地方に住み、自治体と働くということ② ~パイの奪い合いではなく、パイそのものを増やす
前回、少し大風呂敷を広げてしまいましたが、まずは自分が書けることを少しずつ出していきます。そこで今回は、自治体からどんな仕事が発注されているかを知るために、自治体の業務委託のくくりをお伝えします。
業務発注のくくり
業務の種類は主に、時間とノウハウを提供する「業務」、完成品を納入する「物品」、完成品の製作を請け負う「請負」の3つに分かれます。
身近な例を挙げてみますね。これらの区分は自治体によってばらつきがあるので、あくまで参考までに見てみてください。
■業務:調査や企画・計画立案、運営など、主に人の時間とノウハウを活用するもの。成果品は「報告書」。
・セミナー企画、運営
・各種調査・計画策定
・プロモーション
・清掃、施設管理 等
■物品:トイレットペーパーから文具、衣類、食事まで、自治体業務で必要となる物品を納入するもの。
・職員用被服
・スタッキングチェア
・新聞、雑誌 等
■請負:データ入力からホームページ制作、建築工事まで、規模の大小を問わず、完成品の製作を請け負うもの。成果品は、データ入力ならDB、ホームページ制作ならHP、建築工事なら建物が検査品となる。
・ホームページ制作
・建設工事 等
移住者ならではの受託業務のイメージ
地方都市では、移住者の受け入れに必死です。このため、都心の住民向けに、移住を紹介するホームページを制作するケースが増えています。例えば秋田市で2020年7月に、こんな業務が発注されていました。
『秋田市移住定住情報ホームページ作成保守管理業務』
参加資格:秋田市内に本店又は営業所が所在する法人ですが、個人事業主でも登録を受けていれば可能です。
委託費:400万円
期間:1年間
業務内容:新サイト(約 30 ページを想定)のシステム構築、デザイン作成、更新、検 索エンジン最適化対策(以下「SEO 対策」という。)サポートおよび保守管理
どうでしょう。ホームページ制作の経験がある方ならそんなに難しい内容ではないと思います。
また、サイトの作成方針として「特に、本市がターゲットとしている移住者層(首都圏等の在住者で20 ~40代の子育て世帯)が移住に関する情報を収集しやすいページとす る。『秋田市に移住したい人』はもちろんのこと、『移住先をどこにするか 悩んでいる人』もターゲットにしたもので、新サイトの滞在時間が長くな るよう、デザイン等を工夫すること。」が挙げられています。
都会から移住した方であれば、自らの移住経験を活かして魅力的なコンテンツを作ることもできそうですね。
地方では人口減少が著しいので、都会からの移住者を求める傾向があります。上記の例のように、都会で働く人向けのホームページ制作のほかにも、移住者の受け入れ態勢構築や、二地域居住・ワーケーションのための拠点づくり、都会で得たスキルを活かした地元企業への研修・・・など、様々な可能性があります。
その際のポイントは、「地域の限られた仕事のパイを食い合わないこと。」に集約されます。
地域の人にとって、よそから来た人に自分の仕事を奪われるのでは、というネガティブな感情を持ってしまうこともあるでしょう。そうなっては、コミュニティで受け入れられるはずがありません。
移住者に期待される働き方は、よそ者として地域に新たな価値や仕事を生み出し、外部の経済を呼び込んで地域を豊かにすること。そして、最も簡単なのは、移住者としての視点を活かして新たな移住者や交流人口を増やすことです。
今、移住・交流のテーマについては、国も自治体も積極的に投資をしており、自治体からの業務委託を最も受けやすい分野だといえます。今後、これらについての行政の動きを紹介し、個人(個人事業主)としてのかかわり方を考えていきます。
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