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社会人の後大学院に戻ってきています。本と洋裁と洋服とお酒が好き。

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おかざき真里 『&』 を読む

どこかのテレビ番組で、類人猿の研究者が、「わかる」ということは、想定と本質が矛盾しないことですと説明してたけど、それがまさしくテーマであった、『&』。 タイトル通り、登場人物たちはみんな二つのものを同時に抱えており、それがダブルワークだったり、過去や今、好きな人や好かれている人、責任持たなきゃいけない人間と救いをくれる人間、反発と献身、などなど、&のバラエティは豊かなのです。 その、抱えている二つの項目の間を彷徨き回ることによって自分が相対化されて、自分が何者かという、その輪

    • 河内遙 関根くんの恋 を読む

      関根くんの恋、面白い。久々に一気に読みたい漫畫。 何かに沒頭していたくて(頭を空っぽにしたくて)作業をする、っていうのは確かにある気がする。そういう時に関根くんは編み物をしまくるし、私は洋裁しまくるし、「昨日何食べた」のシロさんはお料理を作る。 関根くんは特になんだけど、好きなものや好きな人への感情を、「好き」という言葉でしっかりと把握ができない、というところが不幸なところで、編み物だってものすごく好きなんだろうに好きと認識しないのよ。なので、手芸屋の娘さんに大変な恋をしてい

      • よしながふみ 大奥 完結する

        学生時代から十年以上にわたり楽しませてくれた大奥最終巻。言わずと知れた、男女逆転で描く徳川家の烈伝です。確かセンスオブジェンダー賞の初回を獲っていたはず。 よしながふみの描き出す将軍や老中、総取締やら医師やら料理人やら農民たちが、抑圧された現状に向かって繰り出す啖呵が実に気持ちよかった。理不尽な現状をロジカルに分析しつつ感情的にキレる、というか。 私自身も、社会人になりたての頃、お役所仕事を絵に描いたような職場やおっさん相手にぶちギレては、よしながふみ的啖呵を繰り出し自爆して

        • 朝ドラ まんぷく を見る

          今更まんぷくを見ている。日清食品の創業者のストーリー。 モデルのあるドラマって、どこまでが史実に沿っていて、どこからが小説の嘘なのかって考えるとすごく面白い。安藤百福の場合は、(統治時代の)台湾出身という部分と、それに付随しての台湾での前妻たちとの婚姻を解消しないまま日本で婚姻を行った重婚の問題、信用組合時代の横領疑惑と小豆相場に手を出しての失敗は綺麗に消されている。今の時代、何がタブーなのかがよくわかる。あと、創造された登場人物の持つ効果。ヒロインである福子の姉の咲が、物語

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        おかざき真里 『&』 を読む

          八重の桜 八重と尚之助の結びつき。

          今更だけど、八重の桜をみている。 これ結構考えさせられる。 内戦経験者になんでキリスト教が浸透するのか、とか。 八重の生き方って、女が戦争にどうやって関わっていくのかということに触れすぎていて危ういなと。八重が少年兵を率いて内戦に出るという要素は、ベトナム戦争以降の、市民戦やら、女性兵士の問題を考えさせられる。それに、身内の男性の死を家族愛と結びつけ、家族愛や愛郷心によって純粋に戦争に女子供が駆り立てられるという構図を疑問なくドラマにしちゃってるけどいいのかなあ、これ、とか

          八重の桜 八重と尚之助の結びつき。

          ポール・モラン 『シャネル 人生を語る』 を読む

          シャネルが60歳前後に、自身の半生を、友人ポール・モランに語ったものを書き起こしたもの。 孤児院育ちを隠し続けたシャネル、というのは聞いていたけど、具体的にどういう嘘でシャネルが少女時代の物語を作り上げたのかということは知らなかった。 アメリカに移民したお父さんが、軍隊のための馬を飼育していた叔母の、ブルターニュの農家に彼女を預けたこと、裾を引きずるようなレースのドレスを仕立ててもらったりしながら、たまに馬を試しにくる軍隊の若い男と喋ったりしたこと。そのドレスへの不満と、そし

          ポール・モラン 『シャネル 人生を語る』 を読む

          むろなが供未 花形怜 『バリスタ』 を読む

          『バリスタ』というマンガ。10巻完結なんだが、どうも作者の人、最後まで物語を見通して描いた感じがしないんだよな。イタリアにルーツを持つ主人公のバリスタ、コウキが主人公。コウキの母もかつてイタリアで修行したバリスタで、コウキを身篭り帰国して父のいない息子を育てる。コウキにとって、本場イタリアでバリスタ修行をすることは、母の仕事の継承と同時に父親探しに連なる道でもあり、確かに途中までそれが漫画のテーマでもあったはずなのだが、3巻目くらいで、イタリアどうでもよくなっちゃった感じなん

          むろなが供未 花形怜 『バリスタ』 を読む

          上野千鶴子 『情報生産者になる』 を読む

          一年前にこの本にたどり着いてたら、院試もそうだし、職場への研究計画もそうだし、ものすっごく楽できたなーと思いつつあっちゅーまに読了。 論文の書き方指南に惹かれてページをたぐる人が多いだろうけど、自分の頭の中でまだ固まっていないコトバを捻り出す方法を示してくれる本、という方が言い得て妙なんじゃないかしら。これきっと、学生だけでなく、社会人の企画書作成や申請書作成にも役立つ。 高大連携の話や、国語教育の話もいくつか出てきて、共感するものが多かった。小学校から高校までの国語の教科書

