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黒木亮 『アパレル興亡』 を読む

東京スタイルをモデルとした、戦前から現代に至るまでのファッション業界変容のストーリー。経済大河ドラマみたいな仕立てになっていて面白かったので、そのうちドラマ化されるかも。

ユニクロ、ゾゾタウン、村上ファンド、潰し屋、百貨店への営業争い。上の方のファッション業界の流れから下の方のファッションまでを俯瞰できるように話が展開されていく。

ファッションの現場って、案外男っぽいものなのかしら。百貨店に食い込んでいく営業攻勢やら、新規企業への叩き、商社との騙し合いの海外工場建設の件なんかは、なかなかだった。
ゾゾにしろユニクロにしろ東京スタイルにしろ時流に乗り一、二代で急成長した会社って、社風が独特なのかしらん。例えばZOZOの幕張地区に住む社員への月五万円の幕張手当(この、ベッドタウン生まれを消化できないままこじらせたかのような不思議な手当)やら、ユニクロの「匠」制度(アジアの各工場で現地指導員を各社からヘッドハンティングしてきて、彼らに与えている尊称が匠、であり、その匠を仰いで現地の工場が回っていくが、一方で完全な出来高歩合制をとっており、一日の生産量と品質に優れた社員ほど多くを稼ぎ出せる仕組みになっている。この辺、昭和の女工を彷彿とさせる)、総会屋を社内で育てているかと疑うほどの、創業者、ないし社長を中心とした天皇制と体育会系が一体化したかのような東京スタイルの社風。
逆に村上ファンドがまともな社風の会社に思えるほどだった。

いずれにしてもこれを岩波書店で出しているという異色さ。

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