食の嗜好が変わるとき
私は元々大食いで、しかもジャンクなものや脂質の高い食べ物が大好きだった。
夫が仕事、私は休み、なんて日があればデリバリーや自らの足を駆使して焼き鳥に唐揚げ、大量のトッピングをしたカレーにカツ丼、中華全般にマックなどなど、ハイカロリーなものをその日の気分でいくつか選んで、日頃の鬱憤を晴らすように、そして明日からのエネルギーを蓄えるようにお腹いっぱいすごく食べた。
スーパーでステーキ肉を買って自宅で焼き、1人ワンポンドステーキ(味変としてレトルトカレーかけるのおすすめ)を楽しむこともしばしば。そしてスーパー行くと当然、目についたお惣菜は絶対買う。スーパーのお惣菜コーナーのポテサラとコロッケは必須。美味しい。
もちろん少食気味(いや多分それが正常)な夫に内緒で。
幸か不幸か胃が強いため、油ギトギトなものをお腹に大量に詰め込んでも具合が悪くなることはなく、食べたものはきちんと消化吸収して私の糧となり食後に後悔はない。
そして不思議と毎年職場の健康診断ではオールクリア、全てが(身長が平均から外れてること以外)問題ない数値。たとえ健康診断の前日にとんこつチャーシュー麺、酢豚、エビチリ、ビックマック、マックポテトL、カツカレーを昼食として食べていたとしても(それに加えて朝夕は夫と普通の食事をする)。
そんな私が妊娠を考えるようになっとき心配したのは、ベビーにとって好ましい食生活を送れるかということ。
野菜中心、肉より魚や大豆、卵で良質な油とタンパク質を。果物も積極的にとり、揚げ物は好ましくない。
という、私の好みと真逆のチョイス。
私の楽しみでもあった食を「我慢」することが果たしてできるのか。
心配しつつ、とりあえずできることからと、妊活中は葉酸、鉄、カルシウムのサプリは毎日飲んだ。
最初に「あ、私妊娠した」と思ったのは検査薬でもクリニック受診でもなく、胃と食道の異変だった。
そんなに食べてないのに、職場の普通の定食なのに、胃がもたれる。
目の前の脂の気配に食道が焼けるような不快感を示してくる。まさか、食べられない。
検査薬を使用するにもまだ早い時期だったため、そこから1週間ほど待ち、検査薬を使用。
思った通り、陽性だった。
さぁここから、私の「我慢」の食生活が始まる、と思いきや。
なんとつわりが酷くなにも食べられない、食べたくないではないか。
「我慢」などとは程遠い、食べられるもの探しに必死な日々。
つわり経験者の先輩方から聞いた
「マックのポテトだけはたべられた」
「キンキンに冷やしたトマトいけるよ」
「アイスなら大丈夫だった」
………全て没。
何を食べても、食べなくても、とにかく吐く。
麦茶は匂いで既にだめ。
水は飲めるが5分後には吐く。
当然仕事にもほぼ行けず。
なんとかたどり着いたのが
常温のゼリー飲料(特定のもの、プロテイン入りヨーグルト味)
OS-1
の2つのみ。
OS-1に至っては「こんな美味しいもの、他にある!?」くらいの勢いで体に受け入れられた。
少したつと薄めたスポーツドリンクも飲めるようになり、その糖分の多さからかそれまでの急激な体重減少も止まった。
それから雑炊が食べられるようになり少しずつつわりが治まり始める気配を感じていたとき、事件は起こった。
突然の腹痛、出血。
妊娠14週目にして切迫流産と診断され、自宅安静に。
はじめはシャワーも禁じられ、トイレ以外は立たない、基本横になって過ごすことに。(詳細は他記事にて)
動くことがなくなったためか、心境の変化か、はたまた腹の中のベビーの影響か、
その頃から食の嗜好が180度変わった。
ぼんやり横になっていたとき
「あー、バカみたいにキャベツとタマネギ、ニンジンとパプリカ、トマトが入ってるスープ食べたい」
と、相当具体的に食べたいものが浮かんだ。
肉ではなく、まさかの野菜。
それから
「昔食べた古代米入りのご飯おいしかったなー」
「蒸し野菜ってほんの少しの塩とオリーブオイルだけで美味しい。むしろなにもつけなくてもいい」
「豚肉って焼くより茹でる方がうまいじゃん」
「納豆とか豆腐って、こんな美味しかったっけ?毎日食べても苦じゃないわ」
「味噌汁うまー!」
と、自分でも戸惑うほどの急激な食の好みの変化が起こった。
そして食べたいものを用意してくれる夫に食べたいものを伝えると
意外にも夫の味の好みと一致した。
特に蒸し野菜については夫はこれまで実家でもほとんど食べる機会がなく、今回色とりどりの野菜とキノコ、そして豚バラを簡易蒸し器で蒸しただけのものが自分の食のドストライクだと知ってすっかりはまっている。
お腹のベビーの影響があるのなら、ベビーの食の嗜好は夫似なのかもしれない。
もちろん、野菜以外のものが食べたいときだってちゃんとある。たこ焼きやたい焼きはここのところずっと食べたい。
ともあれ、今の食生活の方が間違いなく食費は安くなる。
その上夫も私も「我慢」をせず、世間一般に理想とされる食事がとれるわけだから、産後もぜひとも野菜と発酵食品大好き人間のままでいたいと思う。
出産を機にまた、食の好みが戻ったらちょっと面白いなと思いつつ。
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