          上野千鶴子 『情報生産者になる』 を読む

          黒木亮 『アパレル興亡』 を読む

          東京スタイルをモデルとした、戦前から現代に至るまでのファッション業界変容のストーリー。経済大河ドラマみたいな仕立てになっていて面白かったので、そのうちドラマ化されるかも。 ユニクロ、ゾゾタウン、村上ファンド、潰し屋、百貨店への営業争い。上の方のファッション業界の流れから下の方のファッションまでを俯瞰できるように話が展開されていく。 ファッションの現場って、案外男っぽいものなのかしら。百貨店に食い込んでいく営業攻勢やら、新規企業への叩き、商社との騙し合いの海外工場建設の件な

          黒木亮 『アパレル興亡』 を読む

          千葉雅也 『デッドライン』 を読む

          少女は身体を盗まれて少年は歴史を押し付けられる。 モースのポトラッチで大切なのは「交換」じゃなくて特殊性=他者を意識すること。 ハッとするようなワードがそこら中にわかりやすくちりばめてある。読もうかどうしようか悩んんだけど読んでよかった。 研究者の言っていることから何を析出するかって自由だけど、外れた析出になりたくないなあとは思うのだが、外れてるとオリジナリティの間がようわからん。けどようわからん!って思いながら書いてる時代を見せてもらえてちょっと勇気が出た。そんな本。

          千葉雅也 『デッドライン』 を読む

          吉井ユウ 『青島くんは意地悪』 を読む

          『青島くんはいじわる』という漫画がやたらインスタやらTwitterやらに広告が出ており(ってそれは自分が漫画ばっか閲覧してるからなんだが)気になって9話まで読んだのだが、あれ面白いな。作中でも彼氏にあたる年下の「青島くん」が9歳上の自立した「雪乃さん(多分苗字が葛木だっけ、なのはエヴァからじゃないか?肉食要素を抜いたミサトさん。仕事バリバリで芯が強くて優しいけど天然で私生活ツッコミどころ満載という定型モデル)」に乙女呼ばわりされているのだが、まあその言葉通りあれ男女逆転させた

          吉井ユウ 『青島くんは意地悪』 を読む

          千葉雅也『アメリカ紀行』を読むことで『俺のラブコメ』に繋がる

          千葉雅也の『アメリカ紀行』、とても良かった。 どこでも自分の領土(行きつけのカフェ)を作るという習性。自分が抱えてる色んな関係性の中にあって、無関係である、という関係性を機能的に捉えたり(猫カフェで息抜きするのは猫っていう関係性の切れた生き物との間で、有関係の息継ぎができるから、らしい)、クイア理論を否定的に捉える(クイア(オカマとかの蔑称のこと)はクイアであるからこそ良いのであって、それがメインロードにいっちゃったらそれは違うでしょっていう主張。結構重トピックがじんわり入っ

          千葉雅也『アメリカ紀行』を読むことで『俺のラブコメ』に繋がる

          大久保圭 『アルテ』 を読む

          諏訪敦をはじめ、私、写実画が好きで、ホキ美術館も結構気に入っています。 写真がこれだけ発達してくると、肖像画や写実画って存在価値はなんだろう、って思うけど、それってすでに、ルネサンスの時代から意識されてたことなんだろうなあって。 対象の本質を、洗練された姿で描き出すために、現実には無いものを画面上に創り出す。その想像力や構成力が、写実の価値なんだと思う。 アルテ、という、現在も連載中の漫画が面白くて。今13巻まで出ているのだけど、肖像画を得意とする主人公の画家が、お客さんに一

          大久保圭 『アルテ』 を読む

          木内昇 『茗荷谷の猫』 を読む

          短編の連作。 時代が江戸期末から昭和38年の東京オリンピック前夜辺りまで移り変わりながら、設定は都内の場所を転々としながら、でも、そうした時代と場所が幾重にもつながりを持ちながら、9作が、主人公のまったく別個な日常を生きる目途のもとに偶然で緩くつながっていくという趣向、互いに「ふみこまない」のに、それぞれが、つながり、共鳴にかかずらわっていくという不思議。 短編ごとに味わいが違うのもまた魅力で。水木しげるの劇画でイメージされちゃう話もあれば、岩井俊二の映画か!なんて話もあった

          木内昇 『茗荷谷の猫』 を読む

          沢山美果子 『性から読む江戸時代』を読む

          岩波書店のツイッター(多分お調子者がやってる。時々炎上しているのも面白い)で話題になっていて、興味を持った本。 何が印象深かったって、浮世絵師の英泉が、妊婦との性行為について、時期によってどういう影響が胎児に現れるかという説につけていた挿絵のくだらなさ。 私、英泉って好きなのよ。多色を捨てて藍色で全てを表現しようとしたセンスの良さとか、ラブホ経営しちゃう軽さとか、そういう部分も大好きだし、何よりどこまで真面目でどこまでノリなのかがわかんないとこが。朝井まかての「眩」をNHKで

          沢山美果子 『性から読む江戸時代』を読む

          日向夏 『薬屋のひとりごと』 を読む

          こんなに面白いラノベにハマったのは「なんて素敵にジャパネスク」ぶりかもしれない。そして、ひょっとしてラノベを最も現役で必要とする世代(17歳くらいまで)で読んでたら、氷室冴子以上にハマったと思う。(氷室冴子は17歳まで私の神だった。アレがあったから私は学校っていう集団生活の中で息が出来たのよ。)結局、ラノベって児童文学の一つだと思うのよ。もちろん読んでる人は大人もいるってわかった上で、言ってます。 小説一般の中での児童文学の位置づけって、「どう成長していけばいいか」っていう指

          日向夏 『薬屋のひとりごと』 を読む