地方に住み、自治体と働くということ⑧ ~「前向きな利己主義」の大切さ
地方の担い手が足りないという話を耳にします。また、人口増加のため子育て世代を誘致して人口増加を実現した地方都市もあります。
でも、実は地方から都市への人口流出は10~20代女性が最も多いって、知ってました?地方都市の女性蔑視的な風習、女性が希望する就労場所の少なさなどが相まって、仕事を選ぶタイミングで都市に流出するようです。
そのような問題を直視せず、カンフル剤的に子育て世代を誘致しても、そこで育った子供が地域から出ていってしまえば同じことの繰り返し。地方の働く場所を変えなければ、地方の課題の多くは解決しません。
ただし、地方には「おじさんたち」という厄介な存在がおり、しばしばこの人たちが意欲ある若手の地方移住を阻害するのですよね。
ここでは、地方の職場の問題を簡単におさらいするとともに、「地に溶け込むこと」の問題を指摘し、地域移住×起業をするうえで重要な視点である「前向きな利己主義」について説明していきたいと思います。
1.地方の職場のリアル
私が愛読している木下斉さんのnoteの記事で、地方から人が出ていく原因を次のように分析していました。
働き手不足という理屈で、地方に若者にいってもらって不足する労働力を補ってほしい、みたいな話もありましたが、これも身勝手な理屈なんですよね。そもそもそういう仕事に就きたくない、むしろ就きたい仕事が都市部にあるからそこに若者や女性は逃げていっているわけです。つまりは地方の経営者に大いなる問題があるわけです。それで日本人がこないなら、と技能実習制度を活用して実質的な外国人の方々を労働者として搾取し、国際問題になっているわけです。
つまり都市の若者や女性が地方に戻るということではなく、変わるべきは地方の企業のほうなのです。労働力が不足に陥るってのは、「誰もやりたくない」仕事を押し付けているからです。非効率、低賃金、長時間労働を強いて、さらに未来も感じないワンマン経営の中小零細企業で仕事したくないという話なわけです。
(問題は、働き手を)東京に奪われているといっている地方のおっさんたちほど、自分たちは悪くないと思っていることです。当事者なのに、全くもっての他人事くらいの意見で、東京のせいで人がいなくなるくらいのことを語っているのです。いやいや、東京が奪うわけではなく、若者や女性が「選択している」だけなのです。で、その理由は前述の通りです。フェアな社会、したい仕事に就ける機会という話です。
つまり、
・地方から最も流出しているのは若者や女性であり、彼らは「地方では尊重されない・働きたい仕事がない」から都市に出ているだけ
・地方から人が出ていくのは、地方企業に問題があるから
・地方にもフェアな社会やしたい仕事があれば、若者は出ていかない
ということ。統計データをもとに分析された結果ですが、とても納得感のある話です。
私自身、福岡の片田舎で生まれ育ちましたが、元産炭地ということもあり斜陽産業の城下町で事務職すらなく、あるのは福祉系の現場仕事が中心。事務職を希望する中学の同級生の多くは、博多や熊本に転出するか、教師になるor市役所勤めか、という状況。そりゃそうだよね、という印象です。
2.地方移住×起業では、前向きな利己主義が大切
よく、地方に入り込むためには「地域の有力者とつながること」「おじさんたちから可愛がられること」などの都市伝説がまことしやかにささやかれています。でも、その伝説を信じて自分を押し殺し、おじさんたちにかわいがられようと努力したけどなじめず、心身の不調をきたして離脱する若手女性がどれだけいたことか。
当然、地域の人とうまくやっていくことは大切です。防災や草刈りなどの地域行事に一切参加しなかったり、騒音やゴミ出しなど地域のルールを守らないような迷惑なふるまいは論外です。
とはいえ、自分の感情に蓋をしてまで誰かの価値観に寄り添い、仲間外れにされないよう気をもむなんて、思春期の中高生時代で懲りたはずでしょう?人間関係のしがらみをリセットしたくて、地方移住するのではないですか?
それであれば、相手に人としての敬意を払ったうえで、「自分は自分、他人は他人」という『前向きな利己主義』を貫きましょう。
ご近所さんには必ずあいさつする。
通りすがりの人が困っていたら、声をかけてお手伝いをする。
だけど、お酌を強要される地域の飲み会にはいかなくてもいい。
結婚していないことを非難してくる人がいたら、そっとその場を立ち去る。
自分のことを理解しようとしてくれない相手の言動に付き合う義理はない、というくらいの気持ちでいることが大切です。昔のように村八分にされたって、葬式を手伝ってもらえなかったとしても、現代には葬儀屋がいますしね。自宅が火事になって消火を手伝ってもらえなくたって、火災保険に入っておけば経済的損失は少ないもの。
地方移住というと、「地域の人に寄り添い、溶け込むこと」が大事と言われるけど、その枕詞には「(一番大事なのは自分の気持ち。次に大事なのは)地域の人に寄り添い、溶け込むこと」という言葉が隠れていること、意外と見過ごされていたりします。
「前向きな利己主義」を、大切にしていきましょう。
3.さいごに
「他人は変えられない。自分は変えられる」といいますが、地方起業で人間関係で悩んだら、相手に合わせて自分を変えるだけではなく、自分の『居場所』を変えることも選択肢に入れてみてください。
「都会から人は来て、お金を落としてほしいけど、地域のことに口出ししてほしくない。」
「都会から来た人が地域を混乱させるから、もう来ないでほしい」
など、地方のおじさんたちは結構好き勝手なことを言っているようです。
あ、あぶないな・・・と思ったら、即逃げる勇気も大切です!
ちなみに、私自身、リモートワークが定着しても地元にUターンする気は起きません。鉄鋼系の中小企業が集積するエリアで、新しい仕事も生まれていない地域では、きっと「おじさんたち」のキングダムなのだろうと想像がつくからです。
自分の親が暮らす地域で、私が悪目立ちして親に迷惑をかけたくない、という気持ちもあります。だからといって、地域の「おじさんたち」に取り入るつもりもさらさらありません。
そういう意味では、「前向きな利己主義」を貫くには、何のしがらみもない地域を選ぶのがいいのかもしれませんね。
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