あなたも俳優になれる!

俳優というのは因果な仕事だと思う。
先日、
「どうして俳優になれたのですか?」
と訊かれた。
「どうして俳優になったのですか?」
と訊かれたら、
「好きだったから」
と答えるのだが、“なれたのですか?”という質問には虚を突かれた感じですねぇ~
俳優には資格も免許もプロテストもない。
加藤健一さんが言うように、
「自分は俳優だと決めた時から俳優になる」
わけだ。
変な例えになるけど、ホームレスの人に、
「どうしてホームレスになれたのですか?」
と尋ねるのに近いかな。
「私は現代社会のあり方に疑問を持ち、歯車になるより自由を選んだのです」
と答えられるホームレスがいたら、“いつの間にか俳優になった”ぼくよりずっと立派だと思う。

ぼくの大先輩たちはイデオロギーから演劇を志し、社会改革の一環として俳優業をしている人が多かった。
主に新劇の方たち。

そして、新たな表現方法を模索して演劇を選んだ人たち。
主にアングラ劇メンバー。

後輩には、思想的なものより、気に入った仲間とバンドを組むような感覚でサークル活動的に芝居を楽しむタイプが出てきた。
第三次小劇場がブームになった頃からの人たち。

つかこうへいさんが「戦争には遅すぎて、安保には早すぎた世代」というフレーズをよく使っていたが、ぼくは「新劇には遅すぎて、小劇場には早すぎた世代」かも知れない。

いずれにせよ、俳優は時代の中で妙な綱渡りをする定めの存在なのだろう。
「俳優」という字を分解すると、
「人・非・優」
漢文読みで、
「優れた人に非ず」

要するに、あまり立派なものではないようだ😁

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?