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地方に住み、自治体と働くということ③ ~個人への発注事例をご紹介

では実際、どんな業務が自治体から個人に発注されているのでしょうか。

NJSSという落札情報サービスによると、落札者が「個人」となっている案件は5万件近く。その中でも、私が見ていて面白い、個人起業の可能性がある、と感じたものをいくつか紹介してきますね。

金額の多い・少ないはありますが、具体的なイメージを持っていただきやすいよう、2019~2020年に個人が業務を受託した案件のなかから、「能力や資格を活かす系」「クリエイター系」「体力や時間を使う系」「変わり種」の4つに分けて、ご紹介していきますね。

1.能力や資格を活かす系

〇大崎市立小学校・中学校グランドピアノ調律:宮城県大崎市が、小中学校のグランドピアノの調節を発注しています。3社が応募し、うち2社は民間企業。民間企業が66万円で入札したところ、個人の方が63万円で落札しています。

〇柏市立図書館蔵書等データ分析業務委託:千葉県柏市が、図書館のデータ分析を個人に委託しています。費用は50万円。

〇駐留軍等労働者に対する保健指導等に係る業務委託:防衛省の九州防衛局から、保健指導に関する業務委託です。個人に200万円が支払われています。

〇堺市高校卒業見込者等への進路支援事業運営業務:堺市発注業務で、進路支援事業を個人の方に委託しています。委託費は200万円、けっこうな額ですね。

〇ふるさと体験ビレッジ「ふるさと味覚館」指定管理者:東京都三宅村。離島なので担い手がいないためか、公募しても個人しか応募がなかったようです。金額は非公開です。

〇名古屋市いじめ問題再調査委員会における事務局業務委託:名古屋市発注で、4名の個人と連名契約をしているようです。500万円と、それなりの規模。

〇事務情報ネットワークの運用支援業務:大阪大学の発注案件で、競争により個人が業務を受託しています。金額が大きくて、年間1,100万円。スキルが必要なのでしょうか。

〇乳児家庭全戸訪問等事業業務委託:福岡県須恵町から、個人に委託されています。委託費は117万円。

〇住宅融資班業務の外部委託:沖縄振興開発公庫の発注で、一級建築士に限定されています。個人の方が554万円で落札しています。

〇障がい支援区分認定調査に係る介添人派遣事業:大阪市が、障がい支援認定のために介添えする人を募集しています。介添人1人につき1000円の単価契約で、個人が落札しています。

〇通訳及び翻訳業務(英語)委託契約(単価契約)に関する契約:沖縄地区税関の発注で、個人の方が落札しています。単価契約で6,000円/件となっていますが、高いか安いかは内容次第ですね。語学に自信がある方は、こういう機会もあります。

〇地域貢献プロジェクト「ヴィーガン食材の宝庫・群馬ブランド確立プロジェクト」海外出張調査にかかる専門家の公募:日本貿易振興機構(JETRO)の案件です。金額は不明ですが、専門家の個人の方に委託しているようです。

2.クリエイター系

〇地域団体商標海外展開支援事業ブランドプロデューサーの公募:こちらも日本貿易振興機構(JETRO)の公募で、案件数は全6件。うち1件が個人に委託されています。他の5件の企業も、落札したんは比較的小規模な会社のようでした。

〇長久手市文化の家フランチャイズアーティスト業務委託:愛知県長久手市の発注で、競争のない随意契約。委託費は72万円。おそらく事前に自治体との関係がしっかりできていたのだと思います。

〇自主事業「ワーテルロー音楽祭」公演委託:こちらも愛知県長久手市。個人の方に公演費として90万円をお支払いしています。

〇岐阜クリエーション工房事業2020ワークショップ及びトークイベント等事業実施業務(ワークショップ1):岐阜県庁の発注で、特定の個人との契約です。委託費は137万円。こちらも事前に自治体と話をして、案件を作り込んでいたのでしょう。

〇日本産酒類の産業競争力強化に向けた連携促進支援等に係るコーディネータ業務:広島県の酒類総合研究所が発注者で、個人の方に790万円で委託されています。

〇九州国立博物館ホームページおよびWebコンテンツ編集・制作・維持管理等業務:発注者は国立文化財機構で、個人の方に130万円で委託。

〇(仮称)ランタン制作・鑑賞イベント運営等業務委託:都心の練馬区。個人への委託費として136万円をおしはらい。

〇旭川市大雪クリスタルホール自主文化事業公募型市民企画公演業務:北海道旭川市役所発注。文化行事の企画運営の費用として、個人に120万円を委託しています。

〇第38回全国都市緑化くまもとフェアロゴマーク作成業務委託:熊本市役所発注で、個人に88万円で委託しています。

〇「工場見学映像コンテンツ開発業務」業務委託:大阪府八尾市が発注者となり、個人の方に委託しています。契約経緯を見ると、この方は前職での実績を買われて特命随契になったようです。委託費67万円。

〇障害者芸術ワークショップ実施業務:大阪府豊中市の委託で、個人(大学教授)の方に40万円で委託されています。

3.体力や時間を使う系

〇自然体験学習事業に係る農園管理及び農作物作付委託:世田谷区が発注者となり、個人に年間930万円で業務を委託しています。

〇余市川水源管理業務:小樽市役所発注で、個人に256万円で委託しています。

〇勝山高校寄宿舎炊事業務:こちらは岡山県が発注者で、公募したけれど応募がなかったため個人の方に直接お願いしたようです。委託費は年間163万円。

〇埼玉労働局管内各労働基準監督署・各公共職業安定所における樹木剪定・除草等作業に係る業務委託:厚生労働省が発注し、4社が入札した結果、価格競争で個人の方が競り勝ったようです。民間企業が250万円で入札したところ、この方は170万円で落札しています。間接費がいらないというのは強い。

〇火薬庫地域草刈役務:防衛省発注の案件で、場所は北海道です。個人に58万円で業務委託しています。火薬庫周辺の草刈りってちょっと物騒ですね。

〇塩那森林管理署庁舎清掃等業務:林野庁が庁舎の清掃業務を委託しています。場所は栃木県。委託費は129万円でした。

〇高松国税総合庁舎外23税務署等の清掃等委託業務:高松国税局の発注する清掃業務。個人の方が210万円で落札しています。

〇三沢航空科学館デッキテラス外改修設計業務委託:青森県庁の発注で、個人の方が228万円で落札。一人親方なのでしょうか。それとも個人のDIY愛好家だったりして。

4.変わり種系

〇1日分の野菜ほか19件:防衛省からはこんな案件も発注されています。場所は福岡県。野菜1つの単価は49円で、合計すると160万円です。高いのか安いのか。。。


まとめ

いかがでしょう。実に様々な業務が個人に委託されていることが、お分かりになったと思います。この中には、事前に自治体と事業に関する話をしていて、「この人でないとダメ!」という案件を育て上げて、競争なく委託を受けているものも、かなりの数存在します。

「ぜひやるべきだ。しかし、あなた以外にできる人がいない。」というときにはじめて、競争なく業務を受託することができるようになります。(このよう契約方法を「特命随契」といいます)

地方移住者は、地域にとってこれまでにない新しいアイディアを持ち込んでくれる貴重な存在です。ぜひ自治体側に様々な提案をしていき、自分だけのプロジェクトを組成してもらいましょう。


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