見出し画像

☆本#458,459 対極「誰か」宮部みゆき著、創作世界の一部現実化「文学は予言する」鴻巣友季子著を読んで

「誰か」は杉村三郎シリーズ1作目。
主人公の杉村が義父のつながりで巻き込まれた事件の謎を解明する。

杉村は映画館で偶然、女性を助ける。それがきっかけで彼女と文通が始まり、後に結婚し、子供がひとり。資産家の娘であることを知ったのは付き合い始めてからだった。この幸せを失うことに恐怖を感じている。

ある日、義父からの依頼で、彼の運転手の娘(姉妹)と会う。その運転手は自転車にひかれたことがひとつのきっかけで亡くなっていた。が、自転車の運転をしていた人は見つかっていない。娘たちは父親に関する本を出して、自転車を運転してた人に名乗り出てもらいたいらしい。編集者の杉村は、彼女らを手伝うことになる。
ふたりは20代と30代の10歳違いで、性格は正反対。心配性の姉と、強気の妹。姉の方は過去の記憶から何かにおびえていた。しかも結婚間近なのに予定を延期するという。

杉村は、現場で事故の詳細のビラを配る。が、その時偶然自転車にぶつかられ、けがをする。
ビラ配りがきっかけで、なぜ運転手がその場所にいたのかと、姉の怖い経験の背景がわかるも、「父親のことは調べるな」と脅迫電話がかかり、その言葉に引っかかり、妹のしていることに気付き…。


「文学は…」は、翻訳者であり、批評家の著者が、これまでの経験(文芸翻訳35年~、批評20年~)から浮かび上がってきた「ディストピア」「ウーマンフッド」「他者」について、古典を含む、文学の流れ等を分析・批評。

作品中の出来事が、後に現実となっているという指摘があって、ちょっと違うけど、ドラえもんの中の「未来像」シーンのテレビの薄型等が実際そうなっていたのを想起。最近ドラマ化されたり、短編が無料公開されている藤子F不二雄のSFも、未来像か。

海外の若手の訳者による日本の若手作家やこれまで翻訳本の出ていなかった女性作家等の本の翻訳により、海外の人の「知らなかった日本」への興味をかき立てているようだ。そういえば、音楽業界も、グローバルで反応が起きている気がする。
これを踏まえると、多分外国人(特に西欧人)の興味の(多分)きっかけだった日本のアニメ・漫画って既にすごい影響力。世界展開に成功しているし。
とはいえ、スマホ版の縦読み漫画では韓国のほうが進んでいそうだし、ヨーロッパでも漫画家って結構台頭しているようだけど。

文中で紹介されていた18世紀「娘文学」のひとつの、サミュエル・リチャードソンの書簡体小説「クラリッサ」(1748年)が紹介されていて、渡辺洋の訳でウェブ公開されている。リンク。なんと原書は100万語以上(翻訳版は約400万字)で、文学史上最長の小説らしい。雄々しく美しい娘が、なぜか男性についてはおろかになり、女性に復讐心を持つラブレースにアルコールと薬を飲まされ、ひどい目に合う話らしいけど、著者が指摘するように、現在のデートレイプと手口が同じなんて…。教本なので、読者を意識して、意図的にショッキングな要素を含めるようだけど…。






この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?