前者は、著者が学生時代に書き賞を獲ったデビュー作で、主人公パトリックやパートナーのアンジーらの関係や周りの描写・世界観がしっかりしていて、彼らの住む環境もきちんと描かれていて、ストーリー展開も無理がなく、様々展開があって一気に読んだ。この時、主人公とパートナーの女性はまだ単なる幼馴染で、彼女はもう一人の幼馴染と結婚していた。が、破綻しそうな関係ではあった。

あらすじを簡潔に言うと、パトリックは二人の上院議員から人探しを頼まれ、人探しのプロなのでその人物を見つけるけど、背後にある男子暴行を知り、マフィアの抗争にも巻き込まれていく。
パトリックが好意を抱いているアンジーは夫にDVを受けていて、でも結婚を維持している状況。アメリカ底辺の事情や東部における有色人種の待遇や、パトリックの映画でもあった、銃で殺されそうなのに強気なかけひきが印象的。観察眼が優れてるらしい。

後者では、パトリックとアンジーは結婚して幼い子供もいて、アンジーは学校に通っていた。ふたりとも40過ぎで、パトリックは仕事が個人ではうまくいっておらず、家族を養うという意味でも安定的な大手に就職するつもりでいる。
そんな時、以前誘拐先から親のもとへ返した子供が12年経って、また失踪したという話を聞き、探すことにしてそっちにも巻き込まれて、その子らとのやりとりもあり、最終的にもう探偵をやめることを決め、拳銃を川に捨てる。で、おそらく学校へ戻る。

アメリカでは今、銃撃でひとが大量に死んでも、昔の状況を前提とした法律で拳銃所持が認められていて、この小説でも、治安が悪いエリアで働く探偵は拳銃所持しているかが命にかかわる問題。主人公が拳銃が、今と違う将来の展望を持ち、銃を捨てるのが印象的。

子供が誘拐された「Gone baby gone」では、ネグレクトな母親から子供を守るために子供は誘拐され、彼女をきちんとケアしてくれる親のもとに連れ去られていた、警察がらみで。彼女アマンダは賢い子で、その後母親には見切りをつけ、自活できるよう、奨学金で大学へ行けるよう、着々と計画を実行に移す。環境が彼女を早く大人にした。パトリックとのやりとりで、誘拐先のほうがよかったと言い、パトリックもついに自分の決断を後悔する。

映画の方の議論のひとつ、パトリックとアンジーも見解不一致だったのは、子供を親元へ返すかどうか。当時は正しいことをしたと思っていたパトリック。考えさせられる。

1作目のオリジナルのタイトルは”A drink before the war”で、邦題は意訳。微妙だ。



